角田光代『さがしもの』の世界に心惹かれる

別にどうってことない風景が広がる小説です。
登場人物も若い。
息苦しい現実の一部を少しだけ切り取ってまとめてある。
人は死ぬまで生きなくちゃならない。
切ない。
日々を過ごすことの難しさも感じる。

男がいて女がいて、気にいれば一緒に暮らす。
時に相手がかわることもある。
それが生きていくことなのか。

センスのある人だ。
文の切り方がうまい。
絵が浮かぶ。

今までに何冊か読んだけど。
『八日目の蝉』だったかな。
すごいテンションで奇妙だと思った記憶だけが残ってる。
子どもを誘拐して、小豆島で暮らす話だった。
母性の迫力を感じた。
『紙の月』もすごかった。
ごく普通の女性銀行員が預金を横領した事件です。
人間はなんでもするのだ。

『さがしもの』は本にまつわる話ばかりを集めた短編集。
「ミツザワ書店」がいい。
彼女が文学新人賞をとった頃の様子が手にとるようにわかります。
あんな感じなんでしょうね。
賞をとったあとは。

おばあさんの経営する本屋から万引きした昔話とひっかけてある。
うまい。

賞をもらったあと、すごく気になってた本屋さんにお金を返しにいく。
店主のおばあさんはすでに亡くなった後だった。
奥の家にいた孫娘が閉めたまんまの店内に案内してくれる。
そのときの様子がいい。

本の匂いがする。
積み重ねられた本が囁く。
時が戻る。
本はどこへでも連れていってくれると呟いていた本好きのおばあさん。
味わい深いね。

他にもたくさん心にしみる短編があります。
アジア旅行をたくさんした彼女ならではのいい話も載ってるのだ。
読んでみてね。
本は生きてます。

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