震度0 横山秀夫 朝日新聞社 2005年7月





 警察の内幕物を得意とする筆者の本を『第三の時効』に続き読みました。新聞記者をしていたという経歴がなければ、やはりこうした類の小説は書けないだろうと思います。
実に人間臭いどろどろした組織だなというのが、毎回読後の感想です。『第三の時効』では三つのセクションがそれぞれ主導権を握るために、互いの情報を隠し、それぞれが犯人を追い詰める競争をする話です。
ほとんど職人芸のような技術を持った強行班の刑事をどう束ねるのかという点が大変新鮮でした。
さて『震度0』という本はキャリアとして中央から派遣されている二人と県警幹部との人間関係を中心に描かれています。
警務課長の突然の失踪の背後に何があるのか。組織の持つ弱点が読者の前にさらされていきます。
キャリアと呼ばれる二人は実務についての経験をほとんど持ちません。いわば中央への階段としてN県警へ派遣されているだけです。そこへ地元の金融業者や選挙にからんで、さまざまな誘惑があります。
その一つでもミスを犯せば、彼らに未来はないのです。その一方、表面に出てはならない汚れ仕事をする役割の人間もいます。
全てを背負って失踪する警務課長がそれです。狭い警察という組織の中で、それも公舎に住むことを義務づけられた彼らが繰り広げる世界は、実に醜いものです。
保身と昇進、この二つのためにはなんでもするというのが、男の社会なのでしょうか。背景には神戸の大震災をテーマにもってきています。
互いに互いを信じられない組織のいきつく場所はどこであるのか。面従腹背が深く進む組織のあり方に不気味なものを感じました。これが今日の警察全てであるとは考えていませんが、しかしそれほどに大きな差はないだろうというのが本音です。
おもしろうて、やがて悲しきということなのかもしれません。最後にいくつかの救いが出てきます。そのことで少しほっとしたというのが本当のところです。