【小論文・持続可能な福祉】共同体が壊れたあと私たちに残された可能性は

小論文

持続可能な福祉

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は小論文の大切なテーマ、「社会福祉」について考えます。

近年、少子高齢化が叫ばれ、日本は容易に解決できない問題を抱え込むことになりました。
景気も低迷し、GDPも下がる一方です。

先進諸国と呼ばれていたのもつかの間のことのような気がします。

「社会的孤立」の状況が高くなり、福祉の問題に直面することも多くなりました。

少子化とあわせて、高齢者の介護が喫緊の課題となっていますね。

今後の日本のあり方を問う、社会の重要なテーマなのです。

なぜ、急激にこの問題が浮上してきたのか。

理由はいくつもあります。

以前なら、それぞれの家庭がこうした問題を担ってきました。

子育ても老人介護も、すべてをです。

その周囲には分厚い共同体の存在があったから可能だったのです。

しかし現在、古いコミュニティは崩れつつあります。

都市においては、どのような隣人が住んでいるのかさえ知らないということも、当たり前になっています。

地域における福祉への見守りが機能していません。

人々の関係がうまくできあがっていないことも1つの要因です。

農耕を基本とした日本のムラ社会は、近隣に対する「同調圧力」に満ちていました。

しかしその反面、「ウチ」側にいる人間に対してはさまざまの手厚い対応が可能だったのです。

その意識や行動様式が、あたりまえのように社会構造に適応する形で進化していたのです。

社会の変容

その後、経済成長期になると、就職先の会社組織が「家族」そのものに変身しました。

職場が「ムラ」そのものになったのです。

ところが近年は、それも崩れ、完全に福祉は個々人の問題に戻りつつあります。

行政が介護に関するさまざまな手当をつくるたびに、「ムラ社会」はそこから手をひいていきました。

その結果はどうなりつつあるのでしょうか。

私たちは何をすればいいのか。

何が可能なのか。

方向を完全に見失ってしまっているのです。

今回の小論文のテーマはそれです。

難問ですね。

公共政策が専門の広井良典氏の講演から、関連した箇所を抜き書きしましょう。

タイトルは「多様な連携のカタチ、持続可能な福祉社会を目指して」です。

地域密着に対する意識を読んでいきます。

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日本における人口構造の変化の捉え方として、全人口に占める子供と高齢者の割合を指す「地域密着人口」が、今後はますます伸びていくことに注目しましょう。

AbsolutVision / Pixabay

人生全体を考えた際に、現役時代と比べ、子供と高齢者は地域との関りが濃く、今後は「地域」が人口構造上からも重要性が増す時代といえます。

若者世代も「地域」や「ローカル」への志向が高まっているほか、1人暮らしの高齢者も急増しており、全世代にとって社会とかかわる手ごたえ感じられる「居場所」を意識した町づくりのニーズも高まっています。(中略)

今、私たちはグローバル化の先の世界を展望する時期にきています。

1つは、強い「拡大・成長」志向と一体となったナショナリズムと排外主義という道。

もう1つには、ローカルな経済循環や共生から出発し、そこからナショナル、グローバルへと積みあげけながら、「持続可能な福祉社会」を志向する道です。(中略)

日本の高度経済成長期に象徴される人口増加の時代を一言で表せば「集団で1本の急な坂道を上る時代」でした。

その発想はやや経済一辺倒であり、福祉や環境に十分な軸足がおかれてこなかったなか、ようやく「持続可能な福祉社会」を志向する時期にきています。

プラスの可能性を探る

今後、人口減少は確実に進むでしょう。

問題はそれをマイナスと捉えるか、ブラスの可能性を探るかにあります。

広井良典氏の論点は明確ですね。

彼はそこにプラスの可能性が宿っているのではないかと思っているのです。

なにができるのかを必死で考えたに違いありません。

その結果、次の3つにつきあたりました。

①コミュニティをめぐる課題
②これからの社会保障のありかた
③持続可能な福祉社会のビジョン

この中で彼が最も強調しているのが、「接続可能な福祉社会」へのステップです。

言葉はよく聞きますが、具体的にはどういうことなのか。

広井氏は新しいコミュニティづくりに欠かせない「NPOや町会活動などによる民間福祉活動」を考えようと主張しています。

かつてあった日本型のムラ社会が、そのまま復活するなどというのは幻想です。

そうではなく、今が新しい福祉社会へのターニングポイントではないのかという視点なのです。

コミュニティが壊れたから、それで終わりというのではなく、新しい形のコミュニティを再構築する。

そのためには、「力」で押し上げようとする従来のやり方ではうまくいかないのではないか。

もっと個々人がは真の豊かさや幸せの形と真剣に向き合うなかで、何をしたら、お互いが幸福になれるのかを考えなくてはなりません。

受益者たちが一方的に福祉を受け入れるという発想では、もう何も進まないのではないかということなのです。

そうした新しい価値観の時代の入り口にいるという視点を持たなくてはなりません。

新しい富の分配を

ここからが難しいですね。

いくつか設問を考えてみましょう。

小論文の設問として、次のようなのはどうでしょうか。

設問1 経済一辺倒ではない、福祉社会の在り方をあなたはどのようにしたら達成できると思いますか。800字で書きなさい。

設問2 集団を超えた個人のネットワークをどのようにしたら、福祉と繋げることができるでしょうか。あなたの考えを800字で書きなさい。

設問3 真の豊かさと福祉の関係を考えなくてはいけない時代とはどういう意味ですか。
あなたの考えを800字で書きなさい。

いずれもまとめにくいテーマです。

しかし、ここで取り上げた論点をしっかり把握すれば、何が問われているのかは理解できるはずです。

時代の波は容赦ありません。

日本は本当に困難な局面を迎えているのです。

社会福祉にただ予算をつければ、それで事足りた時代は終わりました。

お金を分配するだけの行為は、砂地に水をまくようなものです。

ほとんど効果がないのです。

与えるものと受益者が本当に幸福になるためには、どうすればいいのか。

自分でも本を読み、関心をひろげてください。

あなたの日々の努力が新しい発見を生みます。

書けたら、必ず信頼できる先生に添削してもらうこと。

書きっ放しはダメです。

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繰り返していくだけで、必ず実力がつきます。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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