10年後の「結婚しないかも症候群」 谷村志穂 草思社 2003年7月





 何気なく手にとって読み始めました。かつて女性に特有の結婚、出産、その後の人生などを追いかけたルポを続けて読んだ時期がありました。松原惇子の『クロワッサン症候群』とか、『女たちの住宅事情』などです。
バブルの前後から結婚をしないということを声高に口にする人が増えました。三高などという結婚条件もまことしやかに論じられました。あの頃、一生独身であることを標榜し、マンションを買う人も増えました。あれから10年。今から5年ほど前にスポットライトをあてたのが本書です。
かつて生涯独身を貫くと呟いた女性達はその後どう変わったのでしょうか。著者は一人づつにアポをとり会いに出かけます。すると彼らの10年はまさに波瀾万丈と呼ぶにふさわしいものでした。結婚、離婚を何度も繰り返した人もいれば、会社の資金に手をつけて解雇されたものもいたのです。
マンションを買った人たちも、その後の価格下落と同時に手放し、今はアパートに暮らしている人もいます。夫のDVに苦しんでいる人や、偶然生まれた子供を母を中心とした家族全員で育てているという人まで、それは千差万別です。
何でも手に入るというのも幻想ですし、どんな生き方も選べるというのも幻想だったのかもしれないのです。時代は複雑で、価値観はあまりにも多様です。
ここには不妊症手術に挑んでいる産婦人科医も登場します。彼らの人生観も紹介されています。
さらに筆者はニューヨークに飛び、愛は4年で終わると主張する人類学者、ヘレン・フィッシャー博士にもインタビューを試みました。
彼女はつまらないことに執着してはだめだと即座に述べます。さらに鬱状態をコントロールする薬を飲み、ジムへ通い、友達に会い、スカイダイビングをしろと勧めます。教会へいくことも一つの方法だし、とにかく泥沼にはまらないためにはなんでも可能な行動をとることだと説きます。自殺をしないためにはあらゆるアクションをおこさなければ、有効ではないというのです。
かつて三高の条件を提示してきた女性達が、今明らかに変わっています。むしろ年は下でもいいし、収入が少なくてもいい、それよりも自分や子供との時間を大切にしてくれる人の方がという方向へシフトしつつあるかのようです。
結婚が女性にとって大きな転機になるのはいうまでもありません。子供を持つことの意味も考えなくてはなりません。
生きにくい時代になったのでしょうか。それとも自然体で生きられる時代になったのでしょうか。この本を大変新鮮な気持ちで読み終わったことは事実です。