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「小川国夫・アポロンの島」透明感のある力強く澄んだ言葉との出会い

透明な小説みなさん、こんにちは。今回はかつて読んだ本の中で1番澄んだ印象のある本の話をさせてください。小川国夫の『アポロンの島』がそれです。ほとんどの人が全く知らない作家でしょう。今から17年前に亡くなりました。古井由吉、黒井千次、後藤明生...
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「タイ式生活のすすめ」マイペンライの暮らし方こそがトレンディ

マイペンライとはみなさん、こんにちは。少し前のことです。担任団の解散旅行でタイへ行ってきました。なぜ行ったのか。あったかいところでのんびりしたかったのです。担任団で最後に旅行をするというのは、それまでの3年間の最後の儀式みたいなものなのです...
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【私たちの望むものは】歌手・尾崎豊とは何者だったのか【没後33年】

尾崎豊みなさん、こんにちは。尾崎豊が亡くなってから33年。早いものですね。1992年4月25日。彼は26歳で亡くなりました。不思議な人です。何年かの周期でブームが来ます。忘れていない人が大勢いるという証拠でもあります。全裸で死んでいるのが発...
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【衛生観念】私の赤ちゃんに触らないでという投書の持つ意味は?

新聞の投書欄みなさん、こんにちは。毎日、暢気に暮らしてます。これといった悩みもありません。お茶を飲みながら、毎日ブログを書くのが楽しみの1つです。朝起きてまず見るのが新聞です。いろいろな情報の宝庫といってもいいでしょう。最近は新聞をとらない...
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【孤独との対話】言葉の森で彷徨い続ける覚悟があれば必ず生き残れる

コミュニケーション能力みなさん、こんにちは。今回は少し言葉の森を探索してみましょう。いまさらそんなことをしている暇なんてないよ。あなたが口にしたいことはよくわかります。世の中はスピード時代です。的確に短時間で相手に通じる文章が書けること自分...
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「子供と玩具」遊びの本質はどこにあるのかを考える「想像力の価値」

子供と玩具みなさん、こんにちは。今回はおもちゃの話を少しします。玩具ですね。澁澤龍彦の「玩具のシンボル価値」というエッセイを参考にして考えてみたいと思います。彼のことを御存知ですか。小説家、フランス文学者、評論家です。ぼくの好きな本に『高丘...
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「詩人への旅・金子光晴」湖畔に眠る哀傷

疎開昭和十九年、戦争は次第にその苛烈さを増していた。毎日のように鳴り響く空襲警報。東京への爆撃が開始されたのもこの年の十一月であった。金子光晴はこの年の暮れ、山梨県山中湖畔に疎開した。当時を回想して彼はこう書いている。「十二月はじめ頃に、す...
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「詩人への旅・村野四郎」武蔵野に宿る郷愁  

武蔵野武蔵野の冬は寒い。空気がしんと冷えて、夜になると酒が恋しくなる。東京府北多摩郡多摩村染谷。今の府中市白糸台である。村野四郎は代々酒問屋を営む家の四男として生まれた。現在では家が建ち並び、当時の面影を残す木々も少ないが、その頃の武蔵野に...
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「詩人への旅・新美南吉」青春は短くも燃え  

童話作家・新美南吉風光の地、知多半島。名鉄河和線半田駅で降りると、そこは童話作家・新美南吉の故郷であった。「わが村を南にゆく電車は、菜種ばたけや麦の丘をうちすぎ、みぎにひだりにかたぶき、とくさのふしのごとき、小さなる駅々にとまり……」と彼は...
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「詩人への旅・宮沢賢治」光の果てを夢見て 

実りの季節 花巻は実りの季節を迎えていた。稲の穂が一面黄金色に輝いて、吹く風に頭をたれている。北上川にそって旅をしていると、宮沢賢治の世界が流域の風景と強く響きあい、重なり合っているのを感ずる。遠くに早池峰山系の山々、広々と続く平野、そして...
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「詩人への旅・萩原朔太郎」烈風の故郷へ  

強い決意昭和四年は萩原朔太郎の人生にとって、大きな意味を持つ年であった。親友室生犀星への手紙には彼の強い決意がにじみ出ている。「僕はいよいよ生活上の決算をする。本年は著作上での決算をしてしまったからついでに一切を帳じめにして、新しく人生のペ...
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「詩人への旅・立原道造」夏を旅する者達は  

信濃追分への旅夏の盛り、信濃追分を旅した。碓氷峠の急勾配をあえぎながら、上った汽車は軽井沢の駅に着くと、そこで多くの若者を吐き出した。やがて浅間山が見えてきた。中軽井沢を出たあたりから、車窓には可憐な野の花が咲き乱れている。道造が第二のふる...
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「詩人への旅・中原中也」故郷はいまだ遠く  

谷あいの町湯田は温泉の町である。その名の通り、田から微量の鉱分を含んだ湯が湧き出てくる。山口市や周防灘沿岸からも湯治客が訪れる遊蕩の町だ。中原中也はこの谷あいの町に生まれ、そこで青春を送った。父が軍医であったため、旅順、広島、金沢の地を転々...
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「詩人への旅・高村光太郎」空は遙かに青くすんで  

高村光太郎東北本線を北にのぼっていくと、白河、郡山を経て二本松に着く。光太郎の妻、智恵子の生まれた故郷である。冬であった。プラットホームにはうっすらと雪がつもり、風が冷たかった。光太郎は東京下谷の生まれで、東北に縁のある人間ではない。しかし...
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「詩人への旅・伊良子清白」のどやかな海の記憶

