【iPS細胞・小論文】精子卵子の元となる細胞の生成に成功した後にヒトは

小論文

ips細胞からの生成

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今日、5月22日付の朝日新聞朝刊に、ips細胞に関する記事が掲載されていました。

それによれば、ヒトのiPS細胞を使って、卵子や精子になる手前の細胞を大量につくることに成功したとのこと。

元々、ips細胞は京都大学の山中伸弥教授がマウスの細胞から初めてつくったところから、研究が始まりました。

2006年が最初の報告がありました。

「iPS」は「induced pluripotent stem cell」の略です。

「人工多能性幹細胞」と呼ばれています。

今回の研究は、同じ京都大学の斎藤通紀教授のグループが成功しました。

何がカギかといえば、卵子や精子になる手前の細胞を、iPSから大量につくる方法が開発されたということなのです。 

iPS細胞は無限に増やすことが可能です。

身体を構成するあらゆる細胞に変化できる能力を持つ細胞なのです。

皮膚や血液などの細胞にいくつかの遺伝子を入れてつくることも、可能になりました。

この細胞はどのようにして作られるのでしょうか。

試験管内で神経や心臓の筋肉の細胞などに変えることも可能です。

これらを患部に移植することで、病気やけがで損なわれた細胞の機能を再生させる「再生医療」への応用が期待されているのです。

現在、各国でさまざまな研究が進んでいますね。

日本ではどのような治療を行っているのか、ご存知ですか。

細胞を新たに作り出せるのですから、あらゆる病気に対する治療が可能といっても過言ではありません。

その中でも特に心不全や、神経難病のパーキンソン病、脊髄の損傷、失明につながる加齢黄斑変性の患者に、iPSでつくった細胞が現在移植されています。

ただし、完全な治療の一環というレベルまでにはまだ進んでいません。

あくまでも治療法の安全性を最優先させることが大切だからです。

まだ臨床研究や治験の段階だと言っていいでしょう。

しかし今回、精子、卵子の手前にあたる細胞の生成に成功したということは、不妊治療などへの応用がすぐに考えられます。

今後、確実にその方向へ進むでしょう。

以前、ダウン症などを事前に調べるという出生前診断についての是非を論じさせる小論文が多くの大学で出題されました。

それと同じ論理で、卵子、精子の凍結などというレベルをはるかに超え、不妊に苦しむ人にとっての福音となりうる可能性を持っている方法が確立しつつあるワケです。

遺伝情報の初期化

今回、発見された内容はかなり複雑なプロセスを経ています。

遺伝情報は精子や卵子という生殖細胞によって、世代を超えて受け継がれることはわかっていました。

しかし遺伝子の働き方を決める情報は、世代ごとにリセットされていくのです。

ヒトの場合は精子や卵子のもととなる生殖細胞が、親世代から受け継いだ情報を消去して「初期化」されると、次に精子や卵子に分化します。

ところが、このプロセスは今まで完全に謎に包まれていました。

今回の研究のポイントは、精子と卵子の元となる細胞に似たものを、ips細胞から作り出すことができたところにあるのです。

細胞の分化に必要な「初期化」に働く特定の物質を突き止めたのが、成功のポイントでした。

このたんぱく質を利用して初期化を起こし、分化させることができたのです。

この細胞は数か月で100億倍に分化することがわかっています。

今後の道のりは、この細胞から、ヒトの精子と卵子を作り出すことでしょうね。

その結果、何が起こるのか。

極端なことをいえば、いよいよ生命の神秘に入り込むことになります。

ゲノム編集

遺伝子の操作がそれです。

従来のゲノム編集は、筋ジストロフィー患者の体細胞からips細胞を作ることにありました。

異常が存在する遺伝子を、ips細胞の段階で修復するのです。

次に筋肉の元になる正常な細胞を作り出します。

このパターンの細胞移植療法は現在、行われています。

小論文の問題でも、ゲノム改変をする治療の是非についてはかなり出題されました。

難しい問題ではありますが、それが患者にとって有効であるという判断があれば、先に進むべきだとする論点はよく耳にします。

しかしこれは複雑な問題を孕んでいます。

何が誰にとって有効であるかを判断するのは、大変に難しいからです。

言ってしまえば、人間の設計図を変えてしまうのと同じ作業です。

生命倫理の問題を色濃く含んでいます。

ゲノム編集の問題は、人間の尊厳に関わる重要事項なのです。

では今回の精子、卵子の手前にあたる細胞の生成に成功したニュースはどのように考えればいいのでしょうか。

この実験では細胞数をわずかの期間で、100億倍以上に安定して増やせることが分かっています。

試験管内で精子や卵子をつくる取り組みが、加速することは間違いありません。

将来的には皮膚や血液などから、精子や卵子をつくることが可能になるでしょう。

あるいはもっと研究が進めば、同性同士から受精卵を作り出すという技術が生まれる可能性もあります。

人権と倫理

生殖はまさに神の領域そのものです。

冷凍保存された精子と卵子の受精などは、あくまでもヒトから採取したものが基本にありました。

しかし今後、研究が進めば、血液や皮膚の細胞からでも精子、卵子が生成される可能性があるのです。

そのことに対して、どのように考えるのかという問題は当然、出題されるでしょうね。

その時、あなたは何をどのように纏めますか。

それをぜひ一度は考えてみてください。

非常にデリケートな問題を抱えているだけに、解答を書くのは至難です。

ある程度、iPS細胞についても知識を蓄えておく必要があります。

今後、考えておくべき、重要なテーマの1つです。

今回の記事を自分でも探して、何がどう問題なのかを問い直しておくことです。

医療関係のテーマは、来年も引き続き出題されます。

技術は日々進歩しています。

話題に取り残されることがあってはなりません。

スポンサーリンク

とくに倫理規範と人権との関係についても学んでおいてください。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました