【女性の高学歴化と少子化社会】出生率の低下が日本の未来を左右する

学び

少子化対策

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

つい先日、東京都の小池知事は18歳までの子どもに、月一律5000円を給付する方針を示しました。

さらに「第2子」の保育料無償化など2023年度に始める少子化対策を明らかにしたのです。

従来ならこれにの施策には、必ず所得制限がかけられました。

しかし今回はありません。

全ての子どもに対して、年額6万円を支給するということです。

都内在住の18歳未満の子どもの数は約200万人と言われています。

予算総額は1260億円に達します。

巨額であることに間違いはありませんね。

1世帯当たりの平均月額教育費が全国の平均より、東京は約5000円ほど高いという試算から、この決定がなされたそうです。

2人目が産めないという声が、予想以上に多いのです。

「チルドレンファースト」と言葉でいうのは簡単ですが、現実は厳しいといわざるを得ません。

昨年の出生者数が80万人を切ったことは、年末に報道されました。

かつての団塊の世代の3分の1以下です。

この子たちがやがて、日本の国力を支えていかなければなりません。

将来の社会福祉の基盤を担うのは彼らなのです。

なぜここまで出生者数が落ちてしまったのか。

そのことをあらためて考えてみましょう。

少子化の問題は小論文の骨格をなす大きなテーマの1つです。

きちんと整理しておく必要があります。

女性の高学歴化

かつて1960~70年代にかけて、日本の女性の平均初婚年齢は24歳前後でした。

就職してしばらくすると、結婚し、30歳を前にして出産、子育てが始まったのです。

しかしその年齢が少しずつ上昇していったのには、社会の環境が大きく変化したことに理由があります。

働く女性が増大しているのです。

1番の理由は高学歴化です。

4年制の大学を卒業した後、就職し、仕事を覚えるにつれ、結婚や子育てにより失うことになる利益が高くなることの実感が強くなりました。

一言でいえば、損をするという感覚でしょうか。

そこから晩婚化や晩産化が生じ始めたのです。

社会的な要因を考えてみると、男性の育児参加が不十分だったこともあります。

今では出産の前後に、男性も育児休暇をとる制度が定着してきました。

しかしその制度があることと、実際にそれを上手に運用することはまた別のことです。

なかなか現実的には、理想通りに子育ての参加がうまくいかないというケースも耳にします。

コロナで自宅勤務が増えたことで、育児への参加も少しはできるようになりました。

ところがウィズ・コロナが提唱されるにいたって、再び女性が前面に出なければ、育児がうまくいかないという現象も散見されます。

その結果、女性の子育てに対する負担が再び過度になりつつあるのです。

「あと1人は欲しい」という声の傍らで、この苦労を再び重ねることは、やはり避けたいという本音も聞こえてきます。

大切なのは現在の経済水準を維持するということです。

そのために、女性も働かなくてはならない状況になっているのです。

男性の収入だけで、生活レベルを下げずに暮らすことが可能なのかどうか。

男女雇用機会均等法が、女性の社会進出を進めたことに間違いはありません。

しかしそれは同時に、2人で働かなければ生活できないレベルの暮らしを前提にするということです。

なぜ出産をためらうのか

かつての日本では、子どもが保険の代わりをしていました。

労働力にもなります。

いざという時、子どものチームワークがよければ、自分の老後を任せることもできたのです。

10人に近い子どもたちが家の繁栄を支えるという構図は、特別のものではありませんでした。

しかし時代の変化の中で、女性の地位は格段に高くなりました。

高度な教育をうけることのできた女性たちは、その恩恵を自分の子どもにも与えたいと思うようになりました。

そのために多額の教育費を貯蓄する必要も出てきたのです。

日本では行政が教育費を全て負担するという考えはありません。

中学校の義務教育までは無償化されているものの、その先は全て保護者の責任になります。

近年、学費が高騰し、さらに塾や習い事などをすると、莫大な費用がかかるのです。

かつてのように中学校を出て、すぐに集団就職をするなどという時代ではありません。

高校は事実上の義務教育と化しています。

さらに大学進学となると、国立私立を問わず、相当の費用がかかります。

地方から都市部へ出てきて学習を続けるとなると、その額はさらに膨らんでしまいます。

それだけの負担ができるのかどうか。

親になる覚悟はあるとしても、経済的に支え続けるのは至難です。

子どもに奨学金を借りてもらうという手段も考えられないワケではありません。

しかし利息がつかない奨学金は簡単には借りられません。

結局、多額のローンを身にまとって、大学を卒業するということなるのです。

そこまでして、子どもを産み育てる覚悟があるのかと訊かれたら、誰もがYesとはいいにくいのではないでしょうか。

総論賛成、各論反対

少子化はどのような問題を引き起こすのか。

年額6万円の補助金はどの程度の効果を上げるとあなたは思いますか。

18歳まで健康保険を無償化している自治体も、現在ではかなり増えています。

以前は私立高校に通うにはかなりの学費が必要でした。

それもほぼ全額、行政が補っています。

それでも少子化の流れは消えないのです。

1番の要素は何か。

あなたはどう考えますか。

養育費や教育費が全て賄えるとして、それでも産まない人達の選択には、もっとより根本的な問題があるのかもしれません。

本当にこれからの世の中に生まれて、幸福な一生が送れるのがどうか。

環境が次第に劣悪になり、気候や風土にも大きな変化が出ています。

食料危機の到来が危惧され、SDGsが声高に叫ばれているのです。

情報化が世界を狭くし、効率優先の世の中がまっしぐらにAI社会を目指していきます。

その中を次世代の子どもたちが、本当に人間らしく生きていけるのか。

MabelAmber / Pixabay

人生を謳歌できるのか。

考え出すと、疑問が次々と湧き出してきます。

保育園を無償化し、子育てが真に意義ある行為だと、人々が認識していく必要があるでしょう。

子供を持ちたい人が、安心して子供を産み育てることができるような環境があれば、少子化に突き進むワケはないのです。

そのためには出産や育児支援、医療保険や税金等の支援措置が大切です。

さらに教育の機会をさらによくし、住みやすく安価な住宅を都市部でも可能にすることです。

もっと大切なのが労働時間の短縮と男性の育児への積極的な参加を現実味のあるものにすることです。

誰もが考えていることは共通しているのです。

しかしそれがなかなか実現できないのはなぜでしょうか。

そこに個人優先の社会システムがどうしても深くかかわってきます。

総論賛成、各論反対のままでは、今の状態から抜け出すことは容易ではないはずです。

もう1度、少子化の問題を考えてください。

高齢者が増大する問題と、少子化は裏表の関係にもなっています。

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いつ出題されても不思議はない、日本の根源的な問題になりつつあるのです。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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