白酒ひとり壺中の天、再々読





久しぶりに桃月庵白酒の「宿屋の仇討ち」を生で聞きました。
面白かったです。
オノマトペの自在な使い方や、時事的な感性の鋭さ、時代背景の分析。
どれをとっても、この人の感度は他の追随を許さないように思います。

ぼく自身もこの噺を何度か高座にかけていますが、その難しさを感じています。
権太楼の形で覚えましたが、転機にさしかかっていると自分でも思います。

彼が3年前に出した『白酒ひとり壺中の天』は今までに2度読みました。
しかし今度3度目に手にして、新しいことが次々とみえ、勉強にもなりました。

特に後半にまとめられた古今亭の噺についての解説はすごく興味深かったです。
自分で噺をする人にとっては宝庫そのものです。

それと同時に彼が二つ目になって、しばらく停滞していた時、雲助や志ん朝がしてくれたアドバイスなどが紹介されています。含蓄深いものです。
どんな人も苦しいところを乗りこえなくてはならないのだな、と感じました。

たとえば志ん朝のこんな話。

本当に面白いと思ってやってるの。面白さがお客様に伝わるような努力をしないとカネは稼げないし、カネを稼げないんだったらプロでやる必要はないんじゃないか。だったら素人で好きにやっていればいい。面白いものをどうお客様に伝えればいいか。今のやり方はたぶん届いていないと思うぞ。

また落語協会のある事務員の方からのアドバイス。

そろそろ雲助師匠から離れませんか。ただ寄席に出られればいいといっているだけではダメです。それではいつまでたっても世に出られませんよ。雲助師匠が死なないとね。

師匠は二人いらない。それ以来、彼は雲助から意識して遠ざかるようにしたそうです。
間の取り方を覚えるというのは、理屈ではありません。
噺を重ねていくなかで、一つ一つ身体で知っていくものです。
そうした意味で、この本は彼の本音にあふれています。
ぼくにとってのバイブルになりそうな予感がします。