コロナ禍の入試
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は2021年度の入試について少し考察してみましょう。
最初に言っておきます。
とにかく今年は例年と違う入試になります。
国公立に関していえば、大学入試センター試験が廃止され、新しく大学入学共通テストが始まります。
書かせる問題をメインにする方向でしたが数年間は見送りのようです。
英語の外部試験利用、採点者の確保など、難問も山積みされたままになりました。
初年度ということもあり、あまり大きな変化をつけられないということでしょう。
受験生の不安を払拭し、安心して受験できる体制を早急に整えるということで現時点では記述式導入を見送るということです。
特に自己採点結果との不一致を改善するのは容易なことではありません。
結局、大学入試改革の2つの柱は実施されないことになりました。
当分、様々な議論が続けられることでしょう。
いずれにしてもここ数年間は以前のセンター入試と似たような内容で進むものと思われます。
しかし受験生にとってはいろいろと変化があり、気が気ではありません。
特に今年は学期当初の授業がなくなってしまいました。
ネット配信などもあったことでしょうが、やはり不十分なのは否めません。
学習単元も入試までにすべてクリアできるのかどうか、大変に心配なところです。
本来なら、この時期からキャンパスツアーなどが始まり、志望大学を決めるシーズンに入ります。
しかしそれも新型コロナの影響で実施できない大学が多いようです。
どのように志望校を決めればいいのでしょうか。
成績の心配もあります。
もちろん1学期の成績が大切であることは言うまでもありません。
評定平均値の大切な基礎資料になります。
しかしそのための校内テストがどのような日程でいつ行われるのか。
今年度だけ、変則的な2期制をとる学校もあるようです。
従来とは違うスケジュールの中で、入学試験を受けなくてはならないことになりました。
それだけでもかなりのストレスです。
推薦人数を増やす
昨年の大学入学者のうち、私立大で全入学者の半数、国公立でも5分の1がAO・推薦入試で入学しました。
文部科学省、国立大学協会も、令和3年度までに推薦などによる入学者を定員の30%にするとの目標を掲げています。
来年以降は大学入試改革で、AO・推薦入試も大きく変わっていきます。
AO入試は「総合型選抜」と名称が変わります。
今までは学力テストが課されない場合もありました。
しかし来年以降は大学入学共通テストや大学の個別のテスト、外部の資格検定試験など、何らかの学力テストが必須になる場合があります。
推薦入試も「学校推薦型選抜」に変わります。
こちらも学力テストが必要になるケースもあるので、注意が必要です。
つい先日、早稲田大学のニュースが流れました。
今までも幅広い学部でAO・推薦型の入試を実施してきましたが、今後、募集定員全体に占める割合を一般入試と逆転させるというのです。
具体的には目標を6割まで引き上げるそうです。
なぜかというのは、同大学に特有の事情があります。
成績のすぐれた生徒が仮入学し、次年度に他の大学へ再入学するケースもかなりあるとのこと。
それならば、最初から専願で受験してくれる多様なバックグラウンドを持つ学生を集めたいという気持ちもわからないではありません。
看板の政治経済学部も「グローバル入試」を実施します。
「活動記録報告書」を書かせ、何かに熱中した経験を元に自分の将来を考えられる人間を育てたいというのがその趣旨です。
高い英語力を求めるため、21年度からは2年以上の海外就学経験を必須にします。
さらに各都道府県から1人以上を受け入れるという方法に力を入れるのは社会科学部の全国自己推薦です。
約6倍の倍率といえばかなりの数字ですが、一般入試に比べればそれでも約半分なのです。
新入生1万人のうちの6000人がAOと推薦組だという事実をどう思いますか。
それだけで時代の変化を感じさせますね。
今年はそれでなくてもスポーツの全国大会などがほぼ中止になりました。
いくら自分の実績をアピールしたくても、その方法がありません。
高校側としても、ここが悩みの種です。
スポーツだけではないのです。
文化的なアピール度の高い行事の結果なども、推薦書に書き込むことができません。
この1点を考えただけでも、今年度の入試が過去のものと違うことは明らかです。
慶応義塾大学の場合
日本で最初にAO入試を実施したのは慶大湘南藤沢キャンパスでした。
現在もSFCはAO入試を売り物にしています。
高校の成績の評定平均を問わないのです。
そのかわりに志望理由と入学後の学習計画、自己アピールを2000字という長文とA4判2枚で自由に表現させます。
自分の目標がきちんとしていない学生にとっては、大変に手間のかかる入試だということになります。
逆にいえば、成績に関わらず、好きなことをコツコツと積み上げてきた生徒は、合格するチャンスを手にしています。
21年度入試からはAO入試の定員を200人から300人へと大きく拡大することが決まっています。
法学部のFIT入試は、以前このサイトの記事でも扱ったことがあります。
大変にレベルの高い入試ですが、決まるのが9月と実に早いのです。
2000字の志望理由書や自分の魅力を表現するポートフォリオなどの提出が必須です。
倍率は一般入試よりもはるかに高く、この試験にパスするのはよほどの実力が必要だろうと感じます。
しかし成績よりもまずその人間性を見るという基本の態度が明確にされている試験です。
立教大学は昨年度のAO推薦入試で3割程度受験生が増えたそうです。
英語力だけではダメです。
やはり自分の個性を前面に出した入試への心構えが必要なのです。
異文化コミュニケーション学部と経営学部への注目度が上がっているとのこと。
いずれにしても自分が受験したい学部の内容をじっくりと研究することが大切なのは言うまでもありません。
志望理由書をどう書くのか
推薦入試の最大のメリットは、志望大学への近道であるということです。
一般入試よりも、学力に対するハードルが低いです。
一般的に倍率も低く私立大学の指定校推薦ならばほぼ確実に合格が決まります。
仮に不合格になっても、一般入試で再チャレンジできます。
はやく決まるというのも大きなメリットです。
ただし合格したら基本的に辞退はできません。
その覚悟だけはしっかりと持っていてください。
AO・推薦入試に志望理由書は必ず必要です。
これが面接のための基礎資料になります。
大学によっては推薦書を数人の先生、クラブ指導者、課外活動担当者に書いてもらうところもあります。
しかし本人がまとめる志望理由書が最も大切です。
書式も実に様々です。
大判のノートのようなものにびっしりと記述させる大学もあります。
実際に何を書けばいいのでしょうか。
大切なことは読んだ人が間違いなく納得できる内容なのかどうかです。
興味のある分野についてどれだけのことを知っているかではありません。
それよりも「なぜ興味を持ったのか」「大学ではどの分野について学びたいか」などの方が大切です。
そのために今まで何をしてきたのか。
自分の特性に照らし合わせて説明が十分にできるかどうかがポイントです。
自分の強みをどう活かしていきたいかを書きつつ、なぜこの大学のこの学部でなければいけないのかを説明しつくすことです。
他の学校では学べない何かがあることを実証しましょう。
それが1番大切です。
この研究はここでしかできないということをきちんと説明するのです。
そのための下調べをきちんとすること。
それくらいのことができないようでは、AO・推薦入試に合格するのは難しいです。
自分は一般試験の方が向いているという人は、その方向で進んでください。
成績よりも、実績でという人は今から、そのための方法論を身につけることです。
今年は早く決めたいと考える生徒が多いと思います。
学力不足に対する不安もあるからです。
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さまざまな角度から入試の研究を続けてください。
もちろん、日々の勉強を怠ってはいけません。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。