入試科目は何か
こんにちは。
元都立高校国語科教師、すい喬です。
新しい入試制度がスタートするにあたって、巷ではいろいろな情報が飛び交っています。2020年度から始まる大学入学共通テスト。
どれが正しくて、どれが誤っているのか。
中学や高校もその内容にあわせて、授業の形式を変化させています。
特に私立の学校は、対応がすばやいようです。
どこがどのように変化するのか。
受験生は何に注意をしなければいけないのか。
そのあたりを探っていきたいと思います。
とにかく1年に1度しかない試験です。
2020年度以降は共通テストの成績と各大学独自試験の結果で合否が決まります。
国立大学が先行して試験制度を変えていく一方、私立大学も時代にあわせて、入試科目の変更を余儀なくされています。
受験生の多く集まる早稲田大学の政治経済、国際教養、スポーツ科学の3学部は全ての入試で共通テストを使います。
今までセンター入試に参加していなかった上智大学は、共通テストを利用します。
一般入試で共通テスト併用入試を実施し、共通テストの結果と大学独自の入試をあわせて合否を決めます。
一方、慶應義塾大学は共通テストも話題の外部英語試験の成績も、一般入試には利用しません。
これをみてもわかるように、私立大学の対応は大学、学部によってまちまちです。
きちんとした情報を正確に把握しないと、あとでとんでもない結果を招くことにもなります。
十分な用心が必要でしょう。
入試の名称変更
また2020年度の入試から試験の名称変更が行われます。
推薦入試は「学校推薦型選抜」に統一されます。
2023年までは試行で合否の対象にはなりませんが、外部試験である「数学検定」「漢字検定」なども基礎診断資料として、使われるようになる予定です。
従来のようにただ出願して入試問題を解く以外に、あらかじめ英検などの外部試験を受験する必要があります。
自分のランク評定を得ておかなければなりません。
これもかなり厄介な手続きといえます。
詳しくは別のサイト「大学入学共通テストは英語力の差を広げるという分析」に書きました。
お読みください。
さてこれ以外に高校生の時代にしなければならないことがあります。
それが主体性等評価(Japan e-Portfolio)と呼ばれるものです。
別名Jepと呼ばれます。
個人が自分のサイトに活動歴を打ち込んでいくのです。
従来ならば自己推薦書などにこうした経歴を書けば、それで足りました。
しかし.これからは諸活動を通して自分の感じたこと、気づいたこと、今後の方針などを書きます。
この作業は高校1年から3年まで継続して行われるのです。
ところでこのJepの使い方は現在のところ各大学に任されています。
ここが誠に複雑で厄介なところです。
早稲田、慶応、上智などの私立大学はこのJepのデータを使わないと言明しているのです。
つまり3年間の行動の記録を要求していません。
このように各大学で取り扱い方が全く違うため、実施にあたって高校生はかなり戸惑うものと思われます。
現実にかなりの高校でこの主体性等評価(Japan e-Portfolio)は行われつつあります。
2020年度の試験にかかるのは現在の高校2年生からです。
それ以前のいわゆる浪人生に対してどのような扱いをするのか。
決めなくてはならないことは現在も山積しています。
中学、高校の対応
学校側は新しい入試に対応しなければいけません。
新しい時代の新学習指導要領にのっとって教育しなければならないのです。
小学校では英語、プログラミング学習指導のために、教員の研修が行われています。
それと同様に中学、高校でも新たなメソッドが次々と導入されているのです。
その一つがアクティブラーニングです。
都立高校ではアクティブラーニング推進校も生まれています。
私立中学高校にとっては存続のための死活問題でもあります。
実際どのような授業をしているのでしょうか。
難しい言葉でいえば、インタラクティブラーニングです。
双方向授業。
今までのように教師が教壇にたって一方的に話す授業ではありません。
事前に下調べをしてきた内容を他の生徒の前でプレゼンテーションし、知識や技能などを互いに共有していくというものです。
これからの社会で必要となる人材を育てるための教育と考えればいいのではないでしょうか。
特にコミュニケーション能力、主体的な知の獲得などに重点を置いています。
そのために特に必須なのがICT教育です。
iPadなどのタブレット型コンピュータを生徒にもたせ、スクリーンと同時に生徒1人1人が書き込み、それに応えるという作業をさせます。
あるいはスカイプなどのプログラムを利用し、英語で外国人と双方向の会話練習をするなどということも考えられます。
いわゆるオンライン英会話の授業は、すでに中学校から実施されています。
その他、GTECなどの民間試験、東京版英語村(Tokyo Global Gateway )の利用なども図られています。
さらに国語教育では書く力を強く要求されるため、国語表現の授業に重点が置かれているようです。
自分史探求(親からの聞き取り)、志望理由書作成、読書テスト、講演会の内容要約、討論などがそれにあたります。
特に何をどのように書けば、相手に効果的に文章の真意が届くのかということを徹底的に教える必要性がますます増しています。
入学共通テストの国語の参考問題を見てみれば、そのことがはっきりとわかります。
今までに出題されたこともないように、駐車場賃貸に関する契約書などが国語の問題として出されています。
それにたいして、80~120字程度の文章を解答として書きます。
今まで文学や評論だけを学習してきた生徒にとって、まったく初めての経験であろうと思われます。
さらに「景観保護に関するガイドラインの親子の会話」から、何がポイントなのかをまとめるという例題もありました。
国語力の重要性
従来の概念ではとても解答不能だと思われます。
複雑化する現代の中で、国語力の持つ重要性が増しています。
というのも2024年度からの共通テストでは国語、数学(2020年度は実施中止)の他に、地歴、公民、理科でも記述式問題を導入することが決まっています。
今までの暗記中心だった学力観が大きく変化しています。
とはいえ、私立大学はその態度を保留しているところも多いのです。
かつてセンター入試が始まった頃、私立大学はほとんど参加しませんでした。
ところが受験生の減少に悩み始めてから、参加する大学が尻上がりに増えていきました。
今後どのように新テストが進んでいくのかは予断を許しません。
本当の実力を備えていれば、怖れるに足りないのは言うまでもありません。
しかし情報が錯綜している現在、高校2年生を筆頭に神経を使うことに間違いはないのです。
新共通テストに関わる報道は今後ますます増えていくものと思われます。
十分に注意して、自分の将来を決めてください。
ここ数年、都内の私立大学に対して、定員オーバーを認めないという行政の縛りが厳しくなりました。
そのため、かなり難易度が上がっているということです。
さらにそれにかぶせて、新テストを受けずに大学に入るため、私立大学付属高校への入学を希望する生徒もかなりいます。
いろいろな思惑が交錯する時期を迎えました。
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常に冷静な目で、自分の将来をみつめつつ、新テストの変更点を確認する作業を続けてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。