伊良子清白伊良子清白の故郷は鳥取である。しかし実母をはやく失った彼は、父の再婚、転任に伴い十歳の年に三重県の津に移り住んだ。故郷との縁はとても薄かったとしか言いようがない。三重の海はのどかであたたかい。幼い頃の鳥取での生活に比べて、何もかも...
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【自然木とコンクリート】二項対立で論点をあぶりだす【隈研吾・安藤忠雄】

コンクリートの時代みなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。建築家・隈研吾の名前が一躍知られるようになったのは、国立競技場の設計がコンペに通った時からといってもいいでしょう。自然の素材である「木」を使い、格子を多用したデザイン...
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通信制高校はスクールカーストのワクを超えたというリアル

通信制高校進学こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。退職してから2度、中学校の非常勤講師をやりました。期間にして数ヶ月です。その間に様々な光景を垣間見ました。一つは必ず各クラスに不登校の生徒がいることです。最低1人。クラスによっては...
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「故郷の廃家・饗庭孝男」語り部のひとりとして一族の歴史を綴った鎮魂歌

故郷の廃家みなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。今回はぼくの好きな本を1冊、紹介します。『故郷の廃家』がそれです。この本の奥付には2005年2月とあります。新潮社から出版されました。今から20年も前のものです。店頭に出たと...
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「小論文・足元を掘れそこに泉あり」出題意図を理解し読み手をインスパイアーする

足元を掘るとはみなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。小論文の難しさはその言葉にこだわりすぎてしまうところから出てきます。何が言いたいのだろう、と考えるのはかまいません。しかしあんまりひねくり回してしまっては元も子もないので...
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【夏目漱石・門】何度読んでも寂しくなるリトマス試験紙のような小説

不思議な小説みなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。今回は夏目漱石の小説について書かせてください。漱石と言えば最初に思い浮かぶのが『坊ちゃん』でしょうか。『吾輩は猫である』『こころ』などもよく知られています。しかしその他の作...
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藤沢周平の時代小説・蝉しぐれに人の世の不条理を教えられた

時代小説の代表みなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。今までに随分多くの時代小説を読んできました。山本周五郎、司馬遼太郎を筆頭に、乙川優三郎、池波正太郎。現代の小説に疲れた時は、やはり時代小説でしたね。随分と元気をもらいまし...
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「悩みのるつぼ」みんな悩んで大きくなった「車谷長吉の人生相談」

悩みのるつぼみなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。作家車谷長吉さんが亡くなったのは、もうかなり前のことです。誤嚥による窒息死でした。ご存知ですか。小説を読んだことのある人は少ないでしょうね。代表作は『赤目四十八滝心中未遂』...
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「実売数激減」新聞社からは悲鳴しか聞こえなくなった「ネット時代」

実売数激減みなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。毎年、新聞社から公称発行部数が報告されます。その数字を見ていると怖いです。元々、雑誌なども含めて公称と実売部数の間にはかなりの差があることは、誰でもよく知っています。媒体は広...
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ゆとりと奥行きが抜け感を育て肩に力の入らない人間を作る

教養の大切さみなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。ここのところ、人はどう生きたらいいのかと考える時間が増えました。何をいまさらと言われればそれまでです。しかし本当なのです。年齢を重ねてきたからかもしれません。いい人生をさら...
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松本清張のミステリーは人間のカオスから生まれたという説を検証する

清張ミステリーみなさんこんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。毎日いろんな話を書いています。書評もやりたいのですが、あんまり無理してもいけないので、可能な範囲でちょこちょことまとめていきます。そのうち、記事数も増えていくのかな。塵も積...
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【水のいのち・高田三郎】合唱曲の中でも異例の人気を誇る無垢な作品

無垢な音みなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。今日はぼくの好きな合唱曲の話をさせてください。もちろん、これがベストだなんて簡単には決められません。好きな曲はたくさんあります。中学、高校時代を通じてずっと合唱をやってきました...
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【9才の壁・国語力】勉強のつまずきはここから始まる「帰国子女」

国語につまずくみなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。今回は今までの経験から気づいたことを書かせてください。赴任していた学校での話です。いわゆる帰国子女をたくさん預かる高校でした。担当の分掌についていたため、他の先生方より彼...
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「学力」子どもが良い成績をとることにこだわらなくなった保護者たち

調査の結果みなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。今回は2024年度「経年変化分析調査」の結果を考えてみたいと思います。この調査は、小学6年(約3万人)と中学3年(約7万人)を抽出して3年ごとに同じ問いで変化を分析するもので...
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【孤独の深さ】他者と比べるからこそ疎外感を持つという悲しい人間の宿命

孤独の深さみなさん、こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。今回は孤独の深さというテーマを考えてみたいと思います。人間にとって「孤独」は永遠の課題です。最も強い絆で結ばれていると考えられるのは、やはり家族ではないでしょうか。自分の気持...
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「9割本の行方」数多く出版されたこのジャンルにもさすがに飽きが来たか

9割本はもう過去の話みなさん、 こんにちは。元都立高校国語科教師、すい喬です。今回はつい先日、近所の図書館を訪れた時のこと書きます。驚きましたね。建物の中へ入った途端、ずらっと並べられた本のコーナーが目に入ってきたのです。大きなタイトルが目...