作曲家・竹満徹との日々を語る 竹満浅香 小学館 2006年3月





竹満徹全集の別巻として上梓されたインタビュー集です。彼にとって最良の理解者であった伴侶竹満浅香さんの目を通した作曲家の素顔が実にいきいきと描かれています。
20時間以上に及ぶ話の中で、ことに作曲家竹満の意外に普通な側面が淡々と語られます。
彼のあの壮大な曲からは想像もできないほど、ごく普通の穏やかな人であったというのが今の感想です。
昭和21年にはじめてあった時から、平成8年、66才で彼が亡くなるまでの軌跡をありのままに描写しています。とにかく音楽を作り出しているときが一番幸福な時であったということです。
映画が大好きでした。暇さえあれば、映画館に足を伸ばしていたようです。後には代表的な劇伴と普通呼ばれる挿入曲もたくさん作曲しました。『砂の女』などは彼の代表作といってもいいのではないでしょうか。主人公、岸田今日子の表情がはっきりと思い出されます。
小澤征爾とはじめてあい、意気投合した時の様子なども興味深いものです。またピアノをもっていなかった彼に黛敏郎が高価なグランドピアノをプレゼントした逸話なども心あたたまるものです。
芥川也寸志がたまたますごい才能を持っている作曲家がいるけど、貧乏していてピアノも持っていないという話をした直後、ぼくの映画の仕事を手伝ってくださいといいながら、彼にピアノをくれたとか。
1991年にサントリー音楽賞をもらった時、受賞のスピーチでその話をした時、彼は泣き出して声が出なくなってしまったそうです。
竹満徹は本当に多くのすぐれた人々に支えられてきたというのが、偽らざる実感です。滝口修造や、谷川俊太郎など、言葉を大切にする人々との出会いも大きなものでした。
弦楽のためのレクィエム、ノベンヴェンバー・ステップスなど今日でも、日本人作曲家として最も多く演奏されているのが、彼の曲です。琵琶や尺八などを巧みに取り入れ、全く新しい音の世界をつくりました。
御代田の山荘にいる時が一番落ち着くらしく、どこへ旅行してもすぐ、家に戻りたがったといいます。
このシリーズにはもう一冊『谷川俊太郎が聞く竹満徹の素顔』というインタビュー集があります。彼が長い間つきあってきた小澤征爾や高橋悠治、坂本龍一、湯浅譲二、宇佐美圭司、さらには娘の竹満眞樹などとの対談が所収されています。
あわせて読むと、彼の横顔がなおくっきりとみえてきます。
生前一度だけ、新宿の中村屋のサロンでみかけたことがあります。細い神経質そうな横顔だけが今も記憶に残っています。