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「詩人への旅・丸山薫」海への憧れは限りなく

異邦人詩人ははるかな海を夢見た。エトランジェの言いしれない寂しさが、いつとはなしに少年の心を海に向かわせたのである。丸山薫は明治三十二年、大分県荷揚町に生まれた。官吏であった父の仕事の関係で各地を転々。その度に小学校をかえ、満足に友達もでき...
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「詩人への旅・金子光晴」湖畔に眠る哀傷

疎開昭和十九年、戦争は次第にその苛烈さを増していた。毎日のように鳴り響く空襲警報。東京への爆撃が開始されたのもこの年の十一月であった。金子光晴はこの年の暮れ、山梨県山中湖畔に疎開した。当時を回想して彼はこう書いている。「十二月はじめ頃に、す...
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「詩人への旅・村野四郎」武蔵野に宿る郷愁  

武蔵野武蔵野の冬は寒い。空気がしんと冷えて、夜になると酒が恋しくなる。東京府北多摩郡多摩村染谷。今の府中市白糸台である。村野四郎は代々酒問屋を営む家の四男として生まれた。現在では家が建ち並び、当時の面影を残す木々も少ないが、その頃の武蔵野に...
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「詩人への旅・新美南吉」青春は短くも燃え  

童話作家・新美南吉風光の地、知多半島。名鉄河和線半田駅で降りると、そこは童話作家・新美南吉の故郷であった。「わが村を南にゆく電車は、菜種ばたけや麦の丘をうちすぎ、みぎにひだりにかたぶき、とくさのふしのごとき、小さなる駅々にとまり……」と彼は...
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「詩人への旅・宮沢賢治」光の果てを夢見て 

実りの季節 花巻は実りの季節を迎えていた。稲の穂が一面黄金色に輝いて、吹く風に頭をたれている。北上川にそって旅をしていると、宮沢賢治の世界が流域の風景と強く響きあい、重なり合っているのを感ずる。遠くに早池峰山系の山々、広々と続く平野、そして...
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「詩人への旅・萩原朔太郎」烈風の故郷へ  

強い決意昭和四年は萩原朔太郎の人生にとって、大きな意味を持つ年であった。親友室生犀星への手紙には彼の強い決意がにじみ出ている。「僕はいよいよ生活上の決算をする。本年は著作上での決算をしてしまったからついでに一切を帳じめにして、新しく人生のペ...
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【星の王子さま】童心にいつでも戻れる不思議な本【サン・テグジュペリ】

星の王子さまみなさん、こんにちは。今日は童話のおはなしです。といっても子供の童話とは限りません。これはむしろ大人向けの本です。もちろん、子供が読んだって面白い。しかしその深さは年を重ねるほど、よくわかるのです。サン・テグジュペリの代表作です...
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「詩人への旅・立原道造」夏を旅する者達は  

信濃追分への旅夏の盛り、信濃追分を旅した。碓氷峠の急勾配をあえぎながら、上った汽車は軽井沢の駅に着くと、そこで多くの若者を吐き出した。やがて浅間山が見えてきた。中軽井沢を出たあたりから、車窓には可憐な野の花が咲き乱れている。道造が第二のふる...
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「詩人への旅・中原中也」故郷はいまだ遠く  

谷あいの町湯田は温泉の町である。その名の通り、田から微量の鉱分を含んだ湯が湧き出てくる。山口市や周防灘沿岸からも湯治客が訪れる遊蕩の町だ。中原中也はこの谷あいの町に生まれ、そこで青春を送った。父が軍医であったため、旅順、広島、金沢の地を転々...
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【サッカーと資本主義】禁欲の思想がオフサイドのルールを作った

高校3年の教材みなさん、こんにちは。今回は社会学者・大澤真幸の評論をとりあげます。これは高校3年の現代文で取り上げる教材です。かなり難しい部類に入ると思います。なぜか。この評論の背景には社会学のバイブルともいわれているある本が関係しているか...
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「詩人への旅・高村光太郎」空は遙かに青くすんで  

高村光太郎東北本線を北にのぼっていくと、白河、郡山を経て二本松に着く。光太郎の妻、智恵子の生まれた故郷である。冬であった。プラットホームにはうっすらと雪がつもり、風が冷たかった。光太郎は東京下谷の生まれで、東北に縁のある人間ではない。しかし...
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「詩人への旅・伊良子清白」のどやかな海の記憶

伊良子清白伊良子清白の故郷は鳥取である。しかし実母をはやく失った彼は、父の再婚、転任に伴い十歳の年に三重県の津に移り住んだ。故郷との縁はとても薄かったとしか言いようがない。三重の海はのどかであたたかい。幼い頃の鳥取での生活に比べて、何もかも...
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【能・隅田川】梅若殺しを取り入れた狂女ものの代表作

隅田川みなさん、こんにちは。今回は能の中でも狂女ものとして知られる『隅田川』を取り上げます。能は不思議な芸能です。初めて見たのは学生時代でした。渋谷の松濤にあった観世能楽堂の第一印象は、静かなところだというものです。都会の中にありながら、な...
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【葉山嘉樹】セメント樽の中の手紙はワーキングプア・トラウマ小説

プロレタリア文学みなさん、こんにちは。今回は国語の授業で扱った『セメント樽の中の手紙』について書きます。そんな小説知らないという人もいるかもしれません。随分と昔の作品です。今では青空文庫で読めます。ご存知ですね。ネットで読める無料の小説です...
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【小論文・理由は2つあるという書き方】論拠の説明に全力を注げ!

