「超高齢化」リタイアした人々も役割と生きがいを感じとれる社会とは

小論文

高齢化社会

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は超高齢化社会の現実を取り上げます。

日本の高齢化率はいまや世界の最高水準にあるといってもいいでしょう。

少子化と同じレベルで、今後も進むものと思われます。

そうした環境のなかで、日本人はどのように生きていったらいいのか。

その問題を中心に考えてみます。

小論文のテーマとしてはよく出題されるものですね。

congerdesign / Pixabay

しかし「生きがい」というトピックスとあわせて論じなさいとなると、かなりの難問になります。

今日、「死生観」の問題とあわせて、根本的な高齢化社会論がますます必要になっています。

大学入試においても、少子化の問題とあわせて、高齢化に対する多くの考えが示されているのです。

医療環境の改善が高齢者の幸福感を増したのかというテーマもその1つです。

医療サービスが患者のQOL(生活の質)を増したのならばともかく、寝たきりの延命治療には意味がないとする考えもあります。

また21世紀型の安定社会に向けて、年金システムや社会保障をどう維持するのかという制度の側からの思索もあります。

このようにさまざまな視点から問題を切り分けていくと、高齢化問題だけでも

小論文のテーマが実に多様であることがよくわかるはずです。

今回はその中でも大きな問題の1つである「生きがい」について考えてみましょう。

これは実際に大学入試で出題されたテーマです。

課題文はかなりの長文でした。

そこから設問が出され、受験生は3つの設問について、それぞれ解答を要求されたのです。

今回はその中の最後の問題だけを扱います。

課題文の後半の内容は次の通りでした。

課題文

私たちは今後、何に取り組むべきなのでしょうか。

それを考えるに当たって注意すべきことがあります。

それは数字に踊らされないことです。

確かに戦前50歳であった平均寿命は現在80歳となり、30歳延びました。

数字の印象だけでいえば、高齢者が一世代分にあたる30年長生きするようになったと感じます。

まさにお年寄りが激増するイメージです。

しかし現実には戦前に比べてお年寄りが、平均で30年長く生きるようになったわけではありません。

実は、平均寿命は乳児死亡率が低下したことも大きく影響しているのです。

平均寿命が35歳とされる江戸時代にも100歳を超えるお年寄りは少なからずいました。

高齢者は長老と呼ばれ、種まきや収穫の時間、自然災害の知識、

村の歴史や掟などを伝授する重要な役割を担い、尊敬を集めていたと思われます。

他方、現代では役割もなくただ生かされているだけの高齢者が増えています。

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私たちが取り組むべきは、この点なのです。

高齢者は社会からリタイアしなければならないと誰が決めたのでしょうか。

そもそも定年制は、人口が増加していく戦後復興期において若い世代に仕事を譲るための方便として生まれた制度です。

実際江戸幕府には100歳近くまで役職について、働いていた人たちの記録が残っています。

高齢者が元気でいながら何の役割も与えられない環境こそが問題であり、

このことが我々の直面する多くの課題を生み出しているのではないでしょうか。

出典 江崎禎英(よしひで)『社会は変えられる』

設問

筆者は「高齢者が元気でいながら何の役割も与えられない環境こそが問題であり、

このことが我々の直面する多くの課題を生み出しているのではないでしょうか」と述べている。

高齢者が元気でいながら何の役割も与えられない環境を改善する取り組みとしてどのようなものが考えられるか。

あなたが有効だと考える取り組みの具体例を1つ挙げて、その取り組みが環境の改善につながる理由を説明しなさい。

またその取り組みが社会の直面している課題の解決にどのように貢献するかについて、

あなたの考える理由とともにわかりやすく500字以内で述べなさい。

解答にあたっては設問の条件を明確にすることが、最も大切です。

いくら内容がよくても、解答の条件を満たしていないものは意味がありません。

入試小論文では、とにかく要求を守ることを第1の目標にしてください。

➀制限字数は500字。(9割以上は書く必要がある)

②取り組みの具体例を必ず書く

③環境改善の理由を示す

④その行動が課題の解決にどのように貢献しているかを明らかにする

以上の4つの点を全て網羅することが必須です。

具体的に何を書くか

高齢者の生きがいの問題は、難しいです。

最初に元気でいながら、何の役割も与えられていないという実態をある程度示す必要があるでしょう。

同時に、高齢者が自らの技術や経験を示す場面がどこにあるのかを、考えてみなければなりません。

あなたの知見で、それが可能ですか。

近くにいる高齢者が何をしているのかを思いだしてください。

どのような仕事が彼らに与えられているでしょうか。

それを正確に見てとることです。

その際、シルバー人材センターやNPOなどの活動なども知っていれば、参考になりますね。

あるいは現役世代の補完的な仕事として、具体的に何が行われているか。

高齢者が生きがいを感じる労働のあり方とはどのようなものか。

ポイントはそのあたりにあると思われます。

もちろん、さらに複雑な労働のかたちで、社会に貢献し、生きがいを感じている人も多いはずです。

高齢の人たちを専門にして、一度リタイアした人たちに職業を斡旋している会社などもあります。

彼らが実際にどの程度の「生きがい」を感じているのかが、ポイントです。

社会の中で感謝と尊敬を得ながら、活躍をしていくことは経験豊かな高齢者にとって生きがいの創造になります。

基本は行政が先導して、地域との連携をはかる必要があります。

環境の改善を積極的にすすめるという意味で、学童や放課後の活動に関わることなども可能なのではないでしょうか。

地域の緑の保全活動などにも積極的に参加することが可能だと考えられます。

あらゆる方面から、現在、高齢者が何をしているのかをチェックしてください。

ハローワークへ行けばわかりますが、高齢者への求人はかなりあります。

しかしその内容は、清掃、マンション管理人、交通誘導、駐車場警備などに限られがちです。

身体的に十分健康でないと、なかなか働くこともままならないのが現実なのです。

そうしたなかで、子供たちとの触れ合いを求めつつ、社会に対する貢献もできる

という意味で、小学校などの児童に対する活動は生きがいともうまくマッチする例の1つです。

NPOの活動なども、十分に意義ある労働と考えられるでしょう。

取り組みの具体例をうまくまとめることが、ここでは重要です。

もちろん経済的な裏付けが必要なことはいうまでもありません。

しかし多くを求めるというよりも、社会との接点を切らさないということに焦点を置くことが、ここでの論文の主眼となります。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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