大川わたり 山本一力 祥伝社 2005年4月





 この作家の本は2冊目です。いずれも庶民の生活を描いたものです。市井の民が江戸の町でどのように暮らしたのかということが記されています。
江戸は職人の住む都市でした。そして同時に悪所もあり、その中には博打場もあったのです。大工の銀次は腕のいい職人でしたが、博打にはまり、その結果、大川から東、つまり深川、本所、木場といったいわゆる下町に出入りできなくなります。
借りた20両を返し終わるまで、橋を渡ることができないのです。
博徒の親分との約束でした。
山本の小説には、なぜか博徒の親分が必ず登場します。そして彼らが非常に大切な役割を負うのです。
この小説でもその後日本橋の老舗問屋の手代にまでなった銀次を騙す手合いが最後には、その博徒の親分によって追放されるという結末が待っています。
呉服屋の主人も心の大きな人物として描かれています。どこかで人を信じられなかった銀次の中に、あたたかなものがふくらんでいくきっかけを作ったのも、こうした人たちの支援によるものでした。
『あかね空』の世界に比べると、やや話が流れすぎているきらいはあります。しかし彼の持っている背景は実によく表現されています。
それと同時に隅田川という川の畔に住んでいた、江戸時代の職人達の世界に憧れさえ覚えてしまうのでした。