【時代小説】醍醐味はひたすら理不尽であることなのです【藤沢・宮部】

スポンサーリンク

時代小説

みなさん、こんにちは。

ブロガーのすい喬です。

ここのところあんまり時代小説を読んでません。

忙しいのです。

何にかって。

いろいろですよ。

そんなことを言い出したら蟻だって忙しいんだけどね。

さっきから時代小説の醍醐味について考えてました。

ぼくが好きなのはなんといっても『蝉しぐれ』です。

読んだことがありますか。

これを読んだら、世の中というのはどうしてこうなんだと悲しくなるのです。

藤沢周平の大傑作です。

とにかく理不尽なのだ。

理屈の通らない世の中ですよ。

それが武士の生き方なんです。

こんな風に生きてたら、さぞやくたびれるだろうなあと思うことしきりです。

嘘だと思うなら、読んでみてください。

歯ぎしりしちゃうよ。

どこまで我慢をすればいいのか。

サラリーマンだって、我慢はしますけどね。

しかし武士には生まれついての階級というものがある。

これが越えられないのだ。

だから哀しい。

スポンサーリンク

宮部みゆき

彼女の小説はあんまり読んでいません。

『孤宿の人』はなぜか手にとりました。

これは失脚した勘定奉行を預かった讃岐のとある藩を舞台にしています。

本来なら切腹を命じてもいい大物を死罪にしなかったのは、時の将軍が怨霊を怖れたからなのです。

そのため、藩は実に厄介な人物を幽閉しなければならないという難しい状況に立ち至ります。

そこに藩の重臣によるお家騒動、毒殺騒ぎがおこり、話はますます重層化していきます。

結論がみえなくなるんです。

普通なら着地点がありそうなもんだ。

しかしそれがない。

落雷が守護神の神社を燃やし、漁民達の不安は最高潮に達するのです。

その後に起きる打ち壊しにも似た火災。

全ては勘定奉行が幽閉されていることから起こる凶事だと信じこませることで、藩の存続を願う江戸留守居役。

最後に、勘定奉行は自ら死を選びます。

それを悪霊である自身の乱心からであると周囲に納得させ、さらに将軍もそれを追認せざるを得ません。

そのことによって藩は見事に難役を果たし、取り潰しを免れます。

綱渡りのような日々の中で、数人の医者や重役、さらには市井の民がみごとな働きをするのだ。

そのなかでも「ほう」という名の少女はそのあどけなさ故に最も美しい花を咲かせるのです。

人間、あどけないと心が動くね。

赤ちゃんに勝てる人はいません。

この女の子の描写も実にみごとです。

堪能しました。

スポンサーリンク

小川の辺

せっかくだから藤沢周平の小説をもうひとつ。

この作品にも理不尽の2字が生きてます。

まさに主命がそれだ。

実の妹の夫を斬り殺せというのがその内容です。

それも理非曲直を説いて、藩の方針を修正させた男をです。

どうしてこうなるんだ。

ちゃんとやった人間を殺すなんてあんまりだよ。

まさに理不尽の極致です。

これが武士の世界の現実なのだ。

サラリーマン

サラリーマンも似たようなものか。

正しいからといってすぐにそれが受け入れられるわけじゃない。

男は結局脱藩する。

妹、田鶴に剣術を教えたのは父親でした。

彼女もすぐれた使い手です。

ひょっとすると、妹と立ち会わなければならないという場面がでてくるかもしれない。

主人公は悩みます。

ぎりぎりの状況に立たされた人間はどんな行動をとるのか

最後まで安心できずに、読者は読み進むのです。

この窮境を救ったのは兄弟同様に育った新蔵でした。

これも理不尽な話だ。

今もこうしたことは数々あるにちがいないね。

理屈でわかってはいてもそれを行うことが、多くの人々にとって害になるという状況もありうる。

上司の命令が理不尽な時、自分の立場を慮って黙ってしまうことがないわけじゃない。

時代小説の形をとってはいるものの、これはまさに現代の構図そのものだよ。

だから読んでるとつらいのだ。

でも時代小説はいいよ。

スポンサーリンク

またね。

See You Again。