大人がいない 清水義範 筑摩書房 2006年1月





現代の日本には大人がいない。この本のテーマはずばりこのタイトル通りです。いつまでも若いということはある意味ですばらしいことですが、大人の分別、判断がないとなると、これはゆゆしき問題です。
日本人は幼くてまだ大人でないものをかわいいなどと呼び、むしろ珍重する傾向が強いようです。人より目立つことを好まないという傾向もそれに拍車をかけているのかもしれません。
いつでも子供の文化が先行し、それに大人達が無理してくっついていくという図式がごく普通です。
骨董品などは別にして古いことはそれだけで、もう価値がありません。古い歌やギャグや言葉、さらには人間も同様です。幼稚な子供の文化があらゆるエネルギーを先取りしています。
日本製のゲームやアニメなどは今や世界中に広がり、日本を象徴する一つの文化そのものになっています。つまり大人になる必要のない社会を日本人はつくったともいえるのです。
大人になりたくない人々も飢えることなく、生きていかれるゆとりを持った社会でもあるのです。
しかし今のような状態で、ニートやフリーターを抱え、豊かな知恵を働かせたまま、生きていかれるのでしょうか。
著者の懸念はまさにその一点にかかっています。高齢化と少子化の嵐の中で、とてもそれだけのゆとりはないのではないか。
むしろ大人になることを拒否し、フィギュアで遊んでいた世代から崩壊が始まっていくのではないかと心配しているのです。もっともな話です。
大人になることを必要としなかった社会にも、いよいよそうした要求がじわじわと寄せてきています。
大人でない親、苦しさを乗り越えられない大人たち。いずれにしても今後の日本が否応なく直面する問題について、成熟という視点から説いたユニークな本です。
小説家らしい直感の鋭さと切れ味を感じました。