試験直前
みなさん、こんにちは。
小論文添削歴20年の元都立高校国語科教師、すい喬です。
今回は試験直前ということで、何のテーマが今年の小論文試験に出るのかを考えたいと思います。
幸いなことにこのページの最後にリンクした3つの記事は大勢の読者数を獲得することができました。
みなさんのおかげです。
感謝しています。
まだの方は読んでみてください。
ただしこの記事は今年の夏頃に書いたものです。
あれから数ヶ月が経過して、世界、日本にもさまざまな出来事がありました。
今だからさらに書ける内容もあります。
小論文は試験問題担当になった先生方が最終的に課題候補を持ち寄り検討します。
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通常の入試と違って、それほどに長い準備期間を必要としません。
ですから問題の最終決定がかなり遅いのです。
その分、ここ数ヶ月の出来事にも目が届くという性格を持っています。
主要な出題パターンは次の3つです。
1 課題論述型、2 文章読解型、3 資料統合分析型。
1はテーマが提示され、そのテーマについて自分で設定をしていく必要があります。
ある意味自由度が高いのです。社会に対しての見識が求められます。
2は課題文が提示されるタイプのものです。
60%がこれにあたります。
要約が求められることもあります。
課題文の中からヒントを探す力がかなり必要です。
3は図や表から情報を読み取るものです。
最終的に1つのテーマで論述するというタイプの問題が多いです。
その他には英文のものや教科内容そのものが出題される試験があります。
こうしてみてみると、なんといっても主流は1と2です。
特に2のタイプの課題文型に力をいれておけば間違いはないでしょう。
過去問をみれば、受験校の出題パターンはわかります。
必ずチェックしてください。
何が出るのか
この半年の状況を見て、1番気になるのはなんといっても自然災害です。
あいつぐ台風の襲来により、農業を中心として日本の国土は甚大な被害を受けました。
河川の氾濫の影響が今も被災者の肩に重くのしかかっています。
自然災害の怖ろしさとその対策については喫緊の課題です。
日本は2011年の原発事故から10年近く、地域防災の問題と関わってきました。
この問題は単に河川や堤防の決壊防止、電力の確保といったインフラだけでなく、地域の行政の仕組みや非難誘導、防災学習のあり方など、さまざまな要素を孕んでいます。
また国と地方の行政単位の違いといったマクロ的な視野も必要です。
さらに隣人とのコミュニケ-ション、家庭内での減災措置、食料、水の確保といったより具体的な問題も抱えています。
2011年の原発事故と集中豪雨や地震への対応も都市と地方とでは違います。
超高層マンションの電力確保などといった問題は、地方では起こりにくいのです。
先人達の教えもある意味では重要な要素になります。
どのように避難すれば人的被害を最小限に抑えられるのかということも大切です。
いくつかアットランダムにとりあげてみましたが、災害と行政、人間と産業の問題は非常に幅の広い視野を必要とします。
それだけに多くの視点からの出題が可能です。
農業やインフラとの関係で問題を出すことも可能です。
物的、人的支援やボランティア活動のあり方まで含めると、日本人論としても扱えます。
台風による人々の記憶が強く残っているだけに、災害と人災の問題はいくつかの論点と絡めて出題される可能性が極めて高いのではないでしょうか。
また高齢化と少子化はいつもセットで語られます。
特に高齢化問題はグラフの読み取りと一緒に出題されることもあります。
なぜこのテーマが出やすいのかといえば、出題者の年齢と大きく関わっています。
50代~60代の先生方は、皆一様に親の介護の問題を抱えています。
毎日、その現実と向き合っています。
それだけに生々しいテーマなのです。
5人に1人が65歳以上という日本の現状は年金や医療、介護とからめなくてもそれだけで重大な問題です。
原因は明らかです。
出生率があまりにも低いからです。
その背景には女性の高学歴化があります。
働く女性の増加が出産年齢を押し上げました。
さらに若者が減り、それにつれて生産力が落ち、経済力、国力が落ちるという現実もあります。
