後世への最大遺物 内村鑑三 岩波書店 1984年2月





 この本は今までに何度か読み直しています。一番最初に知ったのは、森敦の講演の中ででした。そこで森は、人間は生きている間に何をし、死後に何を残せるのかということを、この本を例に出して語りました。
森の結論は文章を書けということだったと記憶しています。
その後、内村のこの著作に触れ、文章を書くということも確かに勧めてはいますが、それ以外にも別の視点があるということを知りました。
人間は何を後世に残せるのか。これは大変に真摯で難しい問題です。人の一生はうたかたのようでもあり、夢にも似ています。その中で、金を貯める人もいるでしょう。あるいは事業を興す人もいるかもしれません。また教育者や作家になる人もいる。
しかし誰もがそのような行動をとれるわけではありません。大多数の人は何をしたということなしに、来世へ旅立ってしまうのです。そうした無名の人々にでは何が可能か、何が残せるのかということを実に丁寧に語っているのが、この本なのです。
結論は自身で読んでみてください。けっして難しいことではありません。誰もができることです。それを真面目に望むならという条件はつきますが。キリスト者として、神のことなどにも触れてはいますが、時々ジョークを飛ばしながら、会場の笑いをとるその話し方には、親しみさえ覚えます。
是非、一読を勧めます。内村鑑三の横顔が見てとれるに違いありません。