グラミン銀行を知っていますか 坪井ひろみ 東洋経済新聞社 2006年2月





今年のノーベル平和賞に輝いたムハマド・ユヌス氏のことは多くの人が知っていることと思います。随分報道もされました。日本をつい最近訪れたということも聞いています。
彼のことはエッセイにも書きましたが、もう少し銀行の内情が知りたくて、この本を読んでみました。
著者はマイクロクレジットというものがどのように実際機能するのかということについてかなり関心を持っていたようです。そして自らバングラデシュの農村に入り、その実態をつぶさに研究したようです。できればもっと詳しく内容を知りたかったです。
その内実というか、光と影の部分にまで立ち入ってくれたらよかったのにと思いました。
しかし5人を基本にしたグループ単位での貸し付けや、集会所を使った実に具体的でわかりやすい集まりなどには、今さらながら感心しました。そこで伝えられる内容があまりにも単純であると軽蔑してはならないのです。
彼らにはその線まで到達することが実に困難なのです。
例えば、トタン屋根のある家、蚊帳や菜園のある家、安全な飲み物、冬用の暖かい衣料などなどです。
彼らは集会に来ると必ず、あばら家には住まないと唱えます。水を飲むときは沸騰させるか、ミョウバンで浄化しますとか、息子の結婚に持参金を要求しないとか、ごくごく日常的でしかも重要なことばかりです。
ここはもうひとつの学校なのかもしれません。多くの女性たちはほとんど学校にもいけず、自分の名前さえ、文字にして書いたことがありません。契約とか約束などという生活とはほど遠い一生なのです。
その彼女たちがはじめてお金を借りるのです。その額よりも人間として認められたということの喜びの方が強いといいます。そこから自立への一歩を踏み出すことで、その後の人生が大きく変わっていくのです。
返還率も非常に高く、このシステムは完全にうまくいっています。最近では6人目として、町で物乞いをしている人をこの銀行はターゲットにしています。彼女たちに少しでも自分で何かをするということの喜びを与えようと必死なのです。
さて失敗はないのでしょうか。そこをもっと知りたかったというのが本音です。これについては、さらに別の本を探さなくてはならないでしょう。いろいろと揶揄されることもあったと聞きます。しかし今日の成功は、決してものを与えることが援助ではないとする無利子無担保融資を前提とするこの銀行の設立趣旨に起因していることは間違いないのではないでしょうか。