自立すること
みなさん、こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は成人の区切りについて考えましょう。
2022年4月より成人の年齢が18歳に引き下げられます。
2015年に選挙権が18歳以上に変更されて以来の大改革です。
そんなに急ぐのはなぜなのか。
とまどっている人が多いかもしれません。
世界の流れにあわせて進むのは当然だという意見の人もいるでしょう。
それぞれの立場によって賛否が分かれるに違いありません。
このテーマについてはYesNoの内容がはっきりしているので書きやすいとも言えます。
しかしその内容をきちんと掴んでいないと、とんでもない文章になってしまう怖れがあります
大切なことは成人年齢が18歳に引き下げられて何が変わるのかを最初に把握しておくことです。
そこがきちんと見えていないと、的外れになってしまうでしょう。
大切なポイントは少年法との関連です。
現在19歳までの少年には少年法が適用されています。
原則として刑事処分ではなく、家庭裁判所による措置となるのです。
改正少年法は年齢の区切りをどうしようとしたのか。
ズバリ折衷案をとりました。
成人年齢が18歳に引き下げられるという現実の前で「20歳未満」としていた少年法との間に生まれたギャップをなんとか埋めたのです。
罪を犯した18、19歳を「特定少年」として厳罰化することとしました。
民法と同じく、2022年4月から施行することが決まっています。
元々、少年の人権には戦後の貧困との問題が複雑にからんでいました。
犯罪に走る少年たちの背後にはつねに貧しさがあったのです。
しかし最近の少年犯罪をみていると、単純にはそうも言えなくなってきました。
少年法の基本的な考え方はあくまでも更生が主体です。
ところが時代の流れの中でこの思想だけでは解決のつかない案件も増えているのです。
世界標準
これでほぼ世界の流れと横並びになりました。
18歳を成人とみなすというのは世界の潮流そのものなのです。
成人とは自立している人間をさします。
社会への参加をするにあたり一人前として認められることです。
それと同時に責任も重くなります。
人間は他の動物に比べると、発達が著しく遅い生き物です。
生まれて数時間すれば立って歩くような動物もたくさんいます。
しかしそれに比べると、あまりにも成長が遅いのです。
そこで法律である一定の年齢を区切りました。
いつから成人になるのか。
社会の構成員がここからが妥当だろうという年齢に線引きをしたのです。
現在の民法には「年齢20歳をもって成年とする」と規定されています。
それ以下の「未成年者」は法定代理人の同意を必ず得なければなりません。
逆に言えば来年の4月から18歳以上の成人は親権者の同意を得ずに法律行為を行うことができるのです。
成人となった日からできることが飛躍的に増えるワケです。
社会的な意識を高めなくては生活が営めないということにもなります。
これは想像以上に厳しいことです。
しかしそれが世界の標準なのです。
140年の歴史
なぜこの時期に18歳に変更したのでしょうか。
自己決定権の尊重というのがトップの理由です。
若者たちが積極的に社会参加をすることへの期待が高まっているのです。
するとどうなるのか。
今まで20歳で成人式を迎えていた人たちはすでに3年を過ぎた大人ということになります。
それだけ早く自立しろと背中を押されているのです。
成人年齢の引き下げによって18歳の人が保護者の同意なしにできるようになることが増えます。
その具体的な内容をみていくだけで、少し怖くなるほどです。
18歳といえば、高校を卒業する年齢です。
こんなに難しいことを自分の判断でできるほど、精神的に成長しているのかどうか。
ここに反対論の大きな根拠があります。
取り返しのつかないことになったらどうするのか。
全ては自己責任という4文字で解決しなくてはなりません。
特に法律についての知識などが未熟な段階で契約をすることも可能になります。
金銭にからむ問題などが発生した時、本当に責任をとれるのか。
1つの例をあげてみましょう。
18歳で未成年者であった時は何かの契約をしようとした時、必ず保護者の署名欄が必要でした。
保護者の同意を証明するものです。
なにかトラブルが起きた時は基本的に親が責任をとるという証拠でした。
今後は18歳になると保護者の署名欄が消えます。
その場で契約締結が完了することになるのです。
「支払い」が関係する契約は、支払能力の審査もありますから、単純に全ての責任とはならないと思いますが、契約の観念は要求されます。
1人暮らしの賃貸借契約なども1人で行えます。
もちろん保護者を保証人とする場合も存在するでしょう。
しかし保証会社を利用する場合は保護者なしでOKです。
さらに正社員契約も自分の意志で行うことが可能になります。
クレジットカードの作成なども、自由に行うことができるようになります。
ただし「審査が通らない」という理由は発行する会社側の理由が優先されるでしょう。
交通事故などによる示談の契約も、自分の意志ですることができます。
さらに10年有効のパスポート取得も取得できます。
今までの法律では未成年者は5年と決められていました。
単独で民事裁判の原告や被告にもなれます。
法律など何も知らないということが許されません。
全て自己責任なのです。
飲酒、喫煙、ギャンブル
ただし飲酒と喫煙は健康面への影響や非行防止の観点から、20歳の年齢制限が維持されています。
ギャンブルも同じです。
競馬、競輪、オートレースといった公営ギャンブルも非行防止、青少年保護等の観点から、従来と変わらず20歳の年齢制限が維持されています。
18歳で選挙権を得たことで、若者に政治への参加意識が生まれたという話題をよく聞きます。
考え方が政治に反映されやすくなるということも当然あるでしょう。
選挙権だけではありません。
憲法改正に必要な国民投票の投票年齢も18歳に引き下げられています。
調べていけば民法の改正は私たちの生活に直結していることがよくわかります。
今まではなんでも親に任せておけばいいという発想だった人も、これからはそんなことを言っていられません。
若者が消費者被害のターゲットになる可能性もあります。
今までは悪質業者の目標になることなどあまりありませんでした。
しかし今後は悠長なことを言ってられません。
その場でした契約が法律的に有効になります。
おそらく来年の4月以降、そうした犯罪が多発する可能性もあります。
このテーマにはメリットとデメリットの2つの側面があります。
きちんと把握して自分の知識にしておいてください。
どちらの立場により近いのか。
その判断をしておくことも大切です。
必ず文章にしてまとめることです。
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① 賛否の立場を明確にすること
② 若者の自立を基本に考えること
この2つを守りながら、小論文を書いてみましょう。
今回も最後までおつきあいいただきありがとうございました。