原子力発電
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は小論文の中でも頻出する問題を取り上げます。
ズバリ原子力発電の是非です。
これほどにコストが安く、二酸化炭素を出さないきれいなエネルギーはないと政府は宣伝してきました。
しかし東日本大震災に伴う原子力発電の怖ろしさは、福島原発の事故で誰もが知るところとなったのです。
今後も原子力発電所を建設するべきがどうかというのが問題の核心です。
あるいは今休止している原発を再稼働することに対して、どのように考えるのか。
この2つが大きなテーマでしょう。
当然批判する立場と推進する立場に別れることは明らかです。
この小論文の場合はYesかNoかの意見を書かなければならない厳しい内容です。
どちらでもないという形式の書き方は難しいです。
どうしても双方の意見が拮抗して決めることができないという議論も、ありえないワケではありません。
しかしこの問題の場合はどちらかの立場なのかを鮮明にした方が、より評価されやすいでしょうね。
ではどちらの方がより高い成果が得られるのか。
受験生なら誰もがすごく気になるところです。
結論を言いましょう。
どちらでもいいのです。
小論文に正解はありません。
自分の信じている方向に舵を切って問題がないのです。
採点者の大半が原発を否定する立場にいるはずだという思い込みは、必要ありません。
あるいは現在の世界の流れが再生エネルギーに傾いているからなどということも、考慮する必要はないのです。
論理の運び方
ここで必要なのは、あくまでも筋道の通った論理の運び方です。
私は不勉強でよくわからないといった弁明を、入れる必要はありません。
ポイントは理由がきちんしていればいいのです。
それ以上に内容を詳しく科学的に分析して論じなくてはならない、ということはありません。
根拠がはっきりしていれば、それ以上に追及されることはないのです。
まず主張をきちんと書きましょう。
それが一段落したら、なぜその主張をするのかを説明するのです。
これが小論文の基本です。
それ以外にはありません。
とにかく詳しくわかりやすく書くことです。
どちらの結論を書くにせよ、1番大切なのはメリットとデメリットを最初にまとめることです。
ここでも同様に考えてみましょう。
その進行過程で、自分の論点が煮詰まってくるはずです。
書き出す前にどちらの立場で書ききるのかを決めておいた方が、書きやすいかもしれません。
ひとつの目安として安全性、エコロジー、代替発電の可能性などを考えておくとわかりやすいでしょう。
大切なのは最初に思考のための材料を提供することです。
ある程度の知識がないと、この部分は書けません。
全てを覚えておく必要はありません。
しかしポイントは確実に把握しておくべきです。
メリットとデメリット
原子力発電は、安全の確保を大前提にして考えた場合、メリットとして大きく3つの点があると考えられています。
第1に燃料の安定供給が可能だということです。
原子力発電の燃料となるウランは、石油に比べて政情の安定した国々に埋蔵されています。
資源の安定的な確保が容易なのです。
使い終わった燃料は再処理することで再び燃料になります。
つまり限りなく経済的なのです。
第2の点は発電時にCO2を排出しないことです。
この事実が現在の地球温暖化を救う大きなメリットになり得ます。
第3に電気料金の安定に役立つ点です。
発電コストに占める燃料費の割合が相対的に低いのです。
火力発電などの方法に比べて、燃料費の高騰による発電コストの上昇を避けることができます。
燃料が少なくて済むということは、燃料の安定供給やリサイクルにとっても有効です。
ではデメリットはなんでしょうか。
メリットが多くある一方でデメリットがたくさんあるのも原発の特徴です。
原子力発電は「高レベル放射性物質」が生成される点がネックです。
この物質に関しては、最終処分地が決定しにくいという問題がつねにつきまといます。
長期間厳重に管理する必要があるのです。
確かにCO2を排出しない点はすばらしいのですが、放射性物質の漏洩の可能性は消えていません。
どこにそのための場所を設定するのか。
これが最大の難問です。
この装置はつねに事故の危険性をはらんでいます。
原発のカギはまさにこれだと断言してもいいでしょう。
事故の検証
その証拠にチェルノブイリや福島原発の例をあげることもできます。
放射性物質漏洩に関するリスクがあるため、人は原子炉に近づくことができません。
さらに発電所の解体に多額のコストと長い年月が必要になります。
平常時の解体でも莫大な費用がかかるのです。
さらに事故などの例をみれば、想像がつきません。
もちろん、テロなどの可能性も考えなくてはならないでしょう。
さて材料は揃ったとして、どちらの立場で書けばいいのか
ここで力を発揮するのが例示です。
具体的な事実を示すとそれだけで原発の危険度がよくわかります。
たとえばチェルノブイリの場合、原子炉の周囲30キロが立ち入り禁止になりました。
もれた放射能が風にのって北欧にまで到達し、トナカイ2万頭が被爆しました。
結局、トナカイは射殺されてしまったのです。
日本でも現在、福島原発の解体工事が進んでいます。
しかしその困難度は想像を絶するものです。
昨年の2月時点で、処理水の総量は120万立方メートルに達しました。
イメージが浮かびますか。
貯蔵タンク数は1000基以上に上っているのです。
タンクの設置は完了したものの、今年の夏にはいっぱいになる見込みです。
処理水の廃棄が待ったなしの状況となっています。
海に流す以外に方法がなくなっているのが実情なのです。
今後すべて解体するまでに20年間はかかるだろうといわれています。
事故が起きた地域の農作物や漁業資源が風評被害をうけました。
放射線による汚染は、半永久的に続くものと思われます。
自然に対して負荷の少ない再生エネルギーへの転換が必要だというのが、多くの人の素朴な考え方でしょう。
しかし資本の論理はまた別の道をたどります。
原発をつくることで生活している人々が存在していることも事実です。
今後、どうしていけばいいのか。
あなたの考えを素直に述べてください。
ただしあくまでも論理的な筋道をたてていくことが大切です。
自分でも勉強する姿勢で真剣に取り組んでみましょう。
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視野の広さをアピールすることも大切なのです。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。