2023-12

【想像し物語ること・大江健三郎】誰もが自己表現をしたいと願う欲求の意味

人間は誰でも自分を表現したいのです。それが生きているということの証しです。想像力を自由にはばたかせ、他者との垣根を払いのけようとする作業なのです。今回は大江健三郎のエッセイを取り上げてみました。

【能・隅田川】梅若殺しを取り入れた狂女ものの代表作【母の悲しみ】

能の中でも狂女ものとジャンルの作品はそれほど多くはありません。『隅田川』はその代表でしょう。『伊勢物語』を題材にしながら、それとは違う梅若伝説をあしらっています。子供に死に別れた母親の悲しみが実にみごとに描かれています。

【猟師仏を射ること・宇治拾遺物語】世間知らずな聖と判断力のある猟師は

説話集の中から題材を取り上げてみました。世間知らずな聖と世の中を冷静に見ている猟師の話です。2人の対比がわかりやすいので、昔話として、長い間親しまれてきたのでしょう。ここからどのような教訓が得られるでしょうか。考えてみてください。
学び

【一文一義・貫徹】短文をうまく重ねられる人だけが小論文の勝者になれる

文章を書くのは本当に難しいです。何か秘訣はないのでしょうか。あります。とにかく短文を積み重ねていくことです。長い文章を書くと、主語と述語が離れてしまいます。それだけ内容を読み取るのに、手間がかかるのです。これを一文一義主義といいます。
学び

【はじめての沖縄・岸政彦】湿気を含んだとろりと甘い亜熱帯の匂いに誘われて

沖縄の魅力とは何でしょうか。社会学者がハマったその土地の持つ力とは。自分の感性のままにエッセイを綴りました。何が彼をそうさせたのでしょうか。ほんものの沖縄はどこにあるのか。それを一緒に考えます。

【フェミニスト批評の試み】男性文化の視点から離れた別の切り口を模索する

批評は長い間、男性の文化を起点として行われてきました。それを女性の視点から試みるという流れが存在しつつあります。「フェミニスト批評」がそれです。どのようにして、女性の切り口から批評を行えばいいのかという指標になります。お読みください。

【陰翳礼讃・谷崎潤一郎】風雅を愛する日本人の美意識を突き詰めた随筆

日本人の美意識を究極まで煮詰めたエッセイが、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』です。どれほど日本人が自然の明かりを大切にしてきたのかということを、論じています。ここに示された漆器に対する愛情なども、彼の経験に基づいてまとめられています。

【鞄・安部公房】青年が抱えて苦しんだ鞄の持つ意味は【寓意のナゾ】

安部公房の小説はどれも寓意に満ちています。その意味を探りながら読まないと、何が書いてあるのかよくわかりません。この『鞄』という短編も実に難解です。どういう意味があるのか、あなたも考えてみてください。

【山東京伝・内田百閒】不思議な味わいのある夢物語は師・漱石の筆致に似て

作家、内田百閒の世界は実にユニークです。今回は彼の夢物語『山東京伝』を読みます。この江戸時代の作家に弟子入りした男が見たものはなんであったのか。それを追いかけていくだけで、不思議な世界がそこにあらわれます。

【無常ということ・小林秀雄】常なるものを見失った現代人に必要な心構えは

文芸評論家、小林秀雄の評論『無常ということ』を読みます。名文の誉れ高い内容です。最初に古典の文章を取り出し、そこから人生や歴史をどう考えればいいのかというテーマを展開していきます。内容に飛躍があり難解です。
学び

【文学の仕事・加藤周一】科学技術の時代に文学が必要な理由【小論文】

立川高校の推薦入試に出題された文章です。筆者は評論家の加藤周一氏です。彼は文学の役割について考えました。科学技術の時代にどこまで文学は意味を持つのか。人間の生きる意味を考える手段としての役割を考察したのです。

【完璧・十八史略】故事には歴史の重みと人の魂を鼓舞する知恵がある

完璧という故事はどのようにして生まれたのか。中国の歴史を読み解かなくてはなりません。『十八史略』の中にありました。「和氏の璧」と呼ばれる宝を欲しがった秦とそれを取られたくなかった趙との心理作戦の様子が元だったのです。

【那須野・奥の細道】眩しい光の中に突如あらわれた撫子のような少女は

『奥の細道』の中の「那須野」の段を読みましょう。ここで特筆すべきなのは、突然登場するひとりの女の子です。名前をかさねと言います。そこから重ねるという文字を連想し、さらに撫子の花を思い浮かべました。句と共に鑑賞してみてください。
学び

【褒めるということ】カウンセリングの手法「コンプリメント」の難しさ

カウンセリングの基本的な手法の中にコンプリメントがあります。これは褒めるということです。しかし誰もがうまく褒められるワケではありません。やり方によっては、相手を不愉快にしてしまうこともあるのです。そのうまい使い方を考えてみましょう。

【朋党論・欧陽修】君子と小人の党派を見分けられる君主が天下を治める

欧陽修という文人が書いた『朋党論』 について学びましょう。 君子と 小人の 党派をどのようにして 見分けるのかということです。優れた人々が率いる党派を見定められなければ、皇帝は天下を治めることができません。しかしその難しさはどれほどか。

【月やあらぬ・伊勢物語】梅の盛りに恋人のいない屋敷を訪ねた男の感傷

『伊勢物語』は在原業平が主人公だという歌物語です。美しい表現に彩られた作品は、能などにもなっています。ここでは藤原高子との恋に破れた主人公が、かつての逢瀬の場所を訪れ、歌を詠むという設定になっています。