司馬遼太郎全講演 司馬遼太郎 朝日新聞社 2004年9月





やっと全5冊を読み終わりました。毎朝の通勤時間に読むのが楽しみでした。なんといってもその魅力は彼の博識につきます。さらにはそれぞれの郷土に対する深い敬意の念、さらにはたくまざるユーモアでしょうか。
この講演集は彼が生涯に行ったものの全てだということです。もちろん幕末に関するものもありますが、それ以上に多いのが宗教に関するものです。人間はどうやって心の安寧を得てきたのかということに関して並々でない関心をもっていたことが、とてもよくわかります。
親鸞や法然のといた空という発想の中に全てがあるという講演はすばらしいものです。特に『歎異抄』に対する思い入れを強く感じました。
さらには医学に関する講演です。彼は日本で最初に解剖をしたといわれている山脇東洋や、シーボルト、ポンペさらには『胡蝶の夢』に描かれた松本良順などについて詳しく語っています。
日本人は医学というものをどのように捉え発展させてきたのかを知るには大変いい講演がたくさんあります。大阪適塾の果たした役割なども実によくわかりました。
さらには彼にとって最も親しい場所であったモンゴルについての話もたくさんあります。遊牧という考えがどのようにして生まれたのかという話も面白いです。
しかし最もユニークだったのは、日本の戦争がどのように引き起こされてきたのかという話です。日露戦争までの日本と、それ以後の日本が全く軍事という点からみて、似ても似つかないものになっていったという指摘は具体的であるが故に、大変説得力に満ちています。
戦車部隊にいたという彼の目に、統帥権と呼ばれる不思議な権力がなぜ生まれたのかということは、謎だったのでしょう。それを解き明かしていく作業が、逆に日本史に深く関わっていった背景なのかもしれません。
鎌倉時代に入ってはじめて日本人はリアリズムを手にしたという記述も面白いものです。それまでの寄進型の荘園経営から、自分たちの耕した田地を、どう自分で守っていくのかというところから、ある意味で、鎌倉以降の文化が始まったといってもいいのです。
江戸時代の交易が、実に多岐にわたり、商品経済が人々の意識を劇的に変えたということなど、どれも楽しく何度でも読み返せる豊かさを孕んでいます。
さらには漱石、子規などを通して、やっと日本語が今の形になったという日本語の成立過程についての話も実に楽しかったです。
この講演の中の10本は別に新潮社からCDも発売されています。どれも聞いていると、そこに司馬遼太郎が生きて話してくれているようで、今となっては貴重な文化財になっています。
興味の方向があまりにも多岐に渡っていますので、それを全て理解することは大変なことでしょう。
これから一つ一つの内容を深めつつ、さらに学んでいければと思います。次には彼の紀行文を読破するつもりでいます。これには数年を要するのではないでしょうか。しかし楽しみがまた増えました。 やっと全5冊を読み終わりました。毎朝の通勤時間に読むのが楽しみでした。なんといってもその魅力は彼の博識につきます。さらにはそれぞれの郷土に対する深い敬意の念、さらにはたくまざるユーモアでしょうか。
この講演集は彼が生涯に行ったものの全てだということです。もちろん幕末に関するものもありますが、それ以上に多いのが宗教に関するものです。人間はどうやって心の安寧を得てきたのかということに関して並々でない関心をもっていたことが、とてもよくわかります。
親鸞や法然のといた空という発想の中に全てがあるという講演はすばらしいものです。特に『歎異抄』に対する思い入れを強く感じました。
さらには医学に関する講演です。彼は日本で最初に解剖をしたといわれている山脇東洋や、シーボルト、ポンペさらには『胡蝶の夢』に描かれた松本良順などについて詳しく語っています。
日本人は医学というものをどのように捉え発展させてきたのかを知るには大変いい講演がたくさんあります。大阪適塾の果たした役割なども実によくわかりました。
さらには彼にとって最も親しい場所であったモンゴルについての話もたくさんあります。遊牧という考えがどのようにして生まれたのかという話も面白いです。
しかし最もユニークだったのは、日本の戦争がどのように引き起こされてきたのかという話です。日露戦争までの日本と、それ以後の日本が全く軍事という点からみて、似ても似つかないものになっていったという指摘は具体的であるが故に、大変説得力に満ちています。
戦車部隊にいたという彼の目に、統帥権と呼ばれる不思議な権力がなぜ生まれたのかということは、謎だったのでしょう。それを解き明かしていく作業が、逆に日本史に深く関わっていった背景なのかもしれません。
鎌倉時代に入ってはじめて日本人はリアリズムを手にしたという記述も面白いものです。それまでの寄進型の荘園経営から、自分たちの耕した田地を、どう自分で守っていくのかというところから、ある意味で、鎌倉以降の文化が始まったといってもいいのです。
江戸時代の交易が、実に多岐にわたり、商品経済が人々の意識を劇的に変えたということなど、どれも楽しく何度でも読み返せる豊かさを孕んでいます。
さらには漱石、子規などを通して、やっと日本語が今の形になったという日本語の成立過程についての話も実に楽しかったです。
この講演の中の10本は別に新潮社からCDも発売されています。どれも聞いていると、そこに司馬遼太郎が生きて話してくれているようで、今となっては貴重な文化財になっています。
興味の方向があまりにも多岐に渡っていますので、それを全て理解することは大変なことでしょう。
これから一つ一つの内容を深めつつ、さらに学んでいければと思います。次には彼の紀行文を読破するつもりでいます。これには数年を要するのではないでしょうか。しかし楽しみがまた増えました。