もひとつ・ま・く・ら 柳家小三治 講談社 2001年5月





 小三治はぼくの大好きな噺家です。死神なんて聴いてると、ほんとにとろけそうになります。
とにかく変人です。だから面白い。教育一家に育っただけに、妙に偏屈で凝り性です。父親への反感というか、抗議というか、そういうものが教育論の中にも渦巻いています。
まくらというのは噺の本筋に入る前の導入ですが、それだけを集めても面白いというところが、小三治の魅力でしょうか。
この前に『ま・く・ら』というのがあります。まさかこんなに売れると思わなかった講談社は初版を通常の半分にしたそうです。それでも売れるものは売れるのです。だから面白い。
オートバイの話なぞ、やめられません。彼の家の駐車場に住み着いたダンボーラーの話など、あまりに愉快で笑い転げてしまいました。
今回の続編ではなんといっても「笑子の墓」が出色です。ここには彼を支えた気概のようなものがみえます。
また「わたしの音楽教育」では小三治自身の生い立ちとともに、彼の教育観が語られています。
苦労したんだなあというのが実感でしょうか。
全体を読んでいて感じるのは、実に目が確かだということです。落ち着いています。ちっともぶれていない。権力におもねることもなく、金銭にだまされることもない。淡々と日常を過ごしているのがよくわかります。それと落語をいかに愛しているか。これも切々と伝わってきます。
タイトルだけを見ても愉快ですが、やはり読んでみると、これは本当に愉快です。いつもこんなに長くまくらを語っているわけではないようですが、ぼくの経験でいえば、1時間近かかった記憶があります。
あの時はアフリカ旅行の話でした。
一度手にとってみることをお勧めします。