つまをめとらば 青山文平 文藝春秋 2016年1月





今期の直木賞受賞作です。昨今あまり時代小説を読まなくなりました。というより、小説そのものから遠ざかっている気がします。自分の周囲の出来事の方が、よほど小説よりも小説的だからかもしれません。
それと同時に落語の題材を探したいという目もあります。「文七元結」のようなテーマが、そうあちこちに落ちているとも思えませんけれど、あればあったで、実に愉快です。
さてこの短編集にはさまざまな味わいがあります。キーワードは武士と女です。かつての武士たちの日常生活をそれとなく描きながら、立身出世もままならぬ世の中と現代とを比較しています。
時代は江戸でありながら、まさに今の話としても読むことができます。そこが斬新な感覚の所以でしょうか。
もう一つは、登場する女たちです。元々、男にとって女は不可思議な存在です。謎に満ちているといっても過言ではないでしょう。
その横顔にスポットをあて、どんな境遇におかれても、実にしたたかに生きていく彼らの姿を描き出しています。
作中で、一番感心したのが「乳付」「逢対」の2作品でした。どちらもほのぼのとしていて、それでいて切っ先は鋭いのです。
人間の優しさと厳しさに触れた思いがしました。
いい小説には、必ず人間がいる。
まさにその通りだろうと確信します。
これからの活躍に期待したいです。