差別と日本人 野中広務 辛淑玉 角川書店 2009年12月





 野中広務の本はかなり以前、この欄でもとりあげたことがあります。2004年刊の本『差別と権力』(魚住昭著)がそれです。
彼の出自については、あちこちに書かれています。部落出身者でありながら、衆議院議員にまでのぼりつめ、自民党幹事長として辣腕をふるいました。
その彼のもっとも内奥にせまったのが、このノンフィクションです。実に重い内容の本でした。
さて今回のものはそれとは様相を異にしています。評論家辛淑玉との対談ということもあり、日本人の心の深層にある差別意識をごく皮膚感覚に近いところでまとめたものといってもいいでしょう。
この本は昨年ベストセラーになりました。
内容は特に彼が部落出身であったことにからんで、同和問題にまつわる利権をどのようにして、彼自身が一つづつつぶしていったのかという内幕話から始まります。
差別された者たちはそれを逆に利用して、したたかに生き抜こうとする構図もここには垣間見られます。
また日本においてはいつも問題になる在日朝鮮人問題も語られます。この二つがこの本の核でしょうか。その他にハンセン病患者についての差別問題にも言及しています。
今まで知らなかったことがたくさんあり、差別の構造の根深さを感じました。それぞれが大きく取り上げられず、むしろ心の内部の問題として存在するだけに、解決は非常に厄介だというのが率直な感想です。
さらにずっと差別問題を声高に語ってきたことにより、野中さん自身やその家族が今どういう状態にあり、どんな心境にいるのかということも最後に語られます。この部分は完全に本音と呼べるのではないでしょうか。
かつて井上光晴の『地の群れ』を読んだ時のことを思い出してしまいました。差別は繰り返されます。そんなに簡単に拭い去れるものではありません。だからこそ、克服していかなければならない課題でもあります。そのことをあらためて強く感じました。