老人福祉施設をいくら作っても足りず、家庭での介護も必要になっています。
そこへ2000万円の年金問題が現実を突きつけました。
人生100年時代といわれている今日、最低の文化的生活をするにはかなりの資産がなくてはなりません。
しかし次第に高齢者を支える働き手が減るばかりで、自助を要求されても老人達には収入の道がありません。
この問題は高齢者の孤立といった精神的な問題ともリンクします。
コミュニケーションをとることができない高齢者の生きがい問題とからめることもできます。
地域のつながりの中で生きていくにはどうしたらいいのかというテーマにもなります。
どのような側面からでも問題がつくれるという意味で、大きなポイントを持っています。
さらにいえば、労働力が不足することで外国人の受け入れのあり方をどうしたらいいのか。
介護や医療分野への外国人の参入はどうあるべきかという課題にも繋げられます。
大変に裾野が広いので、問題を出す側からいえば、いくらでも可能性のあるテーマということが言えます。
AI問題の切り口
今日、人工知能や情報化の問題を避けて通ることはできません。
必ず今年もあちこちの学校で出題されるでしょう。
以前はAIの出現によってもなくならない職業は何かを述べ、その理由について書かせる問題がありました。
消えてしまう職業がこれでもかというくらい列挙され、その理由を問うというパターンもあったのです。
今はその段階を超えてAIと環境をからめて出題されます。
たとえば地球温暖化に対してや、環境ホルモン、医療の分野に対しても何が可能なのかを連携して書かせる問題も増えてきました。
ただ怖れる対象としての人工知能ではなく、より人間の生活を快適、安全にするための方法論を模索するという方向にシフトしています。
自動車の自動制御運転なども高齢者ドライバーの問題とからめて出題されています。
基本は有限なエネルギーをどのようにして生態系の中にとりこんでいくのかというのがポイントです。
さらにいえば、インターネット全盛の時代において、個人情報の露出や人間相互のコミュニケーションのあり方なども出題される傾向にあります。
国境や社会体制を超えた手段としてのインターネットは、価値観の共有ということの難しさをあらためて露呈しています。
集団と個人の境目をどう明確にするのか。
あるいは集団の利益と個人の利益の境界がどこにあるのかというコンプライアンスに関わるテーマです。
匿名性を高く掲げてきたインターネットも、今ではビッグデータの活用により、大きく変化しています。
その背後で動いているのがまさにAIなのです。
そうした広い視点からこの問題を捉えないと、高く評価されないでしょう。
人間とAIが勝負するというのではなく、どのようにしたら共存していけるのか。
その方向を探るという考え方が大切です。
小論文のキーワード
入試小論文のテーマは大雑把にいうと、人文科学系、社会科学系、自然科学系に分かれます。
自分がどの学部を受けるかによって出題される内容が全く違います。
過去問を徹底的にチェックしてください。
社会科学系は格差、労働、文明、社会、法律、政治です。
自然科学系は医療、看護、福祉、自然、環境が中心です。
今回あげた幾つかのテーマは、いずれの系列にも関わるので大きな問題になりうると判断しました。
医療関係はそれだけで内容をまとめてあります。
後であわせて読んでみてください。
ここ数年、貧困、学力格差、非正規雇用、年金をからめて論じさせる問題も多く出てきています。
少し前は格差社会で全てすんだのですが、今ではその内容がさらに細分化されています。
1つ1つのテーマをじっくり勉強し、どのような角度から出題されても対応できるだけの学力を身につけてください。
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これらの知識を獲得するのは、そう簡単なことではありません。
しかし大学に入学後も必要になるものです。
書く力とともに、学び続けることをお勧めします。
残りわずかな試験までの日々です。
身体に気をつけて頑張ってください。
吉報をお待ちしています。
今回も最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。