テルマエ・ロマエ
みなさん、こんにちは。
今回はローマ風呂を題材にした特異な漫画「テルマエ・ロマエ」を描いたヤマザキマリさんの話を書きます。
何本か映画化されていますので、それを見た方も多いでしょうね。
あるいは単行本で読んだという方もいるはずです。
実に不思議な作品です。
イタリアを扱った作品としては異色ではないでしょうか。
ぼく自身も2度ローマを訪れました。
そのたびにカラカラ浴場に行きました。
夏に行った時は、大きな広場でオペラコンサートを開催していました。
「カルメン」を見た記憶があります。
もう1本は「白鳥の湖」のバレー公演でした。
夏の夜に繰り広げられる美しい光景には、文化の香りがしました。
日々の暮らしの中に音楽がしっかり入り込んでいる風景を目にしたのです。
楽しい夕べでした。
いい思い出です。
ローマ人たちがお風呂好きなのは有名です。
皇帝たちは「パンとサーカス」を市民に与え、統治を成功に導こうとしました。
難しいことをいっても人民はついてこない。
とにかく食べるものと娯楽を与えなくてはいけないことを肌で知っていたのです。
そのためにつくられたコロッセオも壮観でした。
猛獣と戦う戦士の姿に熱狂した後で、市民たちはカラカラ浴場へ向かったに違いありません。
イタリアを扱った本
イタリアの歴史を扱った本としては、なんといっても塩野七生の『ローマ人の物語』は必読書です。
ただし長いですけどね。
彼女は1992年から古代ローマを描く『ローマ人の物語』を年1冊のペースで執筆しました。
2006年に『第15巻 ローマ世界の終焉』を書き完結したのです。
これを読むと、ローマ的な世界がどのようにしてできあがったのかが、よくわかります。とにかくじっくりと向き合うには最高の本だと思います。
これ以外にはないですね。
建築の方面から書かれた建築史家、陣内秀信氏の本も必読書です。
イタリアの建築物はとにかく魅力にあふれています。
都市の発達の仕方もみごとです。
しかし今回はそうしたアカデミックなものからは一線を画しているにも関わらず、とても魅力的な漫画をご紹介したいです。
それが「テルマエ・ロマエ」です。
これはラテン語で「ローマの浴場」を意味します。
時代は古代ローマです。
失業した浴場設計技師のルシウスは、友人に誘われた公衆浴場で突然タイムスリップしてしまいます。
彼がたどり着いたのは、日本の銭湯だったのです。
そこで出会ったのが平たい顔族の日本人でした。
日本独自の銭湯文化に驚嘆したたルシウスは、その文化をローマに持ち帰ることになります。
ここから本編が始まるのです。
漫画の中に時代をワープする話はたくさんありますが、発想が実に奇抜ですね。
原作は2008年2月から2013年4月まで連載されました。
単行本は2013年6月にて一度最終巻を迎えものの、2024年2月から、最終回の20年後を舞台とした続編が始まっています。
ヤマザキマリ
彼女は17歳のとき、イタリア・フィレンツェの国立アカデミア美術学院に入学しました。
そのいきさつが実にユニークです。
母親は札幌交響楽団に在籍するヴィオラ奏者でした。
10歳ごろまでは母の意向でヴァイオリンを習っていたそうです。
ミッションスクールに通っていた14歳の時、ヨーロッパ旅行を予定していた母親に仕事が入り、代わりに旅行に行くかと勧められ、軽い気持ちで1ヵ月ドイツとフランスを一人旅します。
その後、母親からイタリアに留学したらと勧められて、17歳で高校を中退しました。
フィレンツェにいた時、隣の部屋にいたイタリア人の詩人と交際を開始。
その後、妊娠したことを機に彼と別れ、男児を出産してシングルマザーとなります。
一度、日本に戻りイタリア語講師などをしながら、漫画を描き始めました。
その頃のことを書いたエッセイが、ある大学の小論文の問題になっています。
そこには実にユニークな彼女の生き方が描かれていました。
課題文
14歳の私は1ヵ月間、フランスとドイツに一人旅をしました。(中略)
その旅の途中で出会いがありました。
列車の中で、マルコさんというイタリア人のおじいさんに「家出少女か」と疑われたのです。
説明しても信じてもらえません。
さらに「絵が好きなのにイタリアに行かないのか」と。帰国後、母とマルコさんの文通が始まったのです
高校に入り、「絵は趣味でいいか」と思いかけた時です。
急に母とマルコさんが組んで「高校をやめて留学しろ」と言いだし、イタリアで美術を学びます。
ヨーロッパの人はお金になる仕事がいいと思わない。
芸術家になりたい人を応援します。
世の中、何があるか分かりません。
実は私の夫はマルコさんの孫なのです。
夫に付いて中東の砂漠の国、シリアに行き、「お風呂に入りたい」と切実に願いました。「古代ローマには公衆浴場がたくさんあったのに、なぜ今はないの」と考えて漫画「テルマエ・ロマエ」を描きました。
14歳の旅がなければ、この作品は生まれませんでした。
私は小さい時から漫画が大好きでした。
空腹でも、漫画を読むと満足できました。
芸術や漫画は心を満たす栄養素です。
美術の授業はとても大事な時間です。
みんなが必要だと思うから、美術は古代から残っている。
音楽も同じ。
表現したいと思うことに意味がある。
評価は後の話。
私は自分が読みたい漫画を描いています。
ぜひ、一度は美術館に行ってほしい。
絵の良さが分からなくてもいい。
私は興味がなくても旅行に行かされ、扉がいっぱい開きました。
自分が見ているものが世界のすべてじゃない、と知ってほしいのです。
価値観の違いを感じられる場所が美術館です。
映画でも本でも、漫画でも触れてみてほしい。
待っていても、何も起きない。動き回って、行動してみてください。
(宮崎日日新聞)
行動してみること
この文章を読んであなたが考えたことを800字でまとめなさいというのがその問題でした。
格別に難しいレベルの試験ではありません。
しかしこういう類の文章をありきたりのAI型小論文にまとめたのでは、高い評価は得られないでしょう。
あなたなら、どうまとめますか。
主題を何にするかがポイントです。
「まず行動ありき」を論点にするのなら、そこから自分が得た教訓をどれだけ採点者に理解してもらえるかが大切です。
自分だけの体験をいい気になって書いていてはダメです。
必ずそこに普遍性が必要なのです。
ぜひ、試みてください。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
