正対する覚悟を
みなさん、こんにちは。
小論文添削指導歴20年の元高校国語科教師、すい喬です。
今回は文章を書く上での覚悟について少しまとめさせてください。
非常事態宣言が解除され、長いコロナ鬱の日々からやっと幾らか解放されて楽になりました。
しかしこの間、多くの人が重苦しい気分でいたことだろうと思います。
移動は禁じられ、どこへいくこともできませんでした。
親しい友人との会話を楽しむこともできなかったのです。
確かに会議用の通信システムはあります。
それを使って飲み会をすることもありました。
しかし何かが決定的に違います。
お互いの顔を見て、微妙な空気感を楽しみながら会話をすることがどれほど貴重かということを知りました。
話の内容もそうです。
同じ場所にいるからこそ、それぞれの境界や領域を微妙に計るということができるのです。
それなしに弾む会話はできません。
そのことにあらためて、今回気づきました。
言葉は生きています。
ほんのわずか、その境界線を越えただけで、意味が180度変化します。
そこにこそ語ることの意味があるのかもしれません。
それでは書くことはどうなのでしょうか。
全く同じです。
「てにをは」1つ、接続詞1つが違うだけで完全にニュアンスの異なる文章になってしまいます。
小論文においても同様です。
この感覚はたくさんの文章を書き、苦労して練習している人なら、誰でもが理解できるはずです。
それだけの覚悟をもって文を綴っていこうということなのです。
ともすれば字数を稼ぐということに意識が向いてしまうケースもあるでしょう。
しかしそれは邪道です。
意見を述べるという設問
問題をみていると、実に種々雑多なものがあります。
それらにあなたの解答は正対しているでしょうか。
どこかではぐらかそうとしていませんか。
「文章中の……についてあなたの意見を述べなさい」とあるのに筆者の論点ばかりをまとめたのでは意味がありません。
「あなたの意見」と言われたら、自分の考えをただ論じるだけでなく、なぜそう考えたのかという理由を明確に論じなければいけないのです。
この部分がいわば覚悟にあたります。
境界線をきちんと分けて、どこまでが筆者の意見で、どこからが自分の意見というように腑分けをしなくてはいけないのです。
小論文があまり得意でない人は、この最初の段階で躓きます。
書いているうちに、自分の考えと筆者の考えとがゴチャゴチャになってくるのです。
そしてどこへ結論を持っていけばいいのかがわからなくなる。
これがよくあるパターンです。
そんなことは絶対にするワケがない。
多くの人はそう思っています。
しかし採点をしていると、このタイプの文章が実にたくさんあるのです。
「あなたの意見は」という時の基本的な書き方をもう1度確認してください。
対策を示しなさいという問題
これもよくあるバターンです。
課題文についてのYesNoを答えるのではありません。
間違えないでください。
対策や改善法について論じるのです。
環境問題の1つとして二酸化炭素を軽減をするためにはどのようにしたらいいですか、対策を示しなさい。
毎年出題されるよくある問題のパターンです。
基本的にあなたなら何をするのかという問いです。
毎日実際にやっていることがあるなら、そこから書き出してください。
この場合、具体的に書けるのでかなり楽です。
ただしいい気になって字数を無駄に使わないこと。
自分がよく知っていることを書く時には、特に注意が必要です。
そしてその対策がなぜ望ましいのかを一般論としてまとめること。
さらに実行するための方法論があれば、それもなるべく広く深く書くことです。
いずれにしてもそれを行うことに関する正当な理由が必要です。
課題文と必ずしも合致しない理由を示してもかまいません。
その時はなぜかという理由をきちんとさせることです。
採点者は内容の是非を細かく見ようとしているのではありません。
その考えを説明する時の方法を読み取ろうとしているのです。
そこに十分な論理性があれば、それでいいのです。
もちろん、突飛な理屈などを持ち出したのでは、なんにもなりません。
あくまでも誰もが納得するだけの理論です。
それが先程示した「覚悟」ということです。
境界線ギリギリを歩くことは許されますが、それを踏み外したら、そこで終わりです。
問の形式がすべて
代表的なパターンを2つあげました。
この他にも文章中から、最も当てはまる部分を抜き出して解説せよなどいう設問もあります。
こういう問題は国語力を同時に見抜こうとするタイプのものです。
じっくりと読めば、間違えるということはありません。
その際にはやはりキーワードを探すことです。
何度も文中で使われている言葉は筆者が大切にしているものです。
そこに何かの意味を持たせようとしているのです。
絶対に見逃すことがあってはなりません。
あるいは例としてあげられるものを文中から探しなさいなどという問題もあります。
いずれにしても、迷うことなく文書を熟読してください。
数度読めばどこに筆者の言いたいことがあるのかが次第にわかってきます。
その部分を外さずに進めば、合格は間違いありません。
途中まで書いて、なんとなくおかしいなと思う時は、論理の整合性に無理がある時です。
直感が働くはずです。
最初の書き出しに戻った方がいいでしょう。
時間がない時は、そのまま進むしかありませんから、途中で文の方向をかえます。
最悪の場合、理由のいくつかを削らなければならなくなるかもしれません。
なるべくそんなことにならないように、練習を積むことです。
細心の注意をしながら文章を書いてください。
一線を踏み外さないギリギリのところで留まるという寸止めの方法を身体で覚えることです。
それが覚悟に他なりません。
本番で何度も書き直しはできないのです。
最初にメモを取りながら、最後の結論はこれだと決めたら、そこまで突っ走ることです。
立ち止まってはいけません。
簡単にできるうまい方法などありません。
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つらくても自分の足で歩いて乗り越えていくのです。
この経験は社会に出てから、大きな財産になります。
最後まで諦めることなく、歩き続けてください。
今回もお読みくださり、ありがとうございました。