【小論文・共感と同情】福祉系の問題は解決への糸口を慎重に考慮すべき

小論文

共感と同情

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は福祉系の問題を考えてみます。

キーワードは共感と同情です。

課題は長文ではありません。

一篇の詩です。

脳性マヒの女性が書いたものです。

詩の最後に配置された問いは次の通りです。

この詩を題材にしながら、「共感」と「同情」についてあなたの考えを800字以内で述べなさいというものです。

この2つの表現から何を読み取るのか。

その共通点、違いを正確に捉えないと、評価は下がってしまうでしょう。

「共感」と「同情」は全く違うものです。

そこに福祉の視点が入ると、より両者の差が浮き彫りになります。

はっきりと認識できなければ、そこでこの問題は終わりです。

まず詩を読んでみましょう。

解説はその後です。

課題の詩

かってにするな

不幸な娘だと、かわいそうな娘だと、
人は私に言うけれど
勝手に決めるな ばかやろう
一目見ただけの人間に何がわかる
私の幸せ知らないくせに
勝手に決めるな ばかやろう

えらいねだとか すごいねだとか
人は私に言うけれど
勝手に決めるな ばかやろう
今、会ったばかりの人間に何がわかる
私の喜び知らないくせに
同情の押し売り 勝手にするな

たいへんだから やってあげますよと
人は私に手を出すが
勝手に決めるな ばかやろう

私を知らない人間に何がわかる
私の力を知らないくせに
大きな同情 大きなお世話

困った時は自分の口で
お願いしますとたのむ頼むから
それまではほっといてください

勝手に決めるな ばかやろう

解答への糸口

どのような書き方でも可能ではあります。

福祉系の問題というのは非常に複雑な様子を持っています。

一般的に社会的な弱者を対象にしているのです。

社会で権力を持っている人の反対側にいるワケです。

社会を形成している人たちの目から見た時、弱者である彼らに正当性があるのかどうか。

あるとするなら、その社会的な弱者をどのように人間として扱えばいいのか。

関わるための方法を考えなくてはなりません。

それが福祉系の問題の中で最も難しい観点です。

つまり強い側にいる人間が持っている人間観や社会観をあぶり出す内容であると思われます。

今日の基本的な考え方は次のようなものです。

福祉とは基本的に困っている人のためのものではないということです。

社会に生きるすべての人の命を守るというのが、民主主義の基本的なコンセプトです

その問題の根をきちんと捉えていないと書きようがありません。

簡単に言えば彼らをどのように扱ったらいいのか。

かわいそうだと考えるのは、ごく自然なことです。

しかしかわいそうだという気持ちの根本には、自分は強い立場にいるという無意識の自覚があります。

弱い人間を何らかの形で救いたいと思うことは否定できません。

しかし可哀想な人たちをどうにかしてあげたいという発想から文章を書き出したのではダメです。

小論文としては最も低い評価のものになると思われます。

基本的に人間は優しさ、思いやり、親切心を持っています。

ある意味では健常者の作り出したものでもあるのです。

現状をきちんと認識して捉えられるかどうか。

人間は皆違うものです。

その異なる存在をどのようにして認識し、個性を否定したり無視することなく、お互いの生き方を貫き通さなくてはなりません。

それがどこまで可能なのかということが、問題の核心になるのです。

褒めるとか認めるとかいう言葉は簡単です。

けれども、それを安易に使ってしまうと、強い者の立場から弱いものを見下すという発想だけが前面にでてしまいます。

それだけは絶対に避けなければなりません。

その人間の持っている固有性を最後まで認識しないという一方的な判断からくるものになりがちなのです。

1人の人間として、そこに存在することを共感できるのかどうか。

それが大きなポイントになります。

2つのキーワードの落差を最後まで認識して文章を書かないと、このような福祉の問題には対応できません。

ではどのようにまとめればいいのでしょうか。

固有性の尊重

基本は自他の違いを認識することです。

目をそらしてはなりません。

何ができて何ができないのかを冷静に判断することです。

詩の中にもあったように、勝手に想像して同情することがあってはなりません。

とにかく話し合うことです。

そこから共通の一致点を探る。

互いを対等に認め合うという基本的な姿勢がなければ、全てはうまくいかないのです。

当然のことながら、その段階で「同情」は消え去ってしまうでしょう。

負の感情を持ち続けているだけでは、先へ進みません。

新しい言葉は「共感」です。

そこには強者も弱者もありません。

まさに対等です。

それができない限り、福祉の本当の意味を理解することはできないのです。

確かに一致点を見出す作業には時間がかかります。

しかしそれが産みの苦しみなのです。

その一見無駄な時間の堆積が、大きな所産をつくり出します。

相互の信頼関係が生まれるのです。

詩の中にもありました。

「困った時はお願いしますと頼むから」という表現は、まさにそのポイントをついています。

福祉の現場に参加する意思があるかないかではありません。

そういう場面で何が考えられるのかという、人間としての柔らかさを見ています。

評価の基準はたくさんありますが、最終的には人間としての理解力、包容力につきるのではないでしょうか。

じっくりと詩を読み、自分の文章をまとめてみてください。

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かわいそうという同情とは全く違ったフェーズに達すると考えます。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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