席亭志願





10月の末に出版されたばかりの本です。
一言でいって面白かった。
今までは芸人ばかりの本を読んでいましたが、これはその裏側で活躍している人たちにスポットをあてた本です。
著者の名前がふざけてます。
オチダワラエとはこれいかに。
少し調べました。
そうしたら、夕刊紙の記者M氏だということが判明。
本名じゃ書けない内容なんでしょう。

狭い落語の世界のことです。
あっちで言った一言が、翌日には寄席雀の口の端にのぼるということになります。
さて登場人物は、オフィスエムズの代表、加藤浩さん。
この人の横顔を徹底的に取材しています。
どういう契機で、プロデュース側にまわることになったのか。
今、どういう気持ちで落語会を開催しているのか。

どうやったら少ないパイの客をとりあわずに共存できるのか。
彼にいわせると、本当のコアになる落語ファンは1000人なんだそうです。
それを互いの会で食い合っている。
その周囲、衛星圏にはいくらかのファンがいるが、権太楼、市馬、さん喬では顔を出すが、桃太郎では来ない。
しかし彼に言わせると、中トロばかりでは口が飽きる。そこに稲荷寿司もなくちゃいけない。

一之輔の信頼も厚いそうです。今回の襲名披露の落語会は全て彼がしきったとか。
市馬も加藤さんのためならと馳せ参じてくれるそうです。三三とも白酒とも信頼関係ができています。
権太楼には運営の細かいノウハウを教えてもらい、随分と世話になったということです。

とにかく場所、値段、どんな時でも必要以上に儲けようとはしないこと。
ギャラはその場で現金で噺家に渡す。
日曜日の夜は絶対に落語会をやらない。
打ち上げは基本的にやらない。
楽屋には入らない。
噺家とは一線を画す。
次の時代を築く落語家をつねに自分の目で探す。そのために早朝寄席をのぞく。
NHK新人落語コンクールの予選会を見る。
二つ目のための研精会を定期的に開く。

いい落語会はビラを見ただけですぐにわかると彼は言います。
そこに作り手の気持ちがこもっているからだとか。
それだけに当然厳しい目も持っている。
どんなに人気がある噺家でも、彼が納得しなければ、落語会を開くことはない。
300席の落語会でも5000枚のチラシを配る。
その積み重ねが、今の加藤さんを作り出したのではないでしょうか。

試みにオフィスエムズのHPを開いてみてください。
よくこれだけの落語会を同時にやれるものだと感心します。
切符はすぐに普通郵便で送ります。
料金は後から銀行振り込みで。
相手を信用しなければできない仕事のやり方です。
落語命という人の生き様に心地よささえ感じました。

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