都立高校2極化
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は小論文の問題について再び考えてみます。
都立高校推薦入試も終わりました。
人気のある学校には、受験生が殺到しましたね。
8倍近くの倍率だった新宿高校の入試問題については、別の記事に書きました。
時間があったら、ぜひご一読ください。
実際にどのような問題が出題されたのか。
とても気になりますね。
毎年、受験関係の出版社が選抜状況などとともに、問題の一覧を発表しています。
塾などの関係者は、そうした類の情報をすぐに集約し、生徒に配布するのです。
ネットなどにもかなり早い段階で、さまざまな速報が載せられます。
もちろん、学校の進路担当の先生などから入手することも可能でしょう。
近年、都立高校の小論文、作文の問題は明らかに2極化しています。
進路指導重点校を中心とした学校の問題は非常に難しいです。
大学の入学試験にそのまま応用できそうなものもあります。
完全に合否を決定するための試験になっています。
内容も複雑です。
志望校の過去問を10年分やってみても、次に何が出るか全く予想できないケースが多いのです。
予測不能です。
どんなテーマが出題されるのか
SDGs、ジェンダー、グローバル化社会、少子高齢化、DX。
いくらでもテーマはあります。
その中でどれが出題されるのかは、全くわかりません。
政治、経済、歴史などの基礎的な知識がなければ、全く歯が立たないケースが多いのです。
グラフや表の読み取りと、長文の問題が複合されて出てくるケースもあります。
受験生は推薦入試の勉強だけをしているワケではありません。
一般入試に向けて、エンジンのスロットルをまわさなくてはならないのです。
そのペース配分が非常に難しいです。
過去問をみれば、どのようなタイプの出題がされているのかはだいたいわかります。
まずそれを10年分、やってみましょう。
試みてはみたものの、全く歯が立たないということもあります。
どうしても自分の体質にあわない場合、受験する学校の変更を視野に入れる必要もあります。
ただし非常に難解な入試を課すのは、全体の10%ほどの高校です。
それ以外は、ある程度勉強し、何度も練習していれば、書けるレベルの設問が出ます。
基本は「入学後、どのように勉強をし、社会にその知識をどう役立てていきたいのか」というタイプのものが多いです。
今年、出題された問題の中で頻出型のものをみてみましょう。
都立神代高校の推薦入試で出題されたのは次のような設問です。
同校は駅からのアクセスもよく、校舎が真新しくなりました。
女子生徒の人気も大変高いです。
昔からある自由な都立高校のイメージが、長い歴史からも感じられます。
文化祭をはじめ、さまざまな行事が生徒の母校愛を育んできました。
今年はどのような問題が実際に出たのか。
気になりますね。
典型的なタイプの問題を見てみましょう。
問題
現代社会は、情報化、グローバル化により、激しい変化が起きていて、未来の予測が困難な時代です。
そんな時代に社会で活躍するために、どのような「力」が必要だと考えますか。
理由とともに自分の考えを述べなさい。
また、高校生活においてその「力」をどのように高めますか。具体例をあげた上で、自分の考えを述べなさい。
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これが設問の全てです。
制限時間は50分。
字数は500~600字です。
問題を解くためのカギは、すべて課題文の中にあります。
このことは今までに何度も言ってきました。
何度もていねいに読み込んでください。
ポイントは高校生活において、どのようにその「力」を高めるのかという点です。
そこが見えていないと、評価の高い文章にはなりません。
さらにキーワードとなる「高校」と「社会」を見失ってはいけないです。
もう1つのパラメーターは「情報化」「グローバル化」です。
これも大きなカギです。
あなたなら、どのように書き始めますか。
社会で活躍するための力とはなんでしょうか。
それを得ることにどういう必然性があるのでしょうか。
テーマを1つ1つ解きほぐしてください。
最後に絶対忘れてならないのは、「具体例」です。
書かなかったら評価が一気に下がります。
文章力が命
この複雑な時代の中で生き抜いていくためには「IT」に関する知識が必須です。
デジタル機器を使いこなすことはもちろん、プログラムの知識も必要です。
授業を通して、知識を蓄えるだけでなく、新しい枠組みをグローバルな社会の中で、どう組み立てるか。
記憶することはある程度、コンピュータに委ね、問題をつくりあげることや、解決の方法を探る方向を示すべきです。
さらに多くの人とコミュケーションをとり、そこで得られた人間関係をどう生かすか。
そのためには語学力もあったほうがいいですね。
外国語を学ぶことで、文化の差をより理解することができます。
「コミュ力」を身につけることで、社会活動や地域での交流も盛んになるでしょう。
そのための能力として「聞く力」「発信する力」も必要になります。
人間関係を円滑にすすめることくらい、難しいことはないからです。
1番大切なのは、なにより「聞く力」なのです。
発信がその上に乗ることで、意味ある「力」になるのではないでしょうか。
高校での学習も当然、視野に入れておかなければいけません。
いくつかのポイントが見えてきたら、そこから文を組み立てます。
もう1つは、このテーマと関連する、あなた自身の体験が必要です。
ぜひ「高校生活」とからめてください。
何度も言いますが、設問の指示を落すと、それだけで減点されます。
600字の文章をまとめるのは、容易ではありません。
一言でいえば、文のリズムが必要です。
有効な接続詞と短文を重ねる構成の方法を覚えてください。
一文一義主義を貫く必要があります。
長い冗長な文章を書く癖のある人は、要注意です。
初心者の場合はどうしても説明をくどくどしてしまう傾向が強いのです。
そうすると、文章の力が全て死んでしまいます。
リズムのある文を書くのは、けっしてやさしいことではありません。
新聞記者がどれほど苦労して、言葉を重ねているのかを実感してみてください。
「天声人語」などを読めば、あのわずかな長さの文章を書くために、どれほど言葉を推敲しているのかがわかります。
付け足すのではありません。
削るのです。
その作業をどれほど重ねて行ったのかが、成功への証しです。
「である」調で最後まで突っ走る練習をしてください。
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あくまでも自分の実感に根差した文章であることが、基本です。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。