大事なことはすべて…





立川談志の18番目の弟子、立川談慶の本です。
どうして立川流の人はこんなに本を書きたがるのか。誠に不思議です。
慶應義塾大学経済学部を卒業後、下着大手メーカー「ワコール」に入社しました。
本当に転身する必要があったのかどうか。
ワコールにいたのはたった3年だそうです。勿体ない話です。

師匠がつけた名前が立川ワコール。これもいい加減といえば、かなりいいかげん。
でも落語の世界なんてそんなもんでしょ。
この高座名にワコール本社からクレームがつかなかったのは、当時の社長が面白くていいんじゃないのと言ったからだとか。

談志師の名台詞はこれです。
「要するに俺を快適にすればいい」

しかしこれを実行するのがいかに難しいかは、後にいやというほど体感するところとなるのです。
見習いから前座になるまで1年2カ月。まさかこれから9年半も前座修行が続くとは夢にも思わなかったに違いありません。

最大のしくじり。
冷蔵庫事件。

師匠が海外に旅行している間に冷蔵庫の霜取りを敢行。ドライヤーを使ってやりきったところまでは完璧でしたが、ついコンセントを入れ忘れてしまったのです。
「師匠の宝物」である高級食材を全部腐らせてしまいました。
帰国後の談志師からはファクスが1枚。
「現状を回復しろ」

もともと入ってもいなかった伊勢エビまで追加され、この時はさすがに破門を覚悟したとか。
立川流の前座はほとんどが築地で修行をしていたこともあって、あちこちの問屋さんに声をかけ、とにかく食材を掻き集めて事なきを得たそうな。

これまでの談志本より、はるかに師匠のやわらかなところに触れています。それがこの本の救いです。
錯覚かもしれませんけど、談志がいい人に見えてきます。

二つ目になってからは、あっという間の真打でした。その時も談春が裏に回って尽力してくれました。
このあたりの一門の絆の深さは読んでいていい味わいです。
しかしどうも師匠がそうなるようにお膳立てしていた風もあり、ここいらは藪の中といったところかな。
気持ちのいい本です。
文章もうまい。
読後感がとても爽やかでした。

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