【小論文・構造】課題文を読むときは「対立」の図式を見つければOK

小論文

対立の構造

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

今回は課題文の読み方に着目します。

最近の小論文入試ではかなり長い文を読ませるケースが多いですね。

このブログでも、今までに数多くの問題を扱ってきました。

内容の分析も随分しました。

その中で何が難しかったのか。

一言でいえば、課題文の読み取りです。

これに尽きると思います。

設問の大半は「次の文章を読んで考えたことを書きなさい」というのが基本です。

つまり課題文がきちんと読み取れない限り、正確な小論文は書けないということです。

それではどこを読みとればいいのでしょうか。

大切なのは文章の構造です。

論理と言い換えてもいいでしょう。

どんな内容のものであっても、入試に出てくるものは基本的に対立の図式になっているものが多いのです。

なぜか。

対立の構造ならば、小論文の課題にしやすいからです。

基本的な図式をみてみましょう。

以下の通りです。

【文化論】  日本⇔西洋

【社会論】  昔⇔今  近代以前(プレモダン)⇔近代以降(モダン)
       近代(モダン)⇔現代(ポストモダン)

【人類学】  人間⇔人間以外の動物

【文学論】  文学⇔文学以前の芸術  詩⇔小説

【言語論】  書き言葉⇔話し言葉  言葉⇔情報

【哲学】 見ること⇔知ること  人間⇔人間でないもの
     他と異なる「私」⇔他と同じでいたい「私」

【相違】 ある考えに対する賛成論⇔反対論  筆者Aの意見⇔筆者Bの意見

2つの立場

どうでしょうか。

これらすべては対立の構造になっています。

つねに2つの立場にたって文章を読み解いていけば、内容をおさえることができるのです。

箇条書きにしてみると、入試の文章の特徴がよくわかりますね。

例えば、文化論などは実によく出題されます。

定番中の定番です。

日本人はとくに自国の文化に対して関心が強いのです。

論点の基本はつねに日本対西洋です。

美術、音楽、庭園、建築など、どれをとってもその違いは明らかです。

どこがどのように異なるのかという視点で文章がまとめられているのがよくわかります。

そういう問題が出た場合はどう解答すればいいのか。

次に例題を示します。

試しに解答を書いてみてください。

小論文は理屈ではありません。

よく「眼高手低」などといわれることがあります。

言いたいことはあっても書けないというタイプです。

こういう状態にならないためにはひたすら練習することです。

それ以外に方法はありません。

課題文の具体例

次の文章を読んであなたが考えたことを800字で書いてください。

ポイントは日本とヨーロッパとの文化の差です。

その対立点をどの程度、自分のものとして把握しているのかというのが評価の基準です。

ただ後ろから筆者の論点を追いかけるだけではダメです。

そこに自分の立つ位置からの影をつけることです。

そうすれば内容がくっきりと見えるようになります。

この文章には日本と西洋の文化の差がきちんと出ています。

その歴史的、地理的な背景も含めて、論点をまとめてください。

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日本社会には「対話」という概念が希薄である。

これは仕方のない側面もある。

一般に、日本社会は、ほぼ等質の価値観や生活習慣を持った者同士の集合体=ムラ社会を基本として構成され、その中で独自の文化を培ってきたと言われてきた。

これはたとえば皆で一緒に田植えをし、草刈りをし、稲刈りをしなければ収量がなかなか上がらない稲作文化の宿命と言えるかもしれない。

あるいは、極端に人口流動性の少ない社会を作った徳川幕藩体制が、そのような傾向に、さらに拍車をかけたとも言えるだろう。

私はこのような日本社会独特のコミュニケーション文化を「わかりあう文化」「察しあう文化」と呼んできた。

一方、ヨーロッパは異なる宗教や価値観が、陸続きに隣りあわせているために、自分が何を愛し、何を憎み、どんな能力を持って社会に貢献できるかを、きちんと他者に言葉で説明できなければ、無能の烙印を押されるような社会を形成してきた。

これを私は「説明しあう文化」と呼んでいる。(平田オリザ)

正反対の文化

日本の文化は四季や自然に対する繊細で豊かな感性に彩られています。

同じ民族が1つの島の中で農業を営んできたという歴史が、今日の日本人を作り出したといってもいいでしょう。

しかし西洋文化はそれとは全く正反対です。

自然は人間によって征服されるべきものだというのが、彼らの考え方の基本です。

自然との共存をつねに図ってきた日本の文化とは全く性格が違います。

その論点をまず着実におさえてください。

そこから新たな視点を作りだしていかなければいけません。

ただ違いがどのようであるなどと述べただけでは先へ論が進まないのです。

環境破壊が強く叫ばれている今日、グローバルな視点からみて、その文化はどういう特色をもっているのか。

日本の文化に可能性が豊かにあるとしたら、それは何か。

単純に筆者の文章の後追いではなく、違う角度から日本の文化の可能性に言及するのはいい視点です。

あなたはどこに日本の文化の未来を感じますか。

対話があまりなされず、互いに察し合うという間柄だけで、グローバルな社会に生き残ることができるのでしょうか。

そこが最大のポイントです。

それならば、西洋型の説明しあう文化に形をかえなくてはいけないのか。

ここに小論文の分岐点があります。

どちらの立場でもかまいません。

ただしそれが論理的にきちんと納得できるものであることが必要です。

例を1つあげます。

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確かに説明しあうことも大切である。

しかしそれだけで世界はうまくまわるのだろうか。

オリンピックの時に盛んに使われた言葉を覚えている人も多いだろう。

「おもてなし」という日本独自の表現は自然との融合を図る文化の特徴をよく表している。

対立することをゆるさないというのではない。

しかしそこに相手に対する真実の心がなければ、何も先には進まないのではないか。

華道、茶道が進めてきた心の平安を大切にする方向性が、やはり新しい時代にも必要だと考える。

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こういうまとめ方も可能です。

その反対に日本は論理をさらに進める西洋型になるべきだという視点も十分に成り立ちます。

さっそく練習をしてみてください。

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書いたら必ず添削をしてもらうことです。

その繰り返しがあなたの合格を約束するのです。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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