女子アナ失格 藪本雅子 新潮社 2005年5月





落語好きのぼくにとって、こういう類の本は実に心楽しいものです。談志はお金を払ってでも落語を聞きたいのは亡くなった志ん朝だけだといつも話していました。
それだけに早逝が悔やまれるところです。
さてこの本にはいくつもの噺にまつわるエピソードがたくさん載せられています。なるほど、そうだったのかと相槌をうっているうちに読み終わってしまったというのが本当のところでしょうか。
どれも代表的な噺ばかりです。
落語の好きな人なら、全部オチが言えるくらいのものばかりです。
文七元結、富久、笠碁、付き馬、試し酒、鰻の幇間、明烏、宮戸川、火事息子、芝浜。
それぞれの噺に縁のある金馬、三木助、志ん生、文楽、円生など、いずれも大看板ばかりのとっておきの話が山のように出てきます。
人の演じた噺を、なかなかやろうとしない芸人たちの意地もそこには垣間見えます。
先人達がつくりあげてきた人物造形に対する尊敬、そしてそれをなんとか自分のものに仕上げようとする苦闘の姿も見えます。芸は一代限りのものです。それを見続けてきた安藤鶴夫のような批評家が、もっと現代にも欲しいところです。