【大学共通テストとデジタル読解力】文章の核心をすばやく読み取るには

学び

新指導要領準拠

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

いよいよ新しい指導要領を基本にした、大学入学共通テストの年になりました。

今までは旧来のものを踏襲していましたが、いよいよ本格的なものになるのです。

2025年1月に実施される共通テストの目玉は、60分の新教科「情報」です。

出題教科と科目が現在の6教科30科目から、7教科21科目に変更されます。

数学では、「数学Ⅰ」「数学Ⅰ・数学A」以外が「数学Ⅱ、数学B、数学C」として1科目にまとめられ、理科では「物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎」が1科目とされる予定です。

「地理歴史」「公民」も出題科目が大きく変化します。

その他、大きな変化としては全体に試験時間が延長されます

難化するのは必至ですね。

かなりの覚悟をもって臨まないと、十分な得点を得ることは難しいのではないかと思われます。

共通テスト実施の目的は、高等学校における学習の達成度を測ることにあります。

ここではぼくの担当する国語について、少し詳しく解説しましょう。

試験時間は今までより10分増えて、90分になります。

「現代文」の大問数が2問から3問に増えるのです。

目的は多様な文章を読み解く力を判定するためとあります。

そもそも国語力とは何かというのは難しい問題です。

共通テストはとにかく読み解く文章量、理解、考察すべき情報量が多いというのがその特徴です。

知識の量で解ける問題がほぼなくなりました。

その場でどの程度「理解」したのかを問う問題が多いのです。

デジタル読解力

最近は会話文形式の問題などが多くなり、慣れていない受験生は戸惑ってしまいます。

日常生活を起点にしたテーマが設定されているものもあるのです。

かつてのように「知識」や「技能」に偏っていた試験とは大きく様変わりしています。

共通テストでは、長い文章や複数の資料をスピーディーに読んで理解する能力が試されるのです。

非常にスピード感をともなった判断が大切です。

高い情報処理力が求められるといってもいいでしょう。

共通テストは短時間で情報を処理する能力を必要とする試験です。

いずれにせよ、授業に意欲的に取り組み、グループワークや探究的な学習に積極的に取り組むことが大切になります。

新しい共通テストでは、解答の仕方に対する戦略がとても重要です。

時間が勝負になるのです。

90分もあると思って厄介な問題にいつまでもしがみついていると、瞬く間に時間が過ぎていきます。

自分の解答の方法の欠点を見抜くことも大切でしょう。

ここで問題になるのが、いわゆる「デジタル読解力」と呼ばれるものです。

聞いたことがありますか。

この表現が大きく取り上げられるようになったのは、PISA学力調査の結果が話題になってからです。

「PISA」とはOECDに加入している国の生徒がどの程度、学習到達度を達成しているのかをチェックする調査です。

3年に1度、OECD加盟国などの15歳を対象に、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野に関する習熟度を調査しています。

その結果、2003年に実施された試験で、全体的に順位の低かったことが教育関係者にとっては大きなショックでした。

さらに2018年のPISA調査で、日本人の読解能力の順位が6位から11位に下降したことも衝撃だったのです。

さらなる学力の向上を

新聞報道などでは「『PISAショック』再び」という見出しが掲げられたほどです。

この年にPISA調査を受験した生徒たちは、「脱ゆとり」教育の一期生でもありました。

かなり学力的には向上したはずだったのに、予想を裏切ったのです。

ここから一気に「学力」重点主義へと舵を切る流れが強まりました。

問題点はいくつかありました。

PISAが計測している「読解力」と、日本の国語科教育が重んじてきた「読解力」との間には大きな乖離があるのではないかという指摘がそれです。

それまでは文章をきちんと読むことに、重点を置きすぎていたという反省が起こりました。

具体的には文と段落の構成、物語の内容、論理性などをきちんと読む力だけが重視されてきたのではないかというのです。

「デジタル読解力」を基本とした文章の読み取り能力を判定する試験とは、基本的になじまない学習の仕方をしていたのかもしれないという論点が強まりました。

グローバルな視点で、読解力の基本とは何かを考えざるを得なくなったのです。

ここから日本版GIGAスクール構想が始まりました。

1人1台端末の実現により、生徒がコンピュータを用いたテストに慣れていくことが目標として設定されました。

デジタル画面上に記述された内容を読み取る能力を伸ばすことに、重点がおかれるようになったのです。

授業でも盛んにタブレットが利用されるようになりました。

教師とのやり取りも、デジタル上で行うという取り組みも盛んに実践されるようになったのです。

ベテランの先生方は、かなり苦しんだと思われます。

従来の黒板を使う授業だけはない、新たな取り組みがあちこちで見られるなりました。

その結果が近年のPISA試験の結果には直結しています。

明らかに、生徒たちはデジタル読解力を身につけつつあるのです。

読解力の本質とは何か

近年はデジタル社会です。

私たちは毎日、ネットにつないで世界のできごとを把握しています。

それだけに国語の授業のやり方が大きく変化しつつあるのを強く感じます。

その際、従来の教科書は外の世界と切り離されたものになるのかどうか。

それも根本から考えてみる必要がでてきています。

読解の仕方に本質的な違いがあるものなのかどうかも、議論しなければなりません。

「デジタル読解力」とわざわざ別扱いをしなくてはならないものなのか。

PISAの学力調査における「読解力」のポイントはある意味明確です。

しかしそこにばかり注力する必要が本当にあるのかどうか。

入試はある意味冷酷なシステムです。

geralt / Pixabay

出題者が求める情報を的確に探し出し、その意図を汲んで応えなければなりません。

そのために新しい視点をつねに持っていなくてはいけないことは、当然です。

共通テストをもう少し続けて注視していく必要がありそうです。

新しい学習指導要領は次々と新しい科目をつくりだしました。

その代表が「論理国語」と「文学国語」です。

PISAの流れは新課程の「論理国語」の線上にあります。

「デジタル読解力」を駆使して、ネット上からデータを選択する必要性も拡大していくに違いないのです。

かつてのような教材だけでは、世界標準からはずれる可能性もあります。

「自由記述形式」の問題にあわせて、発言もしつかりとできる読解力が求められていることも事実です。

新しい入試がいよいよ始動しようとしています。

国公立と私立の大学のせめぎあいも厳しくなるに違いありません。

今しばらく現場の様子を冷静にみていこうと思います。

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受験生のみなさんは波にながされず、確実な国語力を養ってください。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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