新参者 東野圭吾 講談社 2009年10月





人気作家の最新作です。オムニバス小説といったらいいのでしょうか。殺人事件にからむ周辺の人々のアリバイを調べながら、実はそこにあたりまえの日常があることを垣間見せてくれます。
文章はなかなか味わいがあります。
主人公は着任したばかりの刑事・加賀恭一郎です。しかもう一方の主役はなんといっても日本橋界隈。甘酒横町の名前が残る路地といった方がいいかもしれません。
おそらく筆者は何度もこのあたりを訪ねてまわったに違いありません。それだけのリアリティーを感じさせます。昔からの江戸情緒がこの作品の味わいを深くしています。
この町の一角で発見された、ひとり暮らしの四十代女性の絞殺死体を中心に話は展開していきます。彼女の身に何が起きていたのか。
ストーリーの展開に特別なしかけはありません。
この作家の本は『容疑者Xの献身』に続いて2冊目でした。読後感はしかし全く違います。
とにかく一度、この界隈を歩きたくなったというのが今の率直な感想です。それこそがこの本を読んだ最大の収穫だと言えるのではないでしょうか。