【小論文の基本戦略】推敲を重ねずに文章の質がアップすることはない

小論文

推敲(すいこう)とは

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は文章を書いていく上での大切なポイントをお教えします。

それはズバリ「推敲」です。

この表現をご存知ですね。

元々は中国の故事熟語から来ています。

ご紹介しましょう。

唐の国の詩人賈島(かとう)は、自分の作品中の語句の扱いについて悩んでいました。

「僧は推(お)す月下の門」の一句についてです。

「僧は敲(たた)く月下の門」にするべきかで迷いました。

馬に乗って考えにふけっていた彼は、有名な詩人、韓愈(かんゆ)の行列につっこんでしまったのです。

韓愈はその非礼を怒るどころか、「敲く」の方がよいと教示してくれました。

2人は馬を並べてそれからしばらくの間、詩作について真剣に語り合ったといいます。

「推敲」という表現はこの故事に由来しているのです。

どちらの表現がより効果的なのかで悩んでしまう話は、日本にも多くあります。

和歌などの歌論集を高校でも学びます。

たった1文字とはいえ、そこに集中する詩人の熱意には頭が下がりますね。

この「推敲」はその類いの話の中で、最も有名なものの1つです。

ぜひ、頭の隅に置いておいてください。

書いた直後

文章を書いた直後は、脳がヒートアップしています。

最高潮の緊張状態にあるのです。

自分ではものすごくいい文を書けたと舞い上がってしまうものです。

しかしこれは一時の迷いに過ぎません。

なぜそんなことが言えるのか。

誰もが辿る道だからです。

その証拠にしばらく時間をおいてから、もう1度読んでみましょう。

当然、頭の熱も少しは下がった状態に戻るはずです。

なぜ時間をおく必要があるのでしょうか。

頭脳の中に文章の余韻がそのまま残っていて、それが冷静な判断の邪魔をするのです。

パソコンの用語でいえば、キャッシユが残ったままの状態です。

言葉の記憶が鮮明で、本当にその文章に価値があるのかどうかがわかりません。

30分~1時間後に読み直してください。

できたら数日後でもかまいません

あちこちにおかしなところがありませんか。

チェックすべきなのは、論理の飛躍です。

自分ではきちんと結論に向けて論点を整理したつもりなのに、途中からねじ曲がっているなどということがよくあります。

こんなつもりで書いたワケではないのに、そのまま読んでいると、なんとなくおかしい。

このままの論理で進むと、この結論には辿り着かない。

言葉の使い方におかしなところがたくさんある。

特に「てにをは」が気になる。

主語と述語の距離が遠いので、内容がみえてこない。

例話の入れ方が、なんとなくわざとらしい。

自分の都合でとってつけたような経験談が入っている。

いろいろな欠点があちこちから見えてきます。

推敲の基本は、時間を置くことなのです。

文字のチェック

推敲の2番目は、可能なら実際の試験用紙と同じ形にしてみることです。

入試の場合、解答用紙は各学校によって全く違います。

縦書きか横書きか。

1行が何文字なのか。

マス目の大きさはどれくらいか。

なぜこんなことを気にするかというと、実際に鉛筆を持って書き終わった時の解答用紙の印象が大切だからです。

横か縦かの違いは非常に大きいです。

1行が何文字かによって、改行した時の文章の印象が全く違うものになります。

改行し、空白の部分や余韻を持たせることで、全体の答案の形が決まるからです。

まだそこまでの段階に達していない場合は、とりあえず400字の縦型原稿用紙で練習してください。

しかしいずれ、学校ごとの解答用紙を入手することが大切です。

慣れているかいないかの差は、想像以上に大きいのです。

紙に書いたものを自分の眼で見るということの大切さを学んでください。

パソコンなどに打ちながら、勉強する人もいるかもしれません。

時間の短縮になるような気がします。

しかしこれは賢明な方法ではありません。

漢字のミスなどが減ると思っていたら、大間違いです。

それも含めての入学試験です。

あらかじめ書いたものを提出するのなら、それもいいでしょう。

しかし試験場で、一斉に小論文のテストを受ける場合には、絶対にやめるべきです。

あとで痛い思いをしないように注意してください。

声に出して読む

本当は添削をしてもらうのが1番の方法です。

論理性から、内容の一貫性までを全てみてもらえる環境があれば、理想的です。

信頼できる先生がいたら、お願いしてみてください。

そうでない場合は、最初に自分で声を出して読んでみることです。

これは一見、有用でないようですが、やってみると、意外なほど推敲への意志が高まります。

言葉が自然に流れていかないところが、多く出てくるのです。

最初に書いた時、ちょっと悩んだところなどで、引っかかったりもします。

追記した部分がやっぱり不要だったということもあります。

わかりにくい表現を使ってしまったというケースもみられるようです。

言葉の切り方が不自然で、句読点の位置をかえたりしたくなります。

あらゆる可能性がありますので、十分に時間を取ってください。

紙に書かれたものは、他者の意識として扱われます。

たとえ自分でまとめたものであっても、既に第3者のものなのです。

それが非常に大切です。

さらに読むことで、情報が音から入ってきます。

この作業が完全に自分の文章を、客観的な場に移動させるのです。

以上の作業をつねに意識し心がけていると、実際の試験場ではできない作業ですから、それを内面化しつつ、文章を完成させられるのです。

頭脳が熱くなりすぎません。

第3者の眼をいつも自分の外につくれます。

このシステムが完成すれば、推敲の意義が十分、自分のものになったといえるでしょう。

何度も試みてください。

すぐにはできません。

時間がかかります。

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覚悟をして勉強を続けることです。

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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