何を書けばいいのかみなさん、こんにちは。今回は試験場で「何を書いていいかわからない」受験生のために、小論文の極意をお教えします。いよいよ推薦入試が間近という人も多いでしょうね。今まで、文章を書く練習をたくさんしてきましたか。ここへきて焦って...
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小論文の技法!段落分けと文末表現に神経を使えばバッチリ

段落の切り方みなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。今回もみなさんに小論文の書き方をお教えします。格別に難しいことを言うつもりはありません。ただここに書いたことを応用してください。それだけで、ぐっと小論文の文体に近づきます。...
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【うたたね・阿仏尼】若き日の恋に破れた歌人は逢坂山を見て何を

若き日の恋みなさん、こんにちは。今回は阿仏尼の日記を読みましょう。『十六夜日記』で有名な彼女がまだ若かった頃の日記です。『うたたね』という書名がそれです。ある高貴な青年と激しく燃えた初恋の思い出を、憂愁の中で綴りました。失恋の思い出が容易に...
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小論文800字を60分以内にまとめ上げる時間配分のコツ

制限時間内に書きたいみなさん、こんにちは。いよいよ受験勉強も本格化する季節です。それと同時に学校推薦や総合型選抜の小論文対策をしなくてはいけません。いくつか書いてはみたけど、どうもしっくりこない。字数800字を制限時間60分では半分ぐらいし...
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「真夏の死・三島由紀夫」子供を失った母親が見た海の風景

真夏の死みなさん、こんにちは。今回は教科書に載っていない三島由紀夫の小説について語ります。というより、彼の作品は殆どが載せられない作品ばかりです。没後50年を過ぎて思想性が透過されたのでしょうか。近年、作品の評価が前面に出てきたような気がし...
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「空気を読む」外国人にとって日本人の生活習慣や行動は謎だらけ

日本人だけなのかみなさん、こんにちは。今回は「空気を読む」という表現について考えます。実にユニークな言い回しですね。日本人はよく使います。しばらく日本にいた外国人なら、何度も耳にしたことがあるはずです。しかし旅行者には、なんのことか理解でき...
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【養老の滝・十訓抄】親孝行の功徳で滝の水がお酒になったという伝説

親孝行の徳みなさん、こんにちは。今回は「養老の滝伝説」を取り上げましょう。養老の滝といえば、駅前にある赤提灯をイメージする人もいるでしょうね。まさにあのネーミングの元になった話がこれなのです。『十訓抄』という本に載っています。ちょっと読み方...
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【自然木とコンクリート】二項対立で論点をあぶりだす【隈研吾・安藤忠雄】

コンクリートの時代みなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。建築家・隈研吾の名前が一躍知られるようになったのは、国立競技場の設計がコンペに通った時からといってもいいでしょう。自然の素材である「木」を使い、格子を多用したデザイン...
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【蜜蜂と遠雷】ピアノ好きなら読まなければ絶対後悔する小説はこれ!

直木賞と本屋大賞みなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。よく読まれてますね。文庫本になってから、ますます出足がいいようです。長いので最後までたどりつかない読者も多いとか。しかし読み終わると、なんともすがすがしい気持ちにさせら...
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「非正規教員」増加する臨時任用の教師たちは今日も雇止めにおびえる

教師の職制みなさん、こんにちは。学校というところは不思議なところです。生徒からみれば、みんな先生ですが、実態は各層に分かれています。一番、わかりやすいのが管理職ですね。校長の上には統括校長などという職制もあります。副校長は以前、教頭といいま...
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「5分後に意外な結末」日常の中で起こったドラマがちょっと快感になる日

本を読まないみなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。夏休み前に、とある中学校の図書の先生といろいろ話をしました。生徒にいちばん人気がある本は何かという、あるあるの話題です。最近はあまり本を借りていく生徒がいないらしいのです。...
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「舞姫」主人公・太田豊太郎は自意識過剰ないい子を演じすぎたのか

自我の目覚めみなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。今日は3年生になると必ず習う小説の話をします。タイトルは『舞姫』です。今風にいえば「ダンサー」ですかね。森鴎外の『舞姫』は完成された日本で最初の近代文学作品です。日本の近代...
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【恩寵の音楽】ヴェルディのオペラ「ナブッコ」の合唱が感動的だった

ナブッコみなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。「新春オペラコンサート」へ出かけた時のことです。初めてでした。NHKで同時に放送されますね。今までもオペラはいくつも見ています。卒業生が二期会に入っていたりして、招いてくれた公...
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【落語】死神のちょっと寒くなる構造を一挙解説「原作はグリム童話」

人気演目の一つみなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。8月24日からNHKで再放送されていますね。「昭和元禄落語心中」がそれです。雲田はる子さん原作の漫画で、2010年から2016年まで続いたという人気作品です。ちなみにこの...
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「ChatGPTの応用」論理的な文章の書き方とプロンプトの効果的な使い方

ChatGPTを使いこなすみなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。今回は今話題のChatGPTを利用して、小論文を書く方法を勉強しましょう。といっても実際の試験場に、PCやスマホを持ち込むわけにはいきません。これはあくまでも...
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「価値観の転換」AI時代に求められる人間の能力とはなにか

価値観の転換みなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。今回はよりAIのもたらした変化について、より本質的な問題を考えてみます。AIの進歩があまりにもはやく、人間はかなり追い詰められつつあります。自動運転やロボットの制御などは、...