【小論文・デジタルデバイド】情報格差社会の怖さを把握するのが先決

小論文

情報格差

みなさん、こんにちは。

元都立高校国語科教師、すい喬です。

昨年から今年にかけて吹き荒れたコロナ禍の中、学校も難問を抱え続けました。

面接授業ができなくなったというのがそれです。

大学では黒板を前にして講義する風景がほぼ消えてしまいました。

小中高でも、先生がカメラの前で授業をするという様子が、テレビなどでも紹介されていましたね。

ICTの活用が声高に叫ばれ、1人1台ずつタブレットが配られました。

しかし実際、家に持って帰ってもWifi環境が整っていないという事態があちこちで起こっています。

そのためにルーターを貸し出したりもしました。

保守点検などに費やすエネルギーは想像を絶するものです。

先生方も慣れないタブレットを無理にでも授業で使わなければならなくなりました。

どの程度の効果があったのか。

検証は現在先送りになっています。

そこでよく口にされた表現が「デジタルデバイド」です。

日本語にすれば「情報格差」でしょうか。

文字通り「デジタル(digital)がもたらす分断(divide)」のことです。

すなわちインターネットやパソコンなどの情報通信技術(ICT)を利用できる人とそうでない人の間にもたらされる格差をさします。

これは生徒だけでなく、教師側の問題でもあります。

多くの情報が今はデジタル化されています。

ICTを利用できないということは、それだけで大きなマイナス要因です。

情報にアクセスできないということは、情報難民と呼ぶにふさわしいのです。

荒野の真ん中に1人で立っているようなものでしょう。

もちろん情報の質などというレベルではありません。

量そのものの欠如が貧困を招くのです。

議論の開始

この問題がとりあげられるようになったのは1990年代半ば頃のアメリカにおいてです。

日本においても、2000年の沖縄サミットでIT革命が議題に取り上げられた頃から耳にするようになりました。

1番深刻なのは年収や年齢の差が情報量に比例してしまうことなのです。

2020年の資料によれば年収1000万円以上の層のインターネット利用率は94.5%です。

ところが年収200円万未満の層の利用率は80.7%なのです。

年齢別では13歳~69歳が90%を超える一方、70〜79歳は74.2%、80歳以上は約57.5%です。

この格差があらゆるところに派生しています。

今年の夏前から始まったコロナワクチンの接種はその典型でした。

特に高齢者はネットで予約をとる方法を知らなかったのです。

電話はつねに話し中でした。

ネットの扱いに不慣れな人はパソコンはもちろん、スマホでも予約サイトにアクセスできません。

そこで市役所などに押しかけるという現象までおきました。

子供や孫に頼ってやっと予約をとってもらったというのが実情です。

この現象をみてもわかるように、障害者、高齢者、低所得者と呼ばれる弱者にデジタルデバイドの問題は顕著にあらわれます。

地域間、個人間、国家間

通信インフラの問題も同時に考えなくてはなりません。

地域間の問題は国内の都市部と地方部といった地域ごとの情報格差のことです。

とくに過疎化している地域と都市部との差は大きいです。

さらに個人間の問題は先ほどとりあげた内容にからみます。

年齢や障害、学歴、所得によって発生する情報格差です。

富裕層や都市部に住む人、年齢の若い人ほどリテラシーは高い傾向にあります。

これがデジタル化の現実です。

さらに高齢者世代はますます孤立化していく傾向が強いのです。

日本では年齢が高くなるほど、インターネット利用率が減少しています。

すなわち高齢者は情報弱者になりやすい。

最近ではほとんどのケースがスマホでの利用になりつつあります。

高齢者用のデバイスもあるとはいえ、全く使っていない人も多数います。

特に最近のキャッシュレス決済や公共手続きのデジタル化などに追い付いていけない場合、情報弱者に陥る危険性がとても高いのです。

実際問題としてインターネットやアプリ・SNSを使用していないと、人とコミュニケーションを取ることも難しくなりつつあります。

またWordやExcel等のITスキルがなければ就職も不利です。

さらに国家間での差もあります。

いち早く国民がネットを使えるようにしている国家がある一方で、その恩恵に属していない人達が多数を占める国もあります。

この格差をどう是正するのかというのは難問中の難問なのです。

課題はインフラの整備につきるでしょう。

ユビキタス社会

ユビキタス社会という言葉を聞いたことがあると思います。

誰でもがどこでもいつでも情報技術の恩恵にあずかれる社会のことです。

しかしその実現にはデジタルデバイドの壁を取り除かなければなりません。

コロナ禍の中、企業のリモート化が劇的に進みました。

しかしまったくその恩恵に浴していない企業、業種もあります。

使いこなせる人間にとっては確かに暮らしやすい社会だといえます。

しかしその一方で取り残されてしまった人にとっては息苦しい時代です。

その差をどのようにして埋めるのか。

それが最大の問題です。

小論文の課題

入試のテーマとしてデジタルデバイドが出題されたら、どういう視点が必要でしょう。

最初にある程度実態を書き、現実の格差を見つめているという姿勢を貫いてください。

その次にではどうするのかというテーマに移ります。

具体的な施策について考えた結果をまとめていくという方向が理想的です。

その際、あまり突拍子もないことを書く必要はありません。

基本は操作のしやすいデバイスの開発です。

誰でもが違和感なく扱える道具が1番理想的なのです。

それを使いこなすための情報教育も必要になるでしょう。

高校などで行われている情報の授業を入試に盛り込むなどというのもその流れの一環です。

しかし問題は弱者へのあたたかい視点です。

そのための人材の開発も急務です。

最後に簡単にまとめておきます。

問題点は以下の通りです。

①貧富の差の拡大
②デジタルデバイドを利用した事件に巻き込まれる可能性(特に高齢者)
③高齢者、障害者の孤立化
④情報技術の開発・対応をする人材の不足(特に地方)
⑤扱いやすい機材の新規開発

最近の問題としてはスマホの操作には慣れていても、パソコンの操作に慣れていないという人が増加しています。

これも個人間のデジタルデバイドに含まれると考えてください。

この世代のことを「スマホネイティブ」と呼んでいます。

彼らはSNSでの会話やゲーム、動画視聴などのほとんどをスマホで行っているのです。

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就職する際、パソコンに代表される必須のツールが使いこなせないという問題もあります。

時間があったら「スマホネイティブ」の問題もチェックしておいてください。

今回も最後までお読みくださりありがとうございました。

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