2023-03

【I was born・吉野弘】生まれるという受け身の宿命を人は背負う

吉野弘の代表作はいくつもあります。その中の1つが「I was born」です、ひとは自分の意志で生まれてくるワケではありません。その後、母の命と引き換えに生きていくのです。その厳粛な行為を実にみごとな言葉で表現しています。

【能・道成寺】蛇体に宿った現世への執着が夕暮れの満開の桜に映える

能の演目の中でも「道成寺」は特別なものです。主役の1つが鐘です。100キロ近い鐘の中に入ったシテは、たった一人で鬼に変身しなくてはなりません。乱拍子と呼ばれる足さばきは、1人の能役者として生きていくための関門なのです。

【能・杜若と葵上】激しい感情の渦が花の精や物怪の存在を浮き彫りにする

能は日本の芸能の中でも特殊な位置を占めています。これほど簡素な舞台が、なぜ豊饒なものになるのか、不思議でなりません。鼓と笛と太鼓の世界が、遠い人の原点へいざなってくれます。チャンスがあったら1度、能楽堂をたずねてください。

教科書の指導書を文庫化するという試みに筑摩書房の志の高さを感じた

教科書の指導書を文庫化したという試みはすごいですね。不明にして全くその事実を知りませんでした。むしろ現職の教師の人に読んでもらいたいと思います。どういう志で教科書をつくっていったのかという背景が、そこに見て取れるからです。

【戒老録・曽野綾子】計画通りの人生なんてありえない【痛快な本】

曽野綾子の『戒老録』を読みました。なるほどと納得させられることがいくつもありました。年齢をうまく重ねていくということは、大変に難しいです。しかし気をつければ、できることがないわけではありません。一緒に考えてみましょう。

【ある時間待ってみる力】大江健三郎のエッセイに込められた真意

ノーベル文学賞作家、大江健三郎が亡くなりました。新しく版を起こした著作が次々と出版されています。彼のエッセイが高校1年生用の教科書にありました。ここで紹介させてください。タイトルは「ある時間、待ってみてください」というものです。

【発心集・鴨長明】漢竹の笛だけを所望した風雅な隠遁者の仏教説話

鴨長明の『発心集』の中で元も有名な段を読みましょう。清貧に甘んじた法師の話です。何か欲しいものはないかと問われ、彼は食べるものも着るものもなんとかなります。いただけるのなら、あなたの領地でとれる漢竹の笛をくださいと所望するのです。
学び

【日本人の宗教観】無宗教の方が平和的だという意見にYesかNoか

宗教に関する問題はあまり出題されません。しかし社会学的な見地から日本人の宗教観を訊ねる問題は出ます。どういう特徴があるのかをきちんと把握しておいてください。雑種文化の中で、日本人の考え方はかなり世界標準とは違うものになっています。
学び

【ダメな小論文】主語を慎重に選ばないと感情優先の非論理的な文になる

ダメな小論文とはどのようなものなのでしょうか。一番は「私」を簡単に主語にもってくるタイプの文章です。一般的に誰もが同じ認識を持てるかどうかが、ポイントなのです。それなのに「私は~思う」式の文を書いていると、評価は下がります。

【養和の飢饉・方丈記】歴史の証言として価値の高い章段【鴨長明】

『方丈記』の中には歴史的な記述がいくつもあります。その中でも有名なのが、養和の飢饉の記述です。多くの人が亡くなった様子が、生々しく記述されています。おりしも末法思想が広く信じられていました。人々の心の中はどのようだったのでしょうか。

【源氏物語・雨夜の品定め】どのタイプの女性と一緒になれば幸せになれるの

『源氏物語』帚木の段に出てくる「雨夜の品定め」の話をしましょう。これは紫式部が女性観を綴った段落です。どのような女性と結婚すれば、男性は幸せになれるのか。その秘密を探ったところなのです。いろいろな過去の経験が色濃く滲んだ章段です。
学び

【小論文の必殺ワザ】要約問題で確実に得点をしてから最後の設問に挑む

小論文には長い文章を一気に書かせるという設問ばかりがあるワケではありません。最初に内容の質問をしたり、要約を書かせたりするのです。それが導入なのです。理解を深め、内容を把握してから、次の段階に入るのです。ここで確実に得点をゲットしましょう。

【後に会はんと・大和物語】伊勢物語の最終章を髣髴とさせる人との別れ

『大和物語』と『伊勢物語』は日本を代表する歌物語です。しかしその性格はかなり異なります。書き方の違いや、所収されている歌の詠みぶりにもむ大きな違いがあります。それをじっくりと検証していきましょう。
学び

【小論文の基本戦略】推敲を重ねずに文章の質がアップすることはない

小論文の基本は何でしょうか。それは推敲を重ねることです。自分ではこれでいいと思っても、あとで読み直すと、何を論じようとしたのかがわからないケースが多々あります。論理が破綻しているのです。何度も読み返し、文章を直すことが必須です。

【信玄と謙信・頼山陽】敵に塩を送るという逸話の出典【日本外史】

敵に塩を送るという諺をきいたことがありますか。現在ではさまざまな意味で使われています。元々は頼山陽の『日本外史』という本が出典なのです。謙信と信玄の戦いの中で、塩が断たれた事件から、この逸話が生まれたのです。

【男こそ・枕草子】いつの世も男女の仲は複雑怪奇です【中世の恋愛観】

いつの時代も男女の仲は複雑怪奇です。ましてや中世においては、現代とは全く違う結婚観を持っていました。女性はあくまでも家に縛り付けられていたのです。しかし清少納言は宮廷に仕えたことで、世間を一気に広くしました。その結果が『枕草子』に残っています。