赤いクリップで家を手に入れた男 カイル・マクドナルド 河出書房 2009年1月





 面白い話です。日本でもテレビ番組で紹介されたそうです。アメリカ版わらしべ長者というところでしょうか。
2005年、一つの赤いクリップを何かと交換してほしいと物々交換のサイトに応募したところから、この話は始まります。ビガーアンドベターというのがその基本的な発想です。
少しでも自分のもっているものより、すばらしいものと交換していくことで、最後はどうなるか。完全なゲームです。
しかしこれが小規模な一時しのぎの遊びで終わらなかったのは、多分にこの作者の人柄によったのかもしれません。それと最大の武器はインターネットとメールです。これがなかったら、大きな輪にはならなかったでしょう。
さらにはマスコミの存在。テレビ、ラジオ、新聞のメディアがこぞってこのゲームのあらましを伝えました。それがさらに騒ぎを助長したことは言うまでもありません。
一つの赤いクリップが魚のペンに、さらにドアノブ、キャンプ用コンロ、発電機、即席パーティセット、スノーモービル、レコーディング契約、映画の出場権、キプリングの一軒家と次々変貌をとげていくのです。最後のパーティのシーンも圧巻です。
この本には間に、筆者のちょっとした感想、あるいは一家言のようなものが挟み込んであります。
たとえば、好きなものがすぐに手に入る訳はないとか、自分が行動しなければ、なにも起こらないとか、今は前よりも絶対に良くなっているなどという言葉です。
普段なら何気なく読み飛ばすこうした言葉の断片も、事実のあとに読まされると、なるほどとつい納得してしまいます。
前へ進みながら、ある種の自分探しをしていったと考えればいいのかもしれません。
不思議な読後感の本です。
事実は小説より奇なりとはまさにこの本の内容をさしているのではないでしょうか。