難民高校生 仁藤夢乃 英治出版 2013年3月





 著者のことはテレビの番組で知りました。渋谷の街を歩いては、目にとまる高校生と話をし、彼女たちの悩みを親身になって聞くという活動をしている人です。
彼女自身もかつては渋谷ギャルでした。高校を2年で中退し、毎日渋谷の街をうろついて、友達の家を泊まり歩く暮らしをしていました。両親との関係もうまくいかず、誰も信じられない状態がずっと続きます。
当然のことながら、似たような友人が次々とあらわれ、彼女たちはやがて自分の身をすり減らしていきます。
大人たちが一見優しそうな風を装い、彼女たちに近づきます。少しでも割のいいアルバイトを探すために、あっという間に風俗店で働くようになります。ここにはその頃知り合った友達のことが何人も出てきます。DVを繰り返す男たちの前で、彼女たちはあまりにも無力です。そして、何度も謝る彼らを再び許してしまいます。
彼女たちの心の奥には何があるのでしょう。リストカットをし、泣き、それでも男たちについていくには余程の理由があると思われます。スマホを一時も手放せない暮らし。しかし友達には本当のことを話せません。寂しさやつらさの中で死ぬことを考えます。自分が生きていることの意味を見いだせないのです。
著者も死への誘惑の中、男たちに引き寄せられることもなく、大学検定を受検します。そのために通った河合塾の特別講師が結果的に彼女を救ってくれました。
農業体験をしながら、はじめて土と向かい合い、それまで夕方まで寝ていた生活を逆転させていきます。
はじめて自分の言葉を最後まできちんと受け止めてくれる大人に出会った瞬間でした。それ以降は次第に心も落ち着き、やがて大学受験も視野に入ります。AO入試で合格し、最初の年には成績優秀賞まで受賞するという結果も得ました。
そのために書いた入学志願書も掲載されています。それまで1行の文章しか書けなかった彼女の成長ぶりが見事に示されています。
入学後、フィリピンに初めて赴き、NGOの現地活動にも精力的に参加しました。そうしている間に、かつて自分が渋谷の街を歩き回っていたという現実を思い出し、活動の中心をいわゆる難民高校生との対話に据えました。
それ以後の活動は東日本震災直後、現地高校生と一緒になって支援金を得るための餅菓子の製造など、多岐にわたっています。
現在も夜になると、渋谷を歩き、彼らに語りかけ続ける活動を続けています。彼女にとって最初の本だけに、生々しい現実がありのまま描かれています。
最近、光文社新書で、秋葉原での女子高校生の実態をルポした本も上梓されました。『女子高生の裏社会 「関係性の貧困」に生きる少女たち』がそのタイトルです。
あわせて読むと、彼女の思い描いていることの一端が理解できると思います。一読を勧めます。