【困っている人・大野更紗】したたかに難病とつきあう【壮絶な戦い】

essay

困っている人

みなさん、こんにちは。
同僚に勧められて読んでみました。
大野更紗さんという若い女性が書いた本です。
ビルマ(ミャンマー)の難民と知り合い、その足で現地へ出かけるほど活動的な人です。しかし突然襲った難病との戦いがこの本のテーマです。
一言でいえば、壮絶です。
ちょっと想像することができません。
麻酔もかけずに筋肉を切り取るなどということも、今の医学にはあるのです。
全く病名がわからないまま、1年が過ぎます。

その間は検査の連続でした。
それに伴う膨大な医療費。
両親の不安はいかばかりか。
やっと病名がつきます。
皮膚筋炎、筋膜炎脂肪織炎症候群。
ステロイド剤の大量投与により、眼球は開いたまま、目も閉じなくなりました。
危篤状態にもなりました。
難病医療費助成と身体障害者手帳の交付を申請します。

友人の助けがなければできないことばかりでした。
お尻の肉が腫れ、そこから血と膿の混じった液体が流れ出たりもしました。
MRIに入るたびに新しい病気が加わります。
卵巣嚢腫も発見されました。
この悲惨な状況をよく彼女は文章にしたと思います。

言葉

呻いて泣くだけの日々を埋めるものが唯一、言葉だったのかもしれません。
その後、病院の近くに引っ越したり、それはそれはすさまじい日常の風景が描かれています。
ポプラ社から出版され、文庫にもなっています。
明るい文の裏側にある、さまざまな医療現場の課題が重いです。
いずれにしても、免疫系の病気の類いまれな困難さというものが、これでもかというぐらい描かれています。
文章はものすごく爽やかです。
その反対に現実は壮絶です。
その後の生き方もすごいのです。
彼女には言葉がありました。
聡明な人です。
人間は生きるために、言葉で世界を切り拓いていく以外に方法がないのかもしれません。

その後の軌跡

2013年、明治学院大学大学院社会学研究科博士前期課程に入学し、2015年に修了。
さらに2015年より明治学院大学大学院社会学研究科博士後期課程、2018年修了。
社会学博士を取得しました。
2018年には第8回日本学術振興会育志賞を受賞。
2018年4月より、東京大学先端科学技術研究センター人間支援工学分野にて、日本学術振興会特別研究員になりました。
さらに2021年4月から、東京大学医科学研究所公共政策研究分野特任研究員をしています。
研究テーマは難しいものばかりです。

これも彼女が難病にかからなかったら、絶対に取り組むことはなかったでしょう。
医療社会学、歴史社会学、難病医療政策史、難治性疾患の医療政策。
今は戦後の難病医療政策のメカニズムの解明を主に研究しているとか。
どれもすごく難しそうです。
特に遺伝学的市民権などという言葉ははじめて聞きました。
ぼくにはすべて想像の外にあるものばかりです。

人間の可能性

人間の可能性というのはどこにあるのかわからないもんです。
彼女の場合はまさに難病にかかったことがここまで人生をかえました。
ぼくは今まで難治性の病気になど全く縁のない人生をすごしてきたのです。
医療関係に進めば、そういう患者さんを見かける機会があったかもしれません。
しかしそれも全くなかった。
そういう意味で、この本には目を開かれました。
現実は真っ暗でも、それを突き破ったのは彼女の言葉です。
それだけは読んでいて、よくわかりました。
親の立場からみたらつらいことばっかりです。
それでも人間はいきていくんだな。
そう思わされた1冊です。
手にとってみてください。

 

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