ハゲタカ 真山仁 講談社 2007年3月





 企業再生や買収を行う投資ファンドを舞台にした物語です。NHKで土曜ドラマとして放送されました。近々、再放送の予定もあるとか。登場人物の設定などは似ている部分もあるそうですが、原作とは違い、かなり脚色してあるようです。
さて登場するのはいくつかのファンドのメンバー、さらには不良債権処理にあけくれる大手銀行、買収先の会社役員たちだけです。ここには実際、額に汗して働く労働者は出てきません。
登場人物達はみなある意味で金銭に踊らされ、そして悲喜劇を生み出す人たちばかりです。
実際にこのようなことがバブル崩壊後の日本で起きていたと知るだけで、この本を読む価値があるのではないでしょうか。
貸し渋り、貸し剥がし、さらにはゴールデンパラシュートなどという聞きなれない表現が次々と出てきます。ラストウォッチというある意味で卑怯な手段を使う競争入札の実態もよくわかります。
少しでも条件を有利にするために、相手の会社の情報を血眼になって探るのです。わずかな弱点を見つけたら、そこをたたいて、安く買い取るというのが彼らの方法です。
大銀行は自分たちが作った不良債権を十把一絡げにして、安く叩き売ります。その債権がその後どうなるかなどということは、全く考慮されることはありません。バルクセールと呼ばれるこうした叩き売りの現場の様子が、劇画のようにして描かれていきます。
主筋はいくつかありますが、日光を中心としたホテルの買収劇、さらには太陽製菓という同族企業を舞台にした攻防です。
会社を私物化してきた一族の末路が、これでもかと描写されます。その中で、唯一反旗をあげ、ファンドと戦うのが日光の老舗ホテルの娘、松平貴子です。彼女の戦いを脇でサポートするのがかつて大銀行の資産流動化開発室長だった芝野です。
自分が銀行業務を熱心に行う陰で、どれほどの人々が苦しんだのかということを、次第に実感し、限界を感じて退職します。やがて友人のスーパーを任され、業績回復に辣腕をふるう社長にもなります。   この他、隠し口座を多数かかえる大手銀行常務の生き様も面白いところです。
主人公鷲津政彦の生き様は、つい先頃逮捕された日本の多くの投資家に似ています。金を儲けて何が悪いという姿勢が最後にどのような結果になっていったのかは、是非自分で読み味わってください。
こうしたことが日債銀、長銀、北海道拓銀、山一証券などの破綻の最前線で行われ、さらに大手銀行の離合集散を招いたということを考えるだけで、なにか空恐ろしいものを感じます。
これがバブル処理という名目の実態なのでしょう。経済というものの非情さと怖ろしさをしみじみと肌で味わいました。