怪談牡丹灯籠 三遊亭円朝 岩波書店 2002年5月





 円朝の怪談話を続けて読みました。この間に、六代目三遊亭円生の怪談に一通り目を通しました。全て絶版になっており、なかなか手に入りません。原作とどの程度異なるのかという点に着目しながら、読んだというわけです。
さて原作は実によく書けております。ぼく自身の印象から言えば、累ヶ淵よりも牡丹灯籠の方が、内容的には面白いという印象を持ちました。芝居にもなっています。とくに伴蔵とおみねが萩原新三郞のところへやってくる幽霊のために、お札をはがし、海音如来を盗み出す、いわゆるお札はがしの一節が出色です。
またその後、栗橋宿へ逃げ、大きな雑貨屋を営む伴蔵に心の隙が生まれ、やがておみねを殺す場面もなかなかよく書けています。
後半は再び、忠義の家来による仇討ちとなり、これは現代にはなかなか難しいところです。
明治時代ならば大いに喜ばれたでしょうか、今日では演じられることも滅多にありません。それでも読んでいると、なんとか仇を討たせてやりたいという気持ちになりますから、やはり並々の筆力ではないのでしょう。
この話には人間の欲というものが実に見事に描かれています。やっと生活の基盤ができた伴蔵がふっと浮気心を持つところから、話が急展開していくのです。
さらにはわきを固める人物描写が見事で、新幡随院の良石和尚や、手相見の白翁堂勇斎、さらには怪しい医者、山本志丈など、ユニークな人物造形が面白みを付け加えています。
円生の落語を聞いていると、本当に話の一番面白いところだけをうまく掬い取って構成しているということがよくわかります。
現在文庫本で読めるのは、円朝の原作だけですが、円生の速記も是非入手したいところです。絶版にしてしまったというのも残念でなりません。古書店を少し回ってみたいと考えています。
この一月でいったい何冊の怪談話を読んだことでしょう。実に心躍る楽しい時間でした。