【小論文・同質性】誰もがホワイトカラーになりたがる社会は弱い

小論文

同質社会

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は免疫性のない社会、耐久性のない社会について少し考えてみます。

今日の新聞にも「お受験」のことが記事になっていました。

近年は中学受験だけでなく、さらに下の年齢にもその波が押し寄せているということです。

つまり小学校受験ですね。

なぜそれほどに急ぐのか。

そこには親の心理が色濃く反映しています。

日本の親たちは子供がホワイトカラーになることを強く望んでいるというのです。

そのために、早くから英語やプログラミング学習を取り入れることのできる学校。

タブレットなどを通じて、デジタルに対する関心をひろげてくれる学校などに対する要望が強いというのです。

ますます似たような環境や経済状態の児童が集まる集団が、形成されやすい土壌が広がっています。

かつて私学には宗教教育などを通じて、人格を育てるという目的も強かったのです。

しかし、今はよりプラグマティックな方向に傾いています。

なるべく効率よく、できたら受験勉強一辺倒の偏った教育でなく、しかも学力を伸ばしてくれる学校。

そうした配慮がなされるいわゆる「よい環境」の学校に児童が集まる傾向が強いのです。

そのことに対して論じた小論文が過去問にもあります。

ここに取り上げてみましょう。

筆者は政治学者の姜尚中氏です。

問いは3つに分かれていますが、最も難しいのは次の設問です。

現代の日本社会が抱えている問題に対する筆者の考え方、その対応策について、あなたの考えを600字以内で自由に述べなさい。

これが全てです。

課題文の一部をここに掲載しましょう。

課題文

親が子供を思う、愛するということ、自分の子供が他の子供よりもよりよくあってほしいという気持ちは、それ自体は否定できないことだと僕は思います。

やっぱり多くの親は僕も含めて、自分の子供に対して、いろいろ理屈で言っていることとは違う行動を取ってしまう可能性があります。

とりわけ学歴の高い家族や夫婦や親たちほど、当然のことながら子供にも自分たちと同じ路線やあるいはプラスアルファを望む傾向があるようです。

そういう既存のルートが幼いときから色々しつらえられているわけです。(中略)

小さい頃のお受験だとか言われている、純粋に個体的な要因よりは、その人生経験においてある時代の中で、環境を通じて蓄積されてきたものが、やはりその人の生き方、死に方をかなり大きく左右していきます。

僕はやはり人間の一生というものはある一時期だけでは決定できないと思うんです。

これまで日本の社会では若いということ自体が価値があるとみなされてきた。

確かに色々な社会でそういう価値観はありますけれど、特に日本の場合はそれが強い。

そうすると思春期のある一時期だけが人生で一番輝いていて、その時期にどういう人生を送るかということがその人にとって決定的なんだというような刷り込みが、若い親にも、子供にもあると思うんです。(中略)

理想論ではないかという人もいるかもしれないけれど、やはり学歴や、背景、考え方、感性、いろいろな違いを持った人の中で生きることの方が、その人にとって幸福ではないかと思うのです。

このことは人が「不幸」な事態に遭遇した時によくわかってくるのではないでしょうか。
(中略)

日本が豊かになったのはここ数十年のことです。

今から50年前は今のアフガニスタンに近かったわけです。

もう少し人々が、国をどうするかということを今のままでは出口のない状態で子供達にも未来がない、ということを考えてみるべきです。

今のままでは不幸なリスクを背負う準備もできていない、免疫力のない、社会耐久性のない社会の中でリスク管理のための犠牲になってしまう可能性も高いと言えます

お受験で小さい頃から純粋培養され過大投資された子供には未来はないのではないでしょうか。

そして20年後、その子たちが社会の階段をエリートとしてのぼっている可能性も少ないと思います。

もっと長いタイムスパンの中で、幸福観・不幸観や、人の一生の幸せが決まるという視点を持つべきです

そして今後は異質なものを家族の中にも受け入れていかなければならない。

キーワードを探す

この課題文の中で何が最も大切な表現でしょうか。

それをまず探してください。

課題文は常に最大のヒントなのです。

最初に目につくのが「同質性」を裏付ける「免疫力」と「社会耐久性」ですね。

つねに同じ環境の人と一緒にいることが最も不幸だと筆者は言っています

リスク管理の面から見た時、ひ弱な存在にしかならないということです。

純粋培養され過大投資された子供からは真の反発力が引き出せません。

そのことを1番怖れているのです。

自分の子供がお受験らに成功して、私立の有名小学校に入ったら、それで一生が決定すると考えるのは、あまりにも早計ではないかという考え方です。

この論点を前面に出して、論点を整理していくのが最も書きやすい方法でしょう。

そこで問題になるのが、筆者の立場に賛成するのか、反対するのかという点です。

ポイントは同質社会をどのようにみるのかということです。

共生社会という言葉も今日、多く使われています。

コロナ禍で外国人研修生の来日も少なくなりましたが、次第に復活の兆しもあります。

ロシアのウクライナ侵攻をうけて、難民を受け入れようという機運もあります。

つまり異質なものを受け入れるなかで、気づきを得ていくという書き方も可能です。

筆者の立場に近いものと言えるでしょう。

反対の立場

反対の場合は日本の同質性を高く評価する書き方になります。

同質であるからこそ、今日の発展をみたとズバリ書きます。

次のような書き方はどうでしょうか。

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今以上に異質なものを入れると、さらに社会が複雑になる。

それはリスクを高めることに直結するのではないか。

同じ環境の子供たちが、高い効率性をもって学ぶことができるのは、可能な限り望ましい。

その中から、将来の国を支える人材が出現するならば、それは大変すばらしいことなのではないか。

けっして排他的になるワケではないが、そうした考え方があってもおかしくはない。

「ノブレス・オブリージュ」という考え方が西洋にはある。

高貴なものは多くの責任を負っているという表現だ。

そうした人間として、生きるのも1つの生き方なのではあるまいか。

同じような価値観、幸福観に偏ってしまうことは確かに怖いことだ。

しかしそれ以上に、社会への還元がなされることをつねに視野に入れて学び続けることの意義も大きいと信じる。

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こういう書き方も一方では可能ですね。

小論文に答えはありません。

どのような立場であれ、首尾が一貫していればいいのです。

課題文では難民の受け入れなどに賛成する筆者の立場が強くまとめられています。

その部分を割愛したので、少し理解しにくかったかもしれません。

しかし全くそうした記述がなくても、この論点はさまざまな展開が可能です。

小論文の基本は論理の一貫性です。

それだけを追究してください。

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言葉は断定的に強く書くことです。

その方が内容に勢いが出ます。

練習を続けましょう。

今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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