平均正答率
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は昨日公表された「全国学力調査」の結果について、少し考えてみたいと思います。
数字は新聞などで発表された通りです。
調査対象は小学6年生と中学3年生のみです。
実施されたのは今年の4月、国語と算数の2教科です。
同時に実施されたアンケートの集計結果もあわせて公表されました。
内容が気になりますね。
国語、数学の正答率については次の通りです。
小6の平均正答率は算数が63.6%(昨年全国平均62.7%)、国語が67.8%(同67.4%)。
中3は、数学が53%(同51.4%)、国語が58.4%(同70.1%)でした。
中3の国語が極端に低くなった点が注目されます。
文科省の説明によれば、条件や問いの趣旨にそって記述式で解答する問題が多く出され、その正答率が低かったとのこと。
「必要な情報を取り出したり、表現の効果を考えて説明したりすることについて課題が見られた」というのがその見解なのです。
さらに今度の調査では、スマホに費やす時間を訊ねた点も注目されます。
平日にSNSや動画視聴をした時間を聞いたところ、「1日あたり3時間以上4時間未満」と答えたのは小6で8.7%(前回22年度比で0.1ポイント減)でした。
中3では14.2%(同0.4ポイント増)だったのです。
「4時間以上」は小6で11.8%(同0.9ポイント増)、中3で17.9%(同2.5ポイント増)という結果になりました。
中3ではなんと「3人に1人が3時間以上」もスマホを相手にしているという数字には驚かされます。
昨今は朝晩の通勤電車の中でも大半の人がスマホの画面を見ています。
かつては文庫本や、新聞を読んでいる人が多くいました。
今ではほとんど見かけなくなりましたね。
スマホ一強なのです。
最大の問題点
1日にスマホを3時間以上も見ていることの影響が、今回の学力調査にも反映されているとみるべきなのでしょうか。
もう少し内容をみてみます。
視聴時間の長さに比例して、確かに平均正答率が低くなる傾向がみられるようです。
SNSなどの使用時間と、各教科の平均正答率については誰もが関心を持つところでしょう。
特に差があったのは中3の数学でした。
使用が4時間以上のグループと30分以下のグループでは、平均正答率が18.5ポイントも違ったのです。
最も差が少なかった中3の国語でも、12.3ポイントの差がありました。
それでは全くスマホを見ないグループが高得点をとったのかといえば、そうは言えません。
「スマホを持っていない」グループは、使用時間が「30分未満」グループよりは平均正答率が明らかに低かったのです。
これは単純に情報量の問題ではありません。
文科省によると、スマホを見ていないグループは、所得や学歴といった「家庭の社会経済的背景」が低いと考えられるからです。
子供にスマホを持たせるだけの経済力がない層には、学力を身につけるだけの生活のゆとりがないとも考えられるからです。
つまり格差社会の現実が如実にあらわれているのです。
近年、高校などではスマホを持っていないと、クラブ活動にも参加できない実態があります。
練習試合の場所の変更や、練習日程の連絡なども、今ではすべてスマホで行われているのです。
その他、細かい日程の連絡などもあります。
中学生も学校への持ち込みは禁止されているものの、友人との連絡は当然のように使っています。
学習塾などからの連絡や安全上の配慮から、GPS機能を活用しているケースも多いのです。
勉強時間との関係
使用時間が3時間以上の生徒は、やはり勉強時間が少ないこともわかっています。
文科省は使用時間と、授業以外の勉強時間との関係も調べました。
使用を3時間未満と3時間以上のグループに分け、平日1日あたり30分以上勉強していた割合を比較したのです。
それによれば、使用時間の短いグループのほうが勉強している人が多かったことがわかっています。
ある程度、節度を設け、使用に際してのルールを守っていると考えられます。
平日や休日を問わず、勉強時間が長い生徒ほど正答率が高い傾向にあることは、今回の調査でも明らかです。
しかし、大きな問題は1日に30分以上勉強している人の割合が、小、中とも21年度から次第に減り続けていることです。
SNSや動画視聴が全ての元凶なのでしょうか。
そう単純にいいきれないところがこの問題の難しいところです。
かつてはスマホのかわりにテレビを見ている実態がありました。
媒体が単に変化しただけと捉えることも可能です。
本当のところはどうなのでしょうか。
テレビが受動的なメディアであることは以前から指摘されています。
それに比べれば、SNSは自ら発信することが可能なのです。
能動的に関わってしまいがちな分、さらに時間をさき、勉強への意欲を欠いてしまうと考えることも可能です。
テレビとの違いについて、時間意識などとの比較調査がこれから待たれるのではないでしょうか。
分析を細かく加える必要がありそうです。
ここまで考えてくると、当然、経済協力開発機構(OECD)が数年おきに行っている、学習到達度調査(PISA)との数字の差も気になりますね。
そこでもはっきりしていることは3時間以上のスマホ使用が、明らかに学力に影響を与えているという厳粛な事実です。
読解力がカギ
2025年度から、「大学入学共通テスト」は試行から本格実施の段階に入ります。
問題のレベルはますます難化するだろうと言われているのです。
PISAの指摘をうけ、考える問題が前面にでてきたことが大きいようです。
グローバルな時代のニーズにあわせるというのが、その目標です。
覚えておくだけの知識はもういりません。
提出された条件の中で、何が活用できるのかを考え、柔軟に対応する能力が必要とされているのです。
そのため、従来型の試験とはかなり違うものになってきています。
国語も数学も読解力を重視しているのです。
文章の内容をどの程度読み取れるのか。
そのためには複数の文章を比較するなどして、文章の構成や展開、表現の効果を考える学習をしなければなりません。
短時間で文章のポイントを把握し、そこから自分の思考を広げるのです。
接続表現に注目する必要もあります。
文と文、段落と段落などの関係性をとらえる方法を学ばなくてはなりません。
そして、次にそれをアウトプットする。
聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの基本はどの科目についても共通しています。
特に大切なのは、自分の考えをまとめる際、知識や体験と結び付けながら書くことです。
一般論はもう、chatGPTにまかせておけばいい時代になりました。
資料中のどの情報を根拠としたのか、明確にしながら書くことも大切です。
さらに評論や新聞記事などの資料から、重要な情報を読み取る力を養わなければなりません。
これには圧倒的な知識量が必要です。
読書が不可欠ですね。
それも少し背伸びをして読むことです。
自分の得意でない分野も広く知りたいと思う、知識欲がどうしてもいります。
さらに文章の構成や展開を捉える能力もなければなりません。
欲求の水準は高まるばかりです。
これだけの試験に挑むのは並大抵のことではないのです。
こうした理由から受験地図はここ数年大きく変化します。
ここ数年で、年内入試、総合型入試などを視野にいれる受験生が増えてきました。
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その話は近いうちにまた書き留めておきたいと考えています。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。