プラスチックフリー
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
2021年度都立高校の推薦入試が終わりました。
あとは合格発表を待つだけです。
推薦入試は内申書、面接、小論文で合否が決まります。
その中で小論文の占める割合は20~30%。
学校によっては35%近くになるところもあります。
通常はかなり長い課題文やグラフの読み取りが主流です。
志望する人は過去問にあたっておく必要があるでしょうね。
入試作成委員の先生方は以前の問題を参考にします。
過去に出された設問を子細に検討しながら、例年あまり違った傾向にはならないようにしているようです。
グラフが多く出る学校は来年度も同じパターンを踏襲する可能性が高いワケです。
都立日野台高校には今年、プラスチックフリーの問題が出題されました。
ここ数年、レジ袋の有料化やプラスチック製ストローの廃止などが大きな潮流になっています。
今や世界的な傾向なのです。
まさに直球が投げられたという印象ですね。
今回の主題は漂着プラスチックゴミです。
プラスチックを取り巻く国内外の状況として海洋ゴミの実態把握調査が出典でした。
特に問題なのは廃棄物が小さな粒になり海の生態系を含めた地球環境を脅かすという深刻な実態です。
添付されたグラフは漂着プラスチックゴミの種類別の重量に関するものです。
それによれば1位は漁網とロープです。
これが全体の41.8%を占めています。
次が26.7%のライター、注射器、発砲スチロールなど。
現在問題になっているポリ袋は全体の0.4%という数字なのです。
これらを表から読み取って注目する課題を説明せよというのが問題の核心です。
限られた字数
制限字数は320~360字。
字数が非常に限られています。
よほどポイントをうまくまとめないと難しいですね。
さらに課題改善のために最も有効だと考える方策を1つ具体的に示せという指示です。
原稿用紙1枚にも満たない文章に方法論まで入れなさいというのはやってみればわかりますが、かなりつらいです。
受験生は苦労したことでしょう。
プラスチックの問題は来年度も出題されると思われます。
このブログにも関連した記事を以前書きました。
最後にリンクを貼っておきますので、参考にしてください。
特に海洋漂着ゴミの中で最も多いのが漁網とロープだということはさきほども示しました。
3位にはブイ(浮標)が入っているのです。
この順位はこれからのプラスチック利用のあり方について、多くの問題を投げかけています。
日常的には家庭から排出されるプラスチックゴミにばかり目が行きがちですが、さらに広範囲に視野を広げる必要があります。
新聞、書籍などをよく読み、この問題への対策を考えておいてください。
一朝一夕に解決するようなテーマではありません。
それだけに内容が大変に難しいのです。
この問題は今後の大きな流れになるものと思われます。
ニュースではファーストフード店などでストローなどを紙製にする流れが定着したと報じています。
その他にどのような施策が可能なのか。
エコバックの普及もごく自然なものとして受け入れられました。
しかし漁業の現場ではまだ問題が山積しています。
その理由はどこにあるのか。
海洋汚染で漁獲高そのものにも大きな影響が出ています。
この機会にプラスチックと漁業の今後について、見聞を広めておく必要がありますね。
学ぶことの意味
町田高校の問題は長文でした。
A3の用紙に小さな活字でびっしりと印刷されていました。
「学び」について論じた長文を2つ読んであとの問いに答えなさいというものです。
出典は文章Ⅰ、松岡正剛『日本文化の核心』(講談社現代新書)と文章Ⅱ、佐々木毅『学ぶとはどういうことか』(講談社)です。
文章Ⅰは世阿弥の学びの方法についての論考です。
世阿弥はものをまねるところから「まねび」を「まなび」としたという内容が中心です。
ここに日本の学びの中心があるという考え方です。
文章Ⅱは「学び」の本質は想定の枠内での積み上げだけでなく、その枠を超える能動的で知的な行為であるという認識だというものです。
つまり思考の自由度を高くして新しい学びをつねにしなければならないという基本的な考え方なのです。
設問は問1と問2に分けられています。
問1はそれぞれの筆者の立場における「学び」の意味をきちんと認識できたかどうかということを問うものです。
200字以内でまとめなければなりません。
問2はどちらの立場にたって「学び」への取り組みをするのか。これまでの体験や見聞をもとに400字以内で書けというものです。
文章Ⅰでは世阿弥の登場に驚いたというのが本音でしょう。
ある程度、この能の大成者について知っていると、かなりゆとりを持って課題文が読めたかもしれません。
しかし「学び」についての内容を理解ができれば、世阿弥の存在を知らなくても文章の意味は把握できるはずです。
普段、中学生の段階では自分がどのように学んでいるのかなどということを考えるチャンスはありません。
ただ学校で習ったことを記憶し、応用するだけでしょう。
それを次の段階に発展させていくにはどうしたらいいのかなどというのは、まさにこれからの構図なのです。
しかしそこにあえて踏み込んで2つの対立する考え方を示したのは意義があったと思われます。
どちらの立場をとるのか
ポイントは2つの文章のどちらに自分が親近感を覚えるのかという点です。
それぞれの中に似た状況があり、相互に連関しているという考えを表明することももちろん可能でした。
一見、全く違う内容にみえるにも関わらず、地下で深く繋がっているという発想もあってもよかったかなとは思います。
あるいは全く正面から自分がどちらの立場であるかということを表明する方法論もありえます。
そういう意味で、この問題は図式にのっとってYesNoで書くことも可能でした。
ただし字数が限られていますので、言いたいことを書いていると、すぐ目一杯になってしまいます。
わずか原稿用紙1枚に全てを収めるのにはかなりのスキルが必要です。
60分という制限時間の中で、どう時間を配分するのかも練習しておかなければなりません。
日常的に文章を書いていないと、制限時間内で長文を読んだ後、まとめるのは至難の技です。
とくに2つの典型的なパターンの特徴をきちんと把握できなければ、曖昧な表現に終始してしまいがちです。
自分の立地点を明らかにしながら、文をまとめる技術はかなり高度なものです。
それができないと、いい評価は得られないでしょう。
どっちつかずの文では「学び」の意味が理解できていないと判断されてしまいます。
チャート化して、キーワードをうまく埋め込みながら、書いて欲しかったです。
高校へ入って学びたいことがあれば、それはどちらの方法論で進むべきなのかが見えてくるはずです。
そういう意味で、自分のアイデンティティを確立している人向けの小論文であったとも言えます。
「学ぶ」という主題は毎年、どこかの学校で出題されています。
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1度、自分の立場を明確にしておくことをお勧めします。
最後までお読みいただきありがとうございました。