小論文重視の背景
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
いよいよ令和5年度の入試も近づいてきました。
なかには既に進学する大学が決定している人もいることでしょう。
推薦型の入試は決定時期もはやいです。
現役志向が強まっているなかで、早期に定員を確保したいという大学側の思惑も垣間見えます。
小論文をなぜ推薦入試に多く課すのかということを今回は考えてみましょう。
少子化の影響もあって、近年は大学を選ばなければ、全入の状態が続いています。
現役志向が俄然勢いを増しているのです。
かなりの大学が入学定員を充足できず、苦しんでいるのも現実です。
そこで大学側は暗記中心であった過去の反省にたち、今後の伸びしろに期待する試験を前面に据える決断をしました。
いわゆる学科試験を極力減らし、推薦型の入試を推し進めている現実があります。
現在、私立大学において、この型の試験における入学者数は50%を超えつつあります。
それが小論文と面接を中心とした入試です。
あらかじめ、自宅で課題論文をまとめてくるタイプのものもあれば、その場で書くものもあります。
割合からいえば、試験場で時間を限って実施しているケースが圧倒的です。
いずれにしてもその受験生が持っている特性を、十分に見て取ろうとする試験です。
付け焼刃の勉強だけではできないと考えてください。
簡潔にいえば、大学で何を学びたいのかを、自分で探し出せる能力を身につけた学生に入学して欲しいのです。
大学で学問をするのは、当然のことです。
しかし目標の分野を十分に決められず、入学してくる生徒も多いのも現実です。
何を学ぶのか
そこで、大学に入学した後、何を学びたいのかを発見し、そこへの道のりをどう見つければいいのかという能力を持続して持てる学生を募っているワケです。
しかし受験生は暗記が好きです。
中学、高校時代を通じて、教科の試験を受け続けてきました。
先生が黒板を背中にして、次々と教えてくれた内容を覚えることが、勉強だったのです。
その習慣がどうしても消えません。
つねに問題があり、答えがあったといってもいいでしょう。
それを覚える。
すると、次の瞬間には新しい問題が現れる。
それをまた覚えて試験に備える。
その繰り返しをずっとやってきたのです。
自分で考えて書きなさいと突然いわれても、正直、どうしていいのかわからないのです。
あなたもきっと悩んだのではないでしょうか。
どうやったら、自分の勉強したい分野がはっきりとわかるのか。
今まではつねに正解を与えられてきました。
突然、自分で考えろと言われても、どうしていいか全く見当がつかないのです。
そうした学生が増えつつある傾向を、大学側も憂慮しています。
その弊害をなくすために、あえてテーマ型の問題を出して、考えさせようとする学校もあるのです。
あなたはこの大学で何を学びたいのか、それをどのような手段で探すのかということです。
これは一見簡単そうにみえますが、実際に試みてみると、なかなかの難問です。
学問の体系がある程度みえていないと、書けないという事実もあるからです。
具体例
具体的に問題を1つ見てみましょう。
次のような問題です。
➀あなたは大学生活に何を期待するのか述べなさい。
②具体的に希望する専攻学科、専攻分野を示しなさい。
③入学後、どのようなテーマを中心に学びたいのかをわかりやすく書きなさい。
以上の内容をミックスしたタイプの問題です。
これは課題文などを読解する型の問題とは全く傾向が違います。
国語力を診断するというより、より現実的な学問に対する姿勢を問うものです。
自分でテーマを具体的に示しなさいというので、より内容が細かくなるのは当然ですね。
最も大切なのは➀②③の内容をきちんと絞った文章にすることでしょう。
あなたなら、どこから書き出しますか。
採点者はそれぞれの設問の内容にきちんと正対したものから、高い評価をつけていきます。
ある程度、自分の学びたい分野が決まっている人なら、それほど悩まないかもしれません。
志望動機を書くときに、かなり考えたのであれば、その内容に重ね合わせるようにして、論点をまとめいくことができるはずです。
将来の仕事の展望が見えていることも、大きな意味を持ちます。
なんの方向性もなく、ただ大学に入ったら、留学をして見聞を広めたいなどという解答を書くのは最悪です。
いわゆる遊学という言葉がある通り、大学で視野を広めるということを否定するものではありません。
しかしそれは自分の研究したい分野があってこそのものです。
どこかに定点を置き、そこからの風景で全体を分析していくのでなければ、意味を持ちません。
留学をするのが悪いのではありません。
漫然と希望を書くのではなく、そこで何をしたいのか。
それを自分の将来像と重ね合わせて論じていくのです。
そうしなければ、低い評価で終わってしまいます。
テーマ型論文の難しさ
最近の出題傾向は圧倒的に課題文型に集中しています。
しかしあまりに内容が難しいと、書き切れない学生が多いことも事実なのです。
そこで、大学側も工夫を凝らして、書きやすく差の出る問題を配置しています。
それだけに、彼らの目は厳しいです。
これだけのことしか書けないのかといった感想を持たれないように、自宅である程度文章をまとめてみましょう。
今回の例題は、いつどこで出題されても、すぐに書けるレベルまでになっていなければなりません。
このテーマの小論文が書けないということは、ほぼ全ての論文がまとめられないということの証しにもなります。
いわば最低限のラインなのです。
だからといって、甘くみてはいけません。
採点者はあなたの国語力、構成力を短時間で見抜いてしまいます。
自分で学ぶ内容を大学という場で発見できる能力をもっているかどうか。
それを知りたいのです。
それさえあれば、あとは自然に伸びていきます。
その伸びしろの保証を得たいのです。
堂々と自分の希望や夢を語ってください。
ただし、方法論に裏打ちされたものであること。
途方もない願いをただ書きなぐっただけでは、なんの意味もありません。
最後は論理性です。
きちんと文章のセオリーにそって、結論まで導くことです。
それなしに、いい答案になることはありません。
国公立の小論文入試はまだ先のところも多いです。
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身体に気をつけて、初志を貫徹してください。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。