暴露 グレーン・グリーンウォルド 新潮社 2014年5月





 第1章と2章は大変に読み応えがあります。完全に一冊のスリリングな小説です。
著者は市民権擁護の立場にたつ弁護士です。エドワード・スノーデンについてはかなりの人が多くのことを知っているに違いありません。しかしマスコミの報道の仕方と、本書とを読み比べると、その差に驚くと思われます。
パソコンおたくのはねっかえりともとれる書き方をされたスノーデン青年と、この本の中に出てくる彼とは明らかに別人です。
最初の連絡が著者である弁護士のところにきたのは、2012年12月のことでした。差出人の名前も聞いたことのないもので、PGBと呼ばれるEメールからのハッキングを防ぐ方法を使用してくれれば、さらに詳しい内容のメールを送るというものでした。
もちろん、彼は忙しく、そのメールを無視したのです。しかしその送信者からのメールはその後も何通か続きました。それは暗号化ソフトをすぐに使って欲しい、そのための方法をすべて教えるという内容のものでした。しかしこれもまた弁護士は無視してしまいます。
その後、この弁護士が動かないとみるや、機械音声生成ソフトでつくられたビデオで、10分間のインストールのためのマニュアルを送りつけてきました。それも彼は無視します。
やがて数ヶ月が過ぎてしまいました。
そこに登場するのがドキュメンタリー映画作家のローラという女性です。ローラは匿名の人物で本気と思える男から数通のメールを受け取ったという事実を弁護士に告げるのです。
その時も盗聴を怖れ、携帯電話はバッテリーを抜くよう指示します。バッテリーが抜けなかった弁護士は部屋に戻り、ベッドの上に置いてから所定のレストランへ赴きます。
この頃から携帯はいつでも盗聴器になる可能性を持ち始めていました。
2人のところに届いたメールが実はどちらもスノーデンからのものだと気づいたのはずっと後のことです。
職業的な勘に頼るまでもなく、ローラにとってはこのメールが本物であると断定できたのです。一方、アメリカ合衆国の持つ秘密主義を告発してきた弁護士にとって、あらゆる通信手段が傍受されているという事実は衝撃的なものでした。
送信者は香港にいました。来てほしいというのです。
二人はついに香港へ立ちます。
インターネットの回線はすべて国家安全保障局によって集約され、膨大なデータが次々と記憶媒体にインプットされている事実が、スノーデンから知らされます。彼の手に入れたデータには、その真相がまぎれもなく書き込まれていました。
彼は国家が秘匿している情報を得るため、CIAの工作員になりました。さらにブーズ・アレン・ハミルトン社というアメリカ最大手の防衛分野民間企業にももぐりこみます。
簡単には入り込めない上に、高度なパスワードを駆使して、国家機密をどう持ち出したのかという点も、大いに興味をそそるところです。
あとはその事実をどういう手段で人々に知らせるかでした。
弁護士とローラは「ガーディアン」紙に目をつけます。
しかし政府の干渉を怖れる編集局首脳は、最初ためらいをみせます。それをなんとか発表にまでこぎつけさせるまでのドラマは、こんなことが本当にあるのかという驚きの展開に満ちています。
やがて次々と文書が公開され、世界中が蜂の巣をつついたようになりました。
グーグルもフェイスブックもマイクロソフトも、あらゆる大手企業が情報を政府に渡していたという事実も驚きとともに迎えられました。
そして最後にスノーデン自身が登場します。
しかし彼の履歴を知った人々の反応は、それまでの好意的なものではありませんでした。そこから次の展開が再び始まります。
アメリカはパスポートを無効にし、彼は現在ロシアに在留しているそうです。これからどのような人生を過ごすのか。名乗り出たら、その後はもう生きる場所はないに違いないと覚悟を決めての行動でした。
後半には彼の暴露した書類の実際が掲載されています。
飛行機の中で発信されたメールまで、国家によってすべて読まれていると事実は何を物語るのでしょうか。
衝撃的な本です。
電子媒体のみならず、あらゆる通信が傍受されている現代の暗闇を覗きこんだ気がします。世界は想像以上に怖ろしい現実と向き合っています。