「悩みのるつぼ」みんな悩んで大きくなった「車谷長吉の人生相談」

悩みのるつぼ

みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
作家車谷長吉さんが亡くなったのは、もうかなり前のことです。
誤嚥による窒息死でした。
ご存知ですか。
小説を読んだことのある人は少ないでしょうね。
代表作は『赤目四十八滝心中未遂』です。
教科書にはぜったいに載らない作家の代表です。

なぜか。
あまりにも毒が多すぎます。
生徒には刺激が強すぎるのです。
彼は重度の蓄膿症で、鼻から息が出来ませんでした。
手術をすればなおるかもしれません。
しかし目の神経を切ってしまう可能性が大きかったのです。
それで諦めたと綴っています。

ぼくが好きだったのは、朝日新聞日曜版に連載していたお悩み相談のコーナーでした。
これは「悩みのるつぼ」というタイトルで今も続いています。
今は上野千鶴子さんや野沢直子さんなどが解答者です。
深刻な悩みから、つい笑ってしまうものまで多種多様です。
もちろん、本人は深刻そのものなのです。
バス停で先頭にたつおじさんが、いつも乗車位置から5メートルくらい離れているというのもありました。

だからその後に並ぶ人がどんどん後ろへ続いて、バスが来た時はみんな小走りに乗らなくてはならないらしいのです。
相談者は真剣に悩んでいました。
本当に人生にはいろんな悩みがあるものです。
この回答欄をピックアップした本があります。
それも車谷長吉さんの分だけをまとめた本なのです。

朝日文庫に入っています。
久しぶりに、あちこちを拾い読みしました。

女子生徒への恋

ぼくの最も好きな悩みがこれです。
ちょっとご披露しましょう。
教え子の女子生徒が好きで好きで堪らず、情動を抑えられません。
どうしたらいいのでしょうかという40歳の高校教師の深刻な悩みです。

英語を教えて25年。
妻と子供2人がいます。
生徒にも人気があると自他ともに認めています。
相手は17歳の高校生で、授業中に自然に振るまおうとすればするほど、女生徒の顔を見てしまうのです。
自分が今以上、具体的な行為に出るのは自制心でおさえています。
どうしたらいいでしょう。

これが悩みです。
最近はよく生徒との関係が報道されていますね。
まさにあのパターンです。
さて車谷氏の回答はどんなもんでしょうか。
ここに作家の横顔がよく見て取れます。

回答

怖れずに突き進んで破綻して、職業も名誉も家庭も失った時、はじめて人間とはなにかということが見えるのです。
あなたは高校の教師だそうですが、好きになった女生徒と出来てしまえばよいのですと、けしかけているのです。
まだ本当の人生が始まっていないのだから、これからその方向へ進みなさい。
この世の苦しみを知ったところから真の人生が始まるのです。

彼の回答には、作家、車谷長吉という人間の全ての思いがこもっています。
ホントに怖い人です。
小説を何冊か読めば、それがよくわかります。
今回はここまで。
ぜひ、彼の小説を読んでみてください。